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「し」が「スィ」?外国語習得者の日本語にみられる外語語発音の影響

英語習得者の場合

学生のとき、英語のクラスに、日本で生まれ育ちながら「きれい」な発音で英語を話す人がいました。クリスタルガラスのようにカチカチ・キラキラした、シャープな響きを持つ発音でした。

しかし、その人が話す日本語には不思議な特徴がありました。「さしすせそ」の、特に「し」の発音が少し変わっているのです。私には「スィ」と聞こえました。

「日本語話者の英語発音の間違い」をからかう悪趣味な冗談としてよく聞かれるものに、「sitがshitになってしまう」というのがあります。(後者の英単語はやや下品な意味ですが、ここでは文章の趣旨を鑑みて伏字にしていません)

sitは「座る」ですね。shitはもともと「〇〇」という意味で(これはさすがに書きづらいので、検索していただけるとありがたいです!)、スラングで「くだらないこと」などの意味でも使われます。

そう、先ほどのクラスメイトは、英語のsitの/s/を正しく発音しようと心掛けているうちに、日本語の「し」の発音まで英語風の/s/になってしまったと考えられるのです。

フランス語習得者の場合

次はフランス語が堪能な人の例を紹介しましょう。挙げるのは、日本語話者であるフランス語講師たちにもよくあるパターンです。

それは、「単語」の「たん」などがフランス語の「鼻母音」風になるというものです。

フランス語では、bon(よい、おいしい)など、母音字(a i u e o y)+ m, nを鼻母音といい、鼻に抜けるような音として発音します。その特徴を、いつの間にか日本語にも適用するようになってしまったフランス語習得者は結構いるようです。

少なくともフランス語を少し習ったことがある人なら、日本語の中にいきなり登場する鼻母音は目立って聞こえ、すぐに気付けると思います。違和感はありますが、原因もすぐわかるので、妙に納得できるでしょう。

英語やフランス語を母語とする日本語学習者も同じ

「スィ」や「鼻母音風」の発音は、英語やフランス語を母語とする人が日本語を学んで話す場合にも現れる特徴です。

「スィつれいですが」(失礼ですが)、「そのタンごは」(その単語は)、など。

そうした発音が悪いと言っているわけではなく、言語間の影響として興味深くて面白いと思います。

そして、それは自分の外国語の発音にも当てはまるわけです。私の英語やフランス語の発音には日本語の影響があり、それらは「直す」べきなのかもしれませんが、私の言語的ルーツが表れている、いとおしい特徴、アクセント(なまり)とも捉えられる気もします。どんな人のどんな言語についても同じです。

ただ、私の日本語発音に外語語の影響は(ほぼ?)ないと思います。残念ながら、母語・第一言語に影響するほど外国語に堪能ではないので!

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