昭和12年のお嬢様料理_序
・1冊70銭のお嬢様向け料理雑誌「料理の友」
・和洋中華、節句料理に婚礼料理まで専門家によるレシピ紹介
・戦争の時代に入る直前の「豊か」さを食べてみたい
「料理の友」とは?
はじめまして、あるいはこんにちは。
創作活動のために昭和10年代の日本および周辺についていろいろと調べておりましたところ、とても楽しい、いえ、素晴らしい資料に出会いました。
そう、それが「料理の友」という雑誌です。
【「料理の友」昭和12年6月号奥付】
味の素食の文化センター様の注釈によれば、大正2(1913)年に創刊され、昭和19(1944)年の休刊を経て、戦後も発行されていた料理雑誌のようです。
内容は料理雑誌なのですが、出てくる材料やレシピはいわゆるハイカラ・モダンなものが多くて、庶民的とは遠いものだと感じます。何しろ本文中に、一人あたりの食材費は少し下げて「60銭内におさまるように」いたしました、という主旨の文言が昭和13年頃のものに出てくるくらいです。
1冊単価が当時70銭という雑誌です。現在に置き換えてみると、2500円程度。
かなりの高級路線です。
現在の「会計人コース」(中央経済社)だって1500円くらいです。専門誌情報誌級の値段のする雑誌を読んでいたのは、どんな人なのかと、想像してしまいました。
家事担当の女中さんを雇うのも珍しくない時代、各国のいろんな料理を作ろうと思って、2500円の雑誌を買って読む心意気のある方々といえば……相当アグレッシブなお嬢様か奥方様ですよ。
……わくわくしますよ、これは。
昭和12年の食卓
なんとなく、茶色。
なんとなく、魚。
なんとなく、大根の煮物。
ごはんは茶色っぽくて、飲み物はほうじ茶か白湯。
上の世代の人たちから聞かされていた食糧難のイメージと混ざって、どうにも華やかさのない印象がありました。
が。
この雑誌に出てくる料理のバリエーションと豊かさ、そして美味しそうさといったら!
和洋中華、創作レシピ、読者投稿レシピ、ご当地レシピ、陸軍監修による科学的調理法他。レストランの案内はないものの、まるで「ELLE gourmet」(ハースト婦人画報社)です。美味しそうです。とても。
もちろん、世相は暗い時代です。昭和12(1937)年といえば、第二次上海事変が起きた年です。いわゆる太平洋戦争開戦まで4年という時期、当時はすでに戦時中の認識だったと言われています。
けれども、当時を生きていた人たちも美味しいものを食べたいと思っていたのだなぁと実感しました。
そういう訳で
当時のレシピを紹介しつつ、実際に作って食べてみようということにしました。
ただし、材料や現在では手に入りにくいものや、調理法がまったく違っているものについては、代替的なものを採用いたします。
記事には抜粋掲載いたしますが、レシピは今のようにわかりやすくなく、しかも、料理研究家さんによって随分表現が違っており、解読がとても難しいものです。そのあたりは想像力と愛嬌と何かでのりきっていきたいと思います。
更新は2週間に1回程度を目指しますが、私のヤル気と多忙具合によりますので、気楽におつきあいいただければ幸いです。
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