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『かわいい海とかわいくない海 end.』瀬戸夏子:特異な短歌集

「現代歌人シリーズ10」。短歌については何もわからないが、「特異」ではあると思う。巻末には「メイキング・オブ・エンジェル」という短い散文が収められている。

書名からして衝撃だ。「かわいい」も「海」も人生で数えきれないくらい見聞きしてきた言葉だが、この組み合わせにはおそらく初めて出合った。

夕焼けと夜明けのあいだ折々にひたすら妖精をつぶすゆびさき

太陽がいなくなる暗闇の中で過ごす時間。妖精がこっそり現れて、それをプチプチしながら、眠れぬ自分をごまかすかもしれない。

窓から感情がポテトチップスとして降ってくる 夜というよりも昼

なぜポテトチップスなのか。なぜ昼なのか。まったくわからないが、なんかそのイメージわかる気がする、という。感情はポテトチップスのようなものなのか?ポテトチップスを食べるときって、なんか特定の感情が働くときっていう気もするし。

月の温度、星の温度、瞳の温度を束ねて輪ゴムをかける指先

また出てきた、「指」。手フェチ的な雰囲気も感じる。その温度は冷たいのだろうか?月と星を凝視する瞳を表しているのか?輪ゴムを指に絡みつけて遊んだ子どものころの記憶がよみがえった。

虹から次々に色は抜かれてどの人も浮き足立つ、苺ジャムという機会

虹から色が抜かれるとなぜ人々が浮き足立つのか?まったくわからないが、虹の色が苺ジャムに凝縮されて、それを食べられて幸せ、みたいなことを想像したが、たぶん歌人の思いは全然違うかもしれない。「機会」というのも、なぜ、と疑問ばかりが湧く。

果汁1%未満のかがやきそうあれはわたしではないのです

パッケージは果物感満々なのに、小さく「果汁1%」と書いてあると残念感満々。そういう空しさなのかなんなのか?それとも、1%未満でも立派な輝きということなのか?「わたしではない」とは、「わたし」はさらに果汁が少ないのか、それよりももっと多いのか?

現代短歌の世界はすごいことになっているらしく、のぞいてみたいという気持ちがありつつ、なかなかできていない。でも今後も気になる本があったら手に取ってみようと思う。


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