藤井風(Fujii Kaze) as Artist on the Rise

「なんかどっかポジティブだったり、いい気分になれるような曲を、
愛を込めて創り続けていこうと思っとるんで、
それを感じてくれたら嬉しいです。」

2週間ちょっと前に告知された、YouTube制作による藤井風くんのドキュメンタリーが、予告通り8月7日(金) 8:00pm、YouTubeでプレミア公開された(現在も9分強の全編をアーカイブ↓↓で鑑賞できます)。

「ここでもうずっといましたね。ここで基本的に、創ったり弾いたりしてました。」

岡山県里庄町のご実家にあるピアノを前に、そう呟く風くんのモノローグから始まる映像。これまでアップロードされてきた数々のカバー曲の映像からも見覚えのある風景。あぁ... ここでミュージシャン藤井風のバックボーンが形成されていったんだなぁ... と一瞬でなんとも感慨深い気持ちになった。

ご家族の協力を得て、12歳からYouTubeでピアノの演奏動画をアップロードし始めたと。中学生までの動画には「そんな雑に弾くな」とか「音わりーな」などといったコメントが寄せられていたそうで、これらに対し風くんはこう思っていたらしい。

「だって、雑じゃないとこのグルーブ感でんのやで と自分の中で思っとった」

風くんにはその頃から、ちゃんと奏でたい音があったのだ。既成概念をベースにした弾き方ではなく、自分の中でイメージした音を再現するにはどうしたらいいか をちゃんと模索して、きっといろいろな弾き方を試行錯誤して、「家帰ったらもうピアノ漬け音楽漬けって感じの生活だったと思います」と本人が語る毎日の中で、風くん自身の音を、メロディーを、少しずつ身につけていってたんだろうなと思う。

自身の中の葛藤や迷いを乗り越えながら、自分の中で広がっていく音楽を、カバー曲の演奏で表現するという形から自身で作詞作曲するという形へ進化させてきた風くん。今のマネージャーさんと出会い、イベントでのライブという形で徐々に表現する場を与えられた頃、彼が感じていたことを吐露した部分がとても興味深かった。

「オリジナル曲をやるっていうのは、いつでもすごいプレッシャーですね。自分の思う形でオリジナル曲を聞いてもらいたいなとはずっと思ってたんですけど、イベントでは弾き語りで出来ることするしかないので、ちゃんと伝わっとるかなって不安や緊張がありましたね。」

あぁ、やっぱりこの人は表現したい音の広がりを自身の中にずっと持っていたんだな。。ドラムとベースの役目さえも見事に担っているように感じられるあの左手の表現力、メロディとハーモニーを同時に繰り出す右手の秀逸なコード進行だけでも、十分すぎるくらい風くんのオリジナリティを伝えてくれているけれど、きっと彼の中ではもっとたくさんの音が聞こえていたのでしょうね。。それを表現する術を持っていなかった時期の歯痒さたるや、想像するに余りある。

そして自身のデビューアルバムのレコーディング作業へ。プロデューサーのYaffleさんと出会い、新しい表現方法や知識をどんどん吸収。

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「初めてイチから作っていくっていう作業もすごい新鮮で、時間を忘れてしまうぐらい、すごくのめりこめる作業じゃなと思って... すごい楽しかったです、楽曲制作とレコーディングっていうプロセスが」

ご実家では、家に帰ればずっとピアノの前に座って時間を過ごしてきた彼なのですから、レコーディング作業はどれほど没頭できる最高の時間だったことでしょう。楽しかっただろうなぁ、ワクワクしただろうなぁ。自分の表現したかった音楽がどんどん形になっていくって、最上級のカタルシスだったろうな。

そして、デビューアルバムリリース前に行われた、大きなホールで単独ライブ。その時のことを語る風くんの言葉は、これまでの想いが解放されたような清々しさと感謝に溢れていて、見ていて「本当によかったね(感涙)」ってこちらまで嬉しくなってしまった(ぜひ実際の映像でご確認ください)。

他にも、ニューヨークに初めていった時に受けた数々のインスピレーションのことなども語っていて、彼はきっと、これからももっともっと自分の表現の幅を磨きながら、その音楽の世界を広げていくんだろうなと確信したドキュメンタリーだった。

「わし...実はずっと歌う人になりたいと思っとって」
岡山弁混じりにそう語る藤井風というミュージシャンの存在に、今この時、気がつくことができて本当によかった。ずっとずっと応援していくね。


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