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「ダンサー・俳優の<表現するカラダ> ~公演ヘルスケアサポートの経験から~」オンライン対談【芸術家のくすり箱】

芸術家のくすり箱」は、「芸術家の多面的なヘルスケアネットワークを構築する」団体。

アーツカウンシルの3年連続の助成により、バレエ団、ダンスカンパニー、劇団の3団体(東京シティ・バレエ団秋田雨雀・土方与志記念青年劇場zer◯)に「公演ヘルスケアサポート」を提供した。

今後は、「ヘルスケアピット」を実施予定。

公演ヘルスケアサポートを受けた3団体の5人の芸術家(ダンサー、俳優など)が登壇し、その経験や今後の希望などを話し合う動画がオンライン配信された。

配信日時

2021年9月1日(水)19:00~21:00
(Zoomウェビナー)

出演者

青木尚哉さん:ダンスカンパニーzer◯主宰 振付家・ダンサー
板倉哲さん:秋田雨雀・土方与志記念青年劇場 俳優
小泉美果さん:秋田雨雀・土方与志記念青年劇場 俳優
平田沙織さん:東京シティ・バレエ団 ダンサー
福田建太さん:東京シティ・バレエ団 ダンサー

オンライン対談の内容メモ

■平田さん
・疲労骨折。
・トゥシューズはもともと痛みを伴うものだから、ちょっとやそっとの体の痛みに耐えられてしまうのかもしれない。
・音楽がかかると、痛みを忘れて踊れてしまう。
・学生のときは発表会やコンクールで公演出演は年間10回以内。
・バレエ団に入ってからは、年間数十回。

■板倉さん
・演劇の旅公演、特に学校の体育館で公演することが多い。俳優たちが荷物の持ち運びなどもするので、みんな腰痛になる。
・会場の音響が整っていないので、無理に声を出して声帯ポリープになる。
・ジムで腹筋、背筋を鍛えて、腰痛を緩和しようとしている。

■小泉さん
・演劇の学校での旅公演。
・設営で力仕事、舞台出演、ばらすので力仕事。23時くらいに宿に着いて、翌朝8時にはまた学校に公演しに行く。

■福田さん
・学校でバレエ公演をするときは、開始前後に設営を手伝うこともある。
・バレエ団の公演だけなら、女性バレエダンサーはリフトするのも軽いからそんなに体に負担はかからないが、外部の発表会にゲストダンサーとして呼ばれて、何度もリフトを練習したりするので、腰痛はある。
・けがは、バレエ団に入る前はなかった。バレエ団に入って週5日踊るようになって、体に不調が出るようになった。

■青木さん
・一般的に、徐々に蓄積されて不調が現れる腰痛などと、瞬間的にしてしまうけがの2種類がある。

■福田さん
・くすり箱さんと関わるようになって、けがの前兆を察知できるようになった。それで、早めに体の該当部位をほぐしたり、病院に行ったりするようになった。
・バレエは通常の人間の動きからは外れているので、バレエに理解のない医師に診てもらっても、らちが明かないこともある。

■平田さん
・疲労骨折で病院に行くと、エコー撮影し、原因が骨とわかると、病院で骨をくっ付ける機械を使ったり、整体に行ったり、くすり箱で教えてもらった体の動かし方をする。それで改善してきた。

■板倉さん
・腰痛で整形外科に行くと、手術するしかないと言われる。湿布を処方されても、皮膚が荒れる。
・整体に行くと、参考になるヒントをもらえるが。

■小泉さん
・腰痛は病院で「そういう職業ですからね」と言われてしまう。
・くすり箱の公演ヘルスケアサポートの藤原先生(按摩、鍼、指圧、アスレティックトレーナー。スポーツ選手を見ている。俳優やダンサーも見る)は、鍼をしてくれたり、俳優という職業に理解を示してくれたりするので、気が楽になる。

<公演ヘルスケアサポートとは>
・公演の本番前から本番まで、パフォーマーたちを専門家がサポートする。
・専門家は、医師、理学療法士、按摩マッサージ指圧師、アスレティックトレーナー、ジャイロキネシストレーナー、言語聴覚士など。
・フィジカルチェック、ワークショップや講義、個別ケアやトレーニング。
・1団体に付き2~5人の医療者が関わる。
・アーツカウンシルからの3年連続の助成で実施した。
・東京シティ・バレエ団、青年劇場、zer〇に3年間のプログラムを実施。
・例:東京シティ・バレエ団へのワークショップ「わかっていても難しい?力みのコントロール」「効率よく踊れるアライメント」
・例:青年劇場に「肩・首・腰の凝り対策~ほぐし・トレーニング・呼吸~」
・例:zer〇に「動いて感じるカラダの仕組み」「アレクサンダーテクニーク体験」
・今後は「ヘルスケアピット」(後述)を構想中、実施予定。

■小泉さん
・フィジカルチェックで肺活量を調べた。劇団員たちが受けたら、30代なのに80、90代並みという結果の人もいた。

■板倉さん
・演劇では、俳優の能力は数値で可視化しづらい。肺活量は数値で出るが、能力はそれだけでは測れない部分もある。

■青木さん
・数値は低いのに、何がすごいのか、ということにも注目するきっかけになりそう。

■平田さん
・フィジカルチェックで、左右の筋肉や強さが、実際は自分の思い込みとは違っていた(逆だった)。

■福田さん
・フィジカルチェックを3回受けて、変化がわかった。それがすぐ直接バレエの踊りに関わってくるわけではないが、トレーニングの参考になったりした。
・個別ケア:トレーニング法を教えてもらい、バレエ団員の中で共有できた。

■小泉さん
・基礎トレーニングは個人で行うものという意識だったが、藤原先生から教えてもらったことを共有して、話すきっかけになり、劇団内がオープンになった気がする。

■青木さん
・体の不調やけがは降板にもつながるためもあり隠しがちだが、それで長期に休むことになるけがをしたら元も子もない。
・オープンに話せたら、メンタルにもよい。

■平田さん
・藤原先生のワークショップ:長い棒を使ったワーク(?)。呼吸も一緒に意識する。体の方向転換。
・関節のねじれを取るワークショップ。ゴムの器具、チューブを使う。今も毎日実践している。ねんざや外反母趾にも効く。

■青木さん
・ねじれを予測するのは踊る上でも大事(ほかの人がどの方向に体を向けようとしているかを把握する)。だから、関節のねじれのワークを自分もしてみたい。

■板倉さん
・ワークショップ:安定、軸など。俳優が自分の体の癖に気付くきっかけになった。

・安静にするのではなく、動かすことで不調を改善する。

■青木さん
・ワークショップ:ヒップホップダンスでアイソレーションを学ぶ。
・演出、振付、運営も自分でやっている。コロナ禍での公演の対応についてもサポートしてもらえたのがありがたかった。

<「ヘルスケアピット」とは>
・「ヘルスケアピット」をくすり箱が構想中。来年からこの3団体が利用してみる予定。
・フリーランスの芸術家も受けられる。
・当面は公演予定のない、不調を抱える芸術家にも体を動かせる場を提供。
・11月以降実施。田町、五反田(東京)。
・特別企画:若手アーティストに人数限定で優待価格によりご提供。9月上旬から募集予定。

■平田さん
・ピラティスやヤムナボディローリングなど、メンテナンスをする場に自分で通っている(自費で)。
・去年のコロナで時間に余裕ができたため、体のことを調べて、メンテナンスしに行くようになった。

■青木さん
・保険や労災も適切に利用した方がいい。

■小泉さん
・ヘルスケアピット:仕事の予定が不規則なので、理想を言えば、予約なしで行けたらよいが。
・同じ先生(トレーナー)に継続して見てもらえるとよい。

■板倉さん
・どう伝えたらいいか、どう聞いていいかわからない。トレーナーの人に見てもらっているうちにわかるようになっていくだろう。悩みとかの相談のしやすさが重要。

■青木さん
・ヘルスケアは芸術の質の向上にもつながる。
・特に若いときは、「やりたいこと」と「できること、得意なこと」が乖離することもあるが、ヘルスケアを受ける中で、その擦り合わせもできていくかもしれない。

■板倉さん
・ピットのトレーナーにパフォーマーが入っていてもよいのではないか。

■福田さん
・すぐ相談できる場があるとよい。

■青木さん
・自分のような主宰者には、メンバーのダンサーは相談しづらくなるので、相談できる第三者機関がいてくれるとよい。

■福田さん
・バレエ団に直接言うだけでなく、専門家から助言を得られて、その見解をバレエ団とも共有できるとよい。

■青木さん
・海外のバレエ団のように、内部にトレーナーなどがいれば、休むべきとき、思いっきり踊っていいときが明確になり、踊りやすい。

■青木さん(体の不調歴)
・15歳からバレエを始めたので、無茶して踊っていた。20代前半で交通事故に遭い、3年くらい首が動かない後遺症があった。
・体のどこがどこに影響しているか、などを自分で検証するようになった。

<質疑応答>
・理学療法士で俳優などの体をケアしたいが、間接治療以外にどんな技術が必要か。どういうふうに関係構築できるか。
→回答:くすり箱のセミナーに参加する手もある。

■平田さん
・秋の旅公演。沖縄は学校の体育館が暑い。別の地域では凍えそうに寒いときもあった。
・体育館の舞台を楽屋にして、下の床にリノリウムを敷いて踊るが、床が固いので、体に衝撃や負担が掛かる。セルフケアグッズをたくさん持っていく。入浴剤も。

■小泉さん
・電車に乗って旅公演に行くことも多い。荷物を少なくしなくてはならない。入浴剤は持っていく(←くすり箱のトレーナー情報:発泡する入浴剤がよい)。

・トレーナーからの質問:バレエをしている中学生をトレーナーとして見ているが、バレエダンサーには何が大事か?(体幹などについて)
→平田さんからの回答:バレエダンサーは、体のアライメント、使い方、持っていき方などがわかるようになることが大事。
→青木さんからの回答:体に関する正しい知識を若いうちから得ることは大事。

・医学生からの質問:将来ダンサーを診たい。資格がなくても今から勉強ができるか?
→くすり箱からの回答:医師免許や資格をまだ取得していない人、学生などもセミナーに参加可。

・鍼灸師からの質問:自分も以前バレエをしていた。子どもの頃から体のことを学ぶ機会がある方がいいのでは。子どものときにそういう機会はあったか?
→福田さんからの回答:子どものときはそういう機会はなかった。プロになってから重要性に気付き、体に向き合うようになった。
→青木さんからの回答:学校の授業で骨格標本などの体のことは教わらない。教養、たしなみとして教えてくれたらいいのに。/振付家が体の知識を持っていないと、ダンサーに無理をさせてしまい危険。

・整形外科からの質問:公演サポートで、ゲネプロや本番でどんなサポートがあるといいか?
→くすり箱からの回答:事前に医師と事務局とが、医師に果たせる役割を話し合っておくとよい。

・けがをしてネガティブになることもあったというが、その経験を経てパフォーマンスの質が変わったということはあるか?
→小泉さんからの回答:本番直前の不調(声が出ない、など)でも鍼などでケアしてもらえるのは、安心感にもつながる。
→板倉さん:声を出すには、力むのではなく力の抜き方が大事。丹田には力を入れて、体全体に声を響かせる。
→福田さんからの回答:けがをして対策法を教えてもらえたので、1年間、治療院に行かずに済んでいる。不調が減って、踊りも思いっきりできる。
→平田さんからの回答:疲労骨折をして、体の使い方を軌道修正できた。1回けがをすると、影響は残るので、体のことをもっと勉強しようと思った。けがの痛さや、無理をすべきでないとかがわかるようになった。
→青木さんからの回答:肉離れをして、体の使い方の気付きもあった。

■青木さん(まとめ)
・舞台芸術の出演者は実は危険を抱えて公演をしている。公演にトレーナーがつくのがデフォルトになってほしい。
・そのことが、安全の確保はもちろん、パフォーマンス、舞台芸術の質の向上にもつながる。

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