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t.5 海からの贈り物

休みの日に海へ行くと、とにかく何か拾ってきてしまいます。自然の創り出した色やデザインがなんともいえません。そして全く同じものがふたつとないことも。神秘的で不思議な海からの贈り物です ──。

フィンランドのテキスタイルは、国際的な展示会などで紹介されることにより、海外でも人気を得ていきました。今回はそんなフィンランドのテキスタイル業界の最盛期に活躍したテキスタイルデザイナーたちを紹介します。

Dora Jung, 1906-1980

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Shell series (via Bukowskis)

ドラ・ユングは、ヘルシンキ生まれのテキスタイルアーティストです。工業製品デザイナーやハンドクラフト作家としての顔もあります。

リネンを用いたテキスタイルが有名で、そのキャリアは50年以上に及びました。彼女の製品や芸術作品は、一般家庭だけでなく公共施設や70以上の教会でも見ることができます。

ユングは、1929から1932年まで中央美術工芸学校で学び、卒業後は自ら織物工房を設立、生涯に渡って経営を続けました。また1936〜41年と1956〜1972年にはタンペラ社のデザイナーとしても活躍しています。

彼女はデザインだけでなく、自らの手で織物作品の制作を行いました。彼女自身「芸術家」である前に、常に「職人」であると考えていたそうです。その抽象的なモチーフで織られたダマスク織はドラ・ユング技法と呼ばれました。

1937年のパリ万博ではリネンのテーブルクロスで金メダル、ミラノ・トリエンナーレでは3つのグランプリを受賞しました(1951, 1954, 1957年)。また1955年にはプロ・フィンランド・メダルが贈られています。

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Marjatta Metsovaara, 1927-2014

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Kukka (via muija.fi)

マルヤッタ・メッツォヴァーラは、インテリアのファブリックを得意とするテキスタイルデザイナーです。芸術デザイン学校では、マイヤ・イソラティモ・サルパネヴァらと一緒に学び、1949年に卒業しました。1957年にアルテックで初の個展を開催しています。 

彼女は、1954年にウルジャラにあった家族経営のカーペット工場をテキスタイル織りのメッツォヴァーラ社に拡大し、1962年からは夫となるAlbert Van Havereのベルギーの工場でもデザイナーやアートディレクターとして活躍しました。自社以外ではフィンレイソン社ヴァルヴィラ社のデザインも手がけています。

彼女の代表的な作品には「Kukka(花:1963年)」、「Simpukka(貝:1964年)」、「Kaisla(葦:1969年)」などがあり、同じパターンで多くのカラーヴァリエーションを作りました。また「Primavera」のテーブルクロスは現代的なクラシックとなり、1968年から1973年まで生産されました。

彼女は、1957年と1960年のミラノトリエンナーレで金賞を受賞し、1970年にはプロ・フィンランディア・メダルが授与されました。

Maija Lavonen, 1931-

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(via maijalavonen.com)

マイヤ・ラヴォネンは、美術デザイン学校を1956年に卒業すると、さらにフリーアートスクールで学びながら、衣料品工場のデザイナーとして働き始めました。そして1961年からフリーランスのデザイナー、1970年からアーティストとして活動しました。夫はビジュアルアーティストのアハティ・ラヴォネンです。

ラヴォネンは、テキスタイルアートの改革者として知られています。ウールやリネンなどの伝統的な素材に加えて、アクリルや金属、光ファイバーまで、様々な繊維素材の利用法を探究し、多くの実験を行いました。異なる素材を組み合わせることで独自の雰囲気と新鮮さを生み出しています。

その一方で、今でもフィンランドのテキスタイルアートの伝統を尊重しており、手織りにこだわることで「人間味」を残そうとしてきました。彼女の作品は完全に抽象的なものですが、いつもその出発点として子ども時代に過ごした海や北の風景などの自然がありました。

1985年から1994年にかけて芸術デザイン大学の教師としても活躍した彼女は、1992年にプロ・フィランディア・メダル、1996年にテキスタイルアーティスト・オブ・ザ・イヤーを受賞し、オルナモの名誉会員に選ばれています。彼女の作品は、国会議事堂、各省庁、フィンランド銀行本部、大使館、教会など、多くの公共施設で見ることができます。 

Ritva Puotila, 1935-

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Fourways (via Woodnotes)

リトヴァ・プオティラは、ヴィープリ生まれのテキスタイルアーティストです。1959年に芸術デザイン大学を卒業すると、いろいろなコンテストに出品し注目されていきました。彼女が最初にデザインしたリュイユは、フィンランド手芸友の会が主催するコンテストで見事優勝し、2000年代まで続く友の会との関係を築きました。

また40年以上にも渡るアメリカのDansk Designとの協力関係もコンテストがきっかけでした。ビルゲル・カイピアイネンらが審査員を務めるコンテストで、彼女のラグがダンスク社の創業者の目に留まり、フィンランド手工芸友の会の理事長から電話がかかってきたそうです。またダンスク社で彼女がデザインしたテキスタイルをフィンランドでも製造するために選ばれたのがタンペラ社でした。

そして1987年、彼女は息子のミッコと共にWoodnotesを設立します。ウッドノーツ社の主力製品は、紙を原料としたPaper Yarn (紙糸)を用いたラグです。フィンランドの自然の厳しさに触発された芸術的な創造性をフィンランドらしい自然素材である木や紙と組み合わせたエコロジカルな製品は、まさにメイド・イン・フィンランドのデザインといえるでしょう。

また彼女は、数々の賞も受賞しています。1960年のミラノ・トリエンナーレでは金賞、2000年にカイ・フランク賞、2003年にはプロ・フィンランディア・メダルを受賞しました。そして彼女の作品は、ニューヨークMoMa現代美術館をはじめ多くの美術館のコレクションとしても収蔵されています。

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1942年に創設されたプロ・フィンランディア・メダル(フィンランド獅子勲章)は、フィンランドで活躍する芸術家に贈られる最高位の勲章です。これまで紹介してきたデザイナーたちの多くも受賞していたのですが、書き忘れていました、笑。

参考:kansallisbiografia.fiwoodnotes.fi, design stories
表記のない画像は全てWikimedia Commonsから。
🇸🇪 Tack !
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フィンランドを知るには、まずフィンランド語かも。というわけで、古い参考書を紐解きながら、フィンランド語の辞典を書くことにしました。トントゥ検定3級です。 http://moicafe.com

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