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『大きな鳥にさらわれないよう』川上弘美 著:人類の行く末を静かに眺める

地球の滅亡や人類の絶滅を危惧する人々がいる。

でも、地球という星ははるか昔に生まれ、星には寿命があるという。

人類が地球上に生きてきたのは、地球の歴史からすると、ほんの一瞬。

地球ではかつて、例えば恐竜が、繁栄し、そして滅亡したという。

人類も、いつかは滅びる。

それなら、あんまりあがいても仕方がないではないか?

しかし、自分が生きているときに、人類が滅んだり、地球がなくなったりするのは、やはり怖い。

巨大隕石でも降ってくれば、気付かないうちに一瞬で終わるのかもしれないけれど、それでも。

そうすると、自分はそんな目に遭わなくても、未来の、のちの世代の人間たちがそんな目に遭うのは気の毒だなあとも思う。

となると、やはり、滅亡を少しでも遅らせるための努力はすべきなのか?

この本は、本当にありそうな人間の未来を、そして、もしかしたら過去の断片を描いているかもしれない、連作短編集。

読んでいるとき、なぜか心は穏やかだ。でも、気力が抜かれていくような、危険も少し感じる。

作者の川上弘美氏は、「神様」の視点を獲得できる作家なのだろうか。

これは傑作。

手塚治虫の漫画『火の鳥 未来編』も傑作だが、この漫画が描いた未来よりも現代の感覚に近い「未来」、私たちの姿が、ここにある。

あの登場人物や登場する「モノ」は、きっと私。


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