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料理をすること:日常のなぐさめ

今朝、映画をみた。
Netflixからおすすめされて何となしに決めた、"Julie & Julia" という2009年の映画。実在する/した2人の女性のストーリーがもとになっている。

政府関連のコールセンターで働くJulie Powellは、日々の仕事に翻弄され自分の人生の目標を見失いかけている、ふつうの29歳の女性。そんな彼女が一念発起して、2002年にブログをはじめることになる。ブログのテーマは、アメリカにフランス料理を広めたJulia Childの料理本"Mastering the Art of French Cooking(1961)" のレシピを再現すること。365日で524種類のレシピを試すことを誓った彼女は、フルタイムの仕事をこなしながら、毎日ちいさなキッチンに立つことになる。

映画は、異なる時代に生きたJulieとJuliaの日常が交互に織り交ぜられて展開していく。まったくの料理の素人だったJuliaは、ひょんなことからパリのル・コルドン・ブルーで料理のレッスンを受けはじめ、次第にフランス料理に没頭していく。料理をすることは好きでも別段学んだことはなかったJulieは、Juliaのレシピを再現するにつれてどんどんと料理の世界に引き込まれていく。ある日は生きたロブスターを鍋で茹でたり、またある日はアヒルをまるごとパイで包んだり。

Juliaは次第に料理の腕をあげ、ついにはフランス料理の本を出版するチャンスを手に入れる。最初は母親と友人ぐらいしか読んでなかったJulieのブログも、次第に注目を集めるようになる。

ストーリーの大筋はこんなところ。

あるシーンが印象にのこっている。仕事から帰ってきたあと家でチョコレートパイをつくりながら、Julieがこんなことを言っていた。

"You know what I love about cooking?"
"I love that after a day when nothing is sure, and I say "nothing", I mean nothing. --You can come home and absolutely know that if you add egg york to chocolate and sugar and milk, it will get thick. It's such a confort."
「料理の何が好きかというとね」
「なにも確実なことなんてない日常のなかでも、チョコレートと砂糖と牛乳に卵黄を加えれば濃厚になるってことを、完ぺきに知っていること。一番のなぐさめよ」

このせりふには、とても共感した。

留学中は思うに任せないことや不甲斐ないことだらけだけど、料理をしているときは、自信をもって楽しむことができる(まあ、たまに失敗するけど)。空中戦で消耗している日々のなかで、料理をすることは地に足をつけて休むことを許してくれる。「これならちゃんとできる」と自分を肯定してくれる。

日常の99%の不確実なことたちに対する、1%の確実なこと。全体のほんの少しでも、それがもたらすなぐさめはとっても大きい。

好きこそものの上手なれ。
好きだから上手いのか、上手いから好きなのか。
もともと料理に傾倒していたわけではなかったJulieとJuliaは、だんだんと料理をすることに彼女らのアイデンティティと安らぎ、自信を見出すようになる。
パンデミックと学生生活から自然と自炊をするようになったわたしも、べつだん料理をすることが好きなわけではなかった。まだまだ料理上手と公言できるほどではないにしても、料理をすることが好き、という文言が自己紹介に新しく加わった。

なんにもわからないこの世界のなかで、一つでも「絶対」といえることがあることは、なんと心強いことか。そんな一握りの安心をだいじにしながら、ときには執着しながら、人は生きていくんだろう。

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