15.そととこ

 日々のエセー『まいにちとことこ』
第15回は、「そととこ」外出について。

 ひとくちに「お出掛け」と言っても様々。抑うつなぼくにとっては、不足しているセロトニンを得るため。

 家族旅行で遠くへ行ったことはなかった。
 というより、隣街のショッピングモールに行くのが家族での遠出だった。高速のトンネルを23本くぐって、山を越えて、買い物をする。それだけで、とても嬉しかったものだ。自家用車で行く旅行(日帰り)。
 だから、飛行機やフェリーに乗ったのは中学校の修学旅行のときが初めてだったし、新幹線なんてついこのあいだ初めて乗った。バスや電車にも大人になるまでそんなに乗らなかった。乗る機会というか用事がなかった。
 タクシーには乗せてもらった。父方の祖父じいさんがタクシー運転手だったから。
 それでも、基本的には、徒歩で移動する。小一時間で行けるところなら、とこはとことこ歩いて行く。

 遠出をするようになったのは、実家を出てから。特に、今の土地に移り住んでからは中心市街地まで電車(前のところは市電)で行くようになった。映画館や大きな本屋さんを目当てに。遠くへ行く楽しさを知った。
 大阪梅田まで行くには、最寄りの駅まで30分くらい歩いて、そこから電車に揺られてさらに30分。京都なら1時間ちょっと。伊丹なら、それより少し短いかな。いろんなところに行ける。

 お出掛けしたい日は決まって、朝起きたときにはもうなんとなくそういう気分になっている。<外に出たい>と身体からだが叫んでいる。ここで外出しなかったら、きっと夕方くらいにブルーになるだろう。そうなるくらいなら、とりあえず駅まで歩こうか。そこに着いてから電車に乗るかどうか決めてもいいんじゃないか。お出掛けしたいときは、こんな感じ。それだけでも、ちょっと楽しい。ワクワクする。

 太陽の光にちょっと当たるだけでも、気分が違う。生きてる感じがする。だからぼくは、さしより≒とりあえず、外に出てみるんだ。

[2024.8.26]