室井光広・特別エッセイ「モトをとる」(『多和田葉子ノート』『詩記列伝序説』刊行記念)
「モトをとる」室井光広 高校の世界史の授業で、ルネッサンスは「古代」の「再生」であり、ラテン語一色の学問の世界において、ギリシャ語が学ばれはじめたことに特徴がある、と習った。世界史の先生には申しわけないけれど、年間を通した授業内容で印象に残っているのは、このルネッサンスの特徴と、付随のエピソードくらいのものである。
ボローニャ大学で、あるギリシャ語の教師が学生に講義をボイコットされた。ギリシャ語を学習する者は「危険分子」とみなされたからだという。ローマカトリック教会のラテ