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『弱くて強い女たち』つらい過去のある70歳の女性と娘たちのたくましい半生を描く台湾映画

台南で屋台を営みながら3人の娘たちを育て上げ、大きなレストランを経営するまでになった女性、秀英が70歳の誕生日を盛大に祝う。そこへ別れた夫の訃報が――。誕生日会に来ない親戚がいるのはなぜなのか?「4人目の娘」の正体とは?三女が連絡を取っていた女性はどんな人?

病気を経てダンス講師として働き続け、よりを戻そうと夫が訪ねてくるが、昔の知り合いである男性と再会して逢瀬する自由奔放な長女。一族の職業を継いで医者となり同じく医者の夫と好奇心旺盛の娘と暮らす優秀でしっかり者だが家庭に不安も感じている次女。父親を懐かしく思いながら母親のレストラン経営を引き継ごうと奮闘中の三女。過去を背負った年老いつつある母親。その秀英が離婚を拒みつつ長年別居している夫と付き合っていた物静かな年下の女性。

女性たちのもろくたくましい姿と半生が台湾の台南を舞台に描き出される、風情のある作品。

次女役のビビアン・スーが日本では有名だが、どの俳優も演技が上手で安定感がある。風景も趣があり、人間模様から目が離せない、家族と女性の魅力的な物語だ。

道教とキリスト教がぶつかり合う(?)葬儀の場面は悲しくもコミカル。秀英の最後の選択は、理解できるかどうかということを超えて、かっこいい。

新鮮そうな魚介を使った料理や食事の場面も印象的。監督の&Aによると、原題の『孤味』は、台南の言葉で、一つの料理を精魂込めて作るといった意味があるらしい。それで、秀英が夫への長年の恨みを手放すというテーマと重ね合わせているのだとか。

また、英語タイトルの『Little Big Women』は、ルイザ・メイ・オルコットの『Little Women』(日本語訳では『若草物語』)を意識したもので、人には異なる側面があり、家族の中で女性は役割を背負わされているが、それ以外の顔も持っている、ということを表現しているのだという。

作品情報

第33回東京国際映画祭
ワールド・フォーカス台湾電影ルネッサンス2020
『弱くて強い女たち』Little Big Women [孤味]
監督・脚本:シュー・チェンチエ [許承傑、ジョセフ]
キャスト :チェン・シューファン、ビビアン・スー、シエ・インシュエン
123分、カラー、北京語、台湾語、日本語・英語字幕、2020年台湾、長編1作目の監督作品


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