記事用タイトル_資料集_

小説「イベリスの箱庭」及び「予言の花」ー設定資料集ー

 この設定資料集には物語のネタバレが多数含まれます。本編をご一読頂いた後に参照されることをお勧めします。

イベリスの箱庭
『カクヨム』で読む
『小説家になろう』で読む

予言の花
『カクヨム』で読む
『小説家になろう』で読む


 ※ネタバレを気にされない方は予め資料をご一読された後に本編をご覧頂くと各種設定がより明確にお楽しみいただけます。
 ※小説「イベリスの箱庭」及びその前日譚となる「予言の花」の設定資料集です。

【この物語はフィクションです。作品に登場する人物・団体・名称などは実在のものとは関係がありません。】

舞台及び国家

リナリア島
 大西洋上、欧州南部及びアフリカ大陸付近に位置する島。円に近い形の島で直径はおおよそ43キロメートル、面積はおおよそ千五百平方キロメートルはあり、世界中の国土と比較してフェロー諸島よりやや大きい面積がある。
 千年前にリナリア公国と呼ばれる国が存在した。島周辺での度重なる怪現象や海難及び航空事故の影響により現在は国際条約によって島周辺も含めて立入禁止特別区域として規定されており、どこの国の領土にも認定されていない無人島となっている。

リナリア公国
 リナリア島に存在した公国。1035年に領土拡大戦争【レクイエム】の戦火と、その混乱に乗じた海賊の襲撃を受け滅亡。

リナリア公国 -内政-
 7つの貴族による持ち回り君主制というかなり特殊な自治によって治められていた独立国家。4年に1度、全貴族の長が集まり国王たる君主を交代するか任期継続をするかの話し合いをする場、通称【星の議会】が設けられその話し合いにより君主、つまり国王が決定された。特定の一族が長期政権を築くことで権力が一極集中する事による腐敗を防ぐ目的が強い。
 貴族同士の派閥争いも当然存在していたが互いに小競り合いをする程度で完全に対立するというようなものではなく、権力や立場も完全に対等なものとして維持しており、普段から必要であれば必要なだけの協力は相互に惜しまない関係性ではあった。

リナリア公国 -外交-
 全ての国に対して中立の立場を堅持しあらゆる情勢に干渉、介入しないという理念を掲げ、過去の戦争においてはその理念によって戦火に巻き込まれず、全ての国と対等に交易を行う事で繁栄をつづける事が出来た。
 他国を侵略する為の武力を持たず、自国内における規律を守るための警備、いわゆる警察的な役割を持つ兵のみを配置している。それ故に【軍事力】というものは皆無であった。
 レクイエム戦争において戦火が広がり、各国の抗争が激化してきた折にどの国からの協力要請も固辞し続け中立という立場を堅持し続けた為、諸外国の反感を買い最終的には攻撃対象となってしまう。武力を持たない公国にとって他国からの侵略に対して抵抗することは当然出来るはずもなく攻め込まれたその日の内に陥落した。

リナリア公国の貴族同士の婚姻
 原則、諸外国との対等な交易を通じてその立場を維持してきた島国である為、諸外国との関係性は非常に重要なものである。基本的に貴族の娘達は諸外国の王族や貴族へ嫁ぎ、その関係強化の為に使われることが多かった。いわゆる政略結婚である。
 だがレクイエム戦争の戦火が自国へ近付くにつれその風向きは変わった。当時リナリア公国を統治していた貴族の長、国王ガルシアの娘にあたるのがイベリスであり、島の別の貴族の息子がレナトであった。この2つの家系は派閥争いにおいては最大のライバル関係にあったが、近付く戦火に対して島全体の協力による対策が急務だった為、両家の子息の婚姻を持って島内貴族での派閥争いを終結させ、公国の統治方法も刷新し新たな体制作りをした上で諸外国からの侵攻にも対応できる強固な国へと生まれ変わる事を目指す方針を決めていた。

王家の密約
 現状で敵国の侵攻があった場合、抵抗することも出来ず滅びると悟っていた貴族達は事前にある密約を交わしていた。
 その密約とは、万一新たな時代を築く以前に敵国の侵攻があり、抵抗することが不可能だと判断された場合、国王たる君主の一族のみを残し犠牲として他貴族と全国民は他国へ亡命を果たさせるというもの。「国が消えても人と思いが残っていればいつか再興できる」と信じて。
 この「王家の密約」が存在した結果、当時の国王一族と仕えた家臣や兵の犠牲と引き換えに次期国王であるレナトを含む貴族と国民の大部分は他国へ亡命を果たす事が出来た。
 尚、亡命の際に現君主の一族の中でイベリスだけは次期王妃という立場上、例外としてレナトの貴族と共に亡命する事を両親や側近達に促された。しかし、現国王の娘であり次期王妃である自分が生きていればその存在を政治的に他国に利用され新たな争いを招きかねない事、更にレナトの身に不要な危険が及ぶ可能性があると本人が判断しそれを固辞。イベリスは国と共にその短い生涯を終える事を選んだ。

戦争後のリナリア島について
 リナリア公国陥落後、リナリア島は他国に占領されるはずだったが、今度は戦火に便乗して略奪行為を行っていた海賊と他国の争いが島内で始まる。更に続けて横槍を入れてきた他国との戦争も続き、結局どこの国の領地になる事もなく時間だけが過ぎていった。
 しかし、島ではある時を境に怪現象が起き始めるようになった。当時島で争いを続けていた者達もこの怪現象を恐れ自国へと撤退する。
 更にその後も島へ近付くと行方不明になる、島へ行ったら戻れない、謎の病気にかかって死亡する(ただし病気については当時世界中で蔓延した流行病によるものだと後年に結論付けられた)などの噂が広まり、それ以降は誰も近付くことも無かった。
 世界大戦以後の近代においても調査などに訪れた軍の艦船や航空機なども謎の衝突事故や墜落を起こすなど島へ近付く事も出来ず、後に事態を重く見た各国の協議にて正式に立入禁止特別区域となり現代へ至る。(尚過去から現代に至るまで死亡者数はゼロとなっている。)
 西暦2034年に国際連盟から大規模な調査隊を派遣したがやはり目的地へ到達する事すら出来ずに引き返している。
 当時のニュースでは公海上で調査船同士が衝突事故、沈没するも隊員は全員救助され無事と流れたが、詳細は結局公開されることなくうやむやとなった。また公式記録でも事故原因は不明となっている他、公にされていない機密区分の報告書には数々の怪現象の記録と「存在するはずのない少女の姿が目撃された」という記載が記録されている。
 世界特殊事象研究機構が国連からの委託を受けて調査隊を派遣することになった際、この一連の資料の提供が行われた他、なぜか玲那斗を含む「マークת」隊にて調査を行う事や調査隊は「マークתのみ」で行う事などが推奨され、上層部と国連の話し合いの末、実際にマークת隊のみで調査が行われる事が決定された。理由たる詳細はマークתのメンバーには伝えられておらず伏せられたままである。

星の城
 国王とその家族が執政を行うために住まう城。貴族の本宅とは別にある。現代風に言えば総理官邸やホワイトハウスのようなもの。
 リナリア公国では星占い、いわゆる占星術が執政に重要な役割を果たしており、星の動きも政治に取り入れられていた。その為、城の近くには島全体や海の様子を見る目的及び、星の動きを観測する為の塔も建設されており、そこがイベリスとレナトが生前に二人で星をみる約束をした塔でもあった。
 太陽や月を含めた星の動きが公国内で一番よく見える場所にある事や、当時としては星の輝きのような外見の美しさもあり【星の城】と呼ばれた。


登場人物編


リナリア公国

イベリス・ガルシア・イグレシアス・ヒメノ
 リナリア公国第六代国王の長女。
 領地拡大戦争【レクエイム】により17歳でこの世を去った。想い人への愛、「もう一度会いたい」という強い思念を現世へ残し「約束の場所」で再会の日を待ち続ける女性。婚約の際に君主の妃の証として受け取った国章の半分が刻まれた宝玉をネックレスとして所持している。
 死後、その祈りと願いを現世へ強く残したことで魂と精神を現世へ残している亡霊。この世に肉体が無い為、老化することもなく無限に近い時間を過ごしている。果たされなかったただ一つの願いを叶えることを夢に見て。
 尚、彼女の存在を「現世の理」から外し、更にその魂を現世に繋ぎとめる楔の役割を果たしているのが国章が刻まれた宝玉のネックレスである。玲那斗に出会う前の彼女はこの宝玉が無ければ現世へ存在を繋ぎとめる事が出来なかった。しかし、彼女の存在を確かなものとして受け止め認知してくれる玲那斗という存在が出来た事で現在は石が無くても現界し続ける事が可能となっている。ただしその事には本人ですらまだ気が付いていない。
 光の集合体としてその姿を現界させる特性上、光源が全く存在しない場所で自身の姿を出すことは出来ない。
※イベリスの持つ特別な力(能力)については「イベリスの能力」を参照

レナト
 
イベリスの想い人。リナリア公国第七第国王の座につくはずだった青年。イベリスとの婚姻が果たされ新たな体制が敷かれる前に公国が崩壊したことにより王位に就くことは無かった。王家の密約により他国へ亡命を果たし、その後は身分を偽って生き延びた。

ガルシア
 イベリスの父親。リナリア公国第六代国王。レクイエム戦争の折に他国からの襲撃を受けた際、運命を公国と共にしてこの世を去った。襲撃の際、イベリスの気持ちと将来を慮ってレナトと共に亡命するように強く進言した。

※イベリスとレナトについて
 2人は幼い頃から大人達が会議をする為に集まっている間よく一緒に遊んで過ごしており、両家の政治的な小競り合い等関係なく仲が良かった。そして長く一緒にいる間にいつしか互いに恋愛感情を抱くようになっていた。政治的な側面では争いをしていた両家も、そういった子供たちの関係性や意思については特に咎める事もなく自由にさせていたようである。
 レクイエム戦争が近付いた際に両家で婚姻が決定された事自体は紛れもない政略結婚ではあるものの、二人の恋愛感情については貴族の当主たちも当然理解しており、結果としてその方針で行く事に対して何も問題は無いという意味での大きな後押しとなっていた。この婚姻は本人達においては純粋な恋愛の末の婚姻でもあったのだ。
 しかし、その方針を決定し二人の婚姻が決まって間もなく、急激に世界情勢は悪化。二人は正式に結婚することも無く、リナリア公国も新たな時代を幕開けさせることなく滅びた。尚、二人の婚姻や新たな国の体制作りに関しては貴族の長達とその身内が秘密裏に進めていた事であり、対外的には公にされていない。

イベリス・インペリアリス
 イベリスが内包する二面性の内、攻撃的な側面が表出している状態。自分と愛する者が幸せに過ごす為の障害になると判断した者に対してはどんな手段でも迷わず行使し排除する。今作では目立って登場する事は無かった。
 イベリスが能力を全開で発動させるときはこちらの側面が強く出る。その時の特徴としては普段の美しい銀色の髪は金色に変化し、瞳の色も虹色に変化する。総監との会話時、約束を反故にした場合の話に触れた際にその一端が垣間見えた。

 イベリス自身には世界や人に対する恨みや憎しみというものは無い。それは彼女が死ぬ間際のシーンでも触れられている通りで、彼女はこの世界の不条理さについては受け入れている。だが、愛する人との幸せな時間を邪魔しようとするものに対しては容赦しない。これは、生前の彼女が理想を夢に見て結局実現しなかった、訪れる事が無かった ”二人の幸せな時間” に対する「もう二度とその邪魔はさせない」という強い意思が呪いとなって顕現したようなものである。
 故に玲那斗と自分の逢瀬や二人だけの時間、玲那斗の幸せの為に必要な事(作中では3人の仲間達)を邪魔しようとしたり、壊そうとした者はそれに見合う代償を支払わされることになるだろう。
 島周辺の怪奇現象も「玲那斗と再会するまでは傷つけたくない思い出の場所」でもあるリナリア島へ、不用意に立ち入ろうとするものに警告の意味も込めて攻撃を行っていた結果である。ただし、どんな場合においても命を奪う程の事はしていない。(出来ないのではなく 【していないだけ】だという事には注意しておきたい。)
※イベリスの持つ特別な力(能力)については「イベリスの能力」を参照


世界特殊事象研究機構 大西洋方面司令 セントラル1 -マルクト-

姫埜 玲那斗(日)(ひめの れなと)
 -マルクト- 所属部隊 マークתの隊員。日本で生まれ育った青年。
 卒業後の進路に悩んでいたが人の役に立ちたいという思いと色々な世界を見て回りたいという思いが強く、高校を卒業後すぐに機構へ志願し入構を果たした。その後、機構が管轄する士官学校を卒業しており階級は現在少尉。
 家に代々伝わる宝玉をネックレスとして所持しているが、それがどういうものなのかは物語開始時点では本人は知らない。機構へ入るときにお守りとして家族から受け継いだこともあるが、それ以上に絶対に手放してはならないものという事は本能が感じ取っており大切にしている。
 玲那斗の正体はリナリア公国の新たな時代の始まりの王となるはずだった人物の末裔でありその生まれ変わり。イベリスの婚約相手の末裔であり、生まれ変わりという事になる。宝玉のネックレスはその婚約の際に受領した君主の証であり、リナリア公国の国章の半分が埋め込まれている。
 自分の部屋がこの世の楽園と言って憚らないほどのインドア派。好きな事は読書。

ジョシュア・ブライアン(米)
 マークתの隊長。階級は大尉。
 アメリカで農業を営んでいた両親の元で育つ。繰り返される天災などで苦しむ両親の姿を見てきた為、自分に何かできる事はないかという思いから大学卒業後に機構へ入ることを決心。子供の頃から農業の手伝いをしてきたので体格は良く大柄。優しい心の持ち主で部下への気遣いも忘れないおおらかな性格の持ち主。
 士官学校卒ではなく一般入隊ではあるが、機構での在籍歴とその数々の功績をもって士官へ登用されており現在階級は大尉。機構のトップである総監と個人的な繋がりがある。趣味は読書で歴史分野に詳しい。
 同じ隊に所属する玲那斗については彼が隊に配属されてからずっと一緒に過ごしており機構内での父親的存在でもある。ヒメノの「ヒ」という発音が苦手な為、常に「レナト」と呼んでいる。
 外見から見える印象と違って煙草も酒もNG。ホットミルクを好んで飲んでいる。妻子持ちで機構内ではファミリー区画に家族で居住している。

ルーカス・アメルハウザー(独)
 マークתの隊員。階級は三等准尉。
 機械整備や運用、システム管理や情報解析のプロフェッショナル。小型ドローン数機を同時に操る航空偵察や特殊なレーダー探知機による周囲捜索、物質の解析や構造解析など技能は多岐にわたり、あらゆる調査に欠かせない人材。機構が所有するシステム「プロヴィデンス」の開発者の一人。
 元々は大手システム会社の社員でAI研究の第一人者だったが、その腕を買われ機構からスカウトを受け入隊。仲間内からはマイスター・ルーカスとも呼ばれる。ドイツ出身。
 頭の回転の為に糖分補給が必要と常々口にしており甘いコーヒーとアップルパイ、ザッハトルテが好物。最近は玲那斗が持ち込んだ羊羹にはまっている。科学では説明がつかない現象や幽霊が怖い。
 親友でもある玲那斗とは同年代。彼が所持している宝玉の物質解析に興味を持っているが触らせてもらえない。

フロリアン・ヘンネフェルト(独)
 マークתの隊員。階級は一等隊員。
 直感が鋭く、何か変わったことや変化があればすぐに気付く上に機転が利く為、危険が迫っているときやとっさの場面での対応力に優れている。その勘の良さは他の隊員からも一目置くほど優れている。非常に礼儀正しい青年。隊の中では最年少。ドイツ出身。
 元々は世界中を旅してまわっていた冒険家。その優れた直感や洞察力を買われて機構からスカウトされたと言われている。
 動物好きで、特に犬が好き。難しいことを考えるのは苦手なタイプ。物事を悲観的に深く考え込むタイプの玲那斗にとってやや天然の気質がある彼の存在は癒しになっているようだ。

レオナルド・ヴァレンティーノ 総監(伊)
 世界特殊事象研究機構の創設者でありトップに立つ人物。初老の男性。普段は大西洋方面司令 セントラル1 -マルクト-にある総監執務室にいる。コーヒーが好きで、中でもブルーマウンテンがお気に入り。イタリア出身。
 政治的手腕に優れている。国際連盟 セクション6の局長であるマリアからリナリア島の調査依頼と調査に対する条件が提示された際、要求を呑む代わりに事件解決後の島の所有権と使用権について機構のものになるよう交換条件を提示しそれを認めさせた。
 ジョシュア・ブライアンとは階級的な立場と年代こそ違うが旧知の間柄。
 国際連盟の事実上トップに立つ人物であるマリア・オルティス・クリスティーとも旧知の間柄である。依頼を持ち込まれる度に苦労させられている為、彼女の事は頭痛の種と言う認識でいるが、別段嫌っているわけではなくマリーと言う愛称で呼んでいたりする。むしろ彼女の卓越した政治的能力と未来を見通しているような力に対しては最大級の敬意を持っている。だが時折見せる底の見えない暗さについては気を許さず警戒するべきだという認識である。

フランクリン・ゼファート 司監(英)
 世界特殊事象研究機構の将官の役職である司監を務める人物。レオナルド総監の右腕と呼ばれる側近。長年に渡り機構とレオナルドを支え続けてきた。強面で見るからに軍人といった風貌であり、見た目で勘違いされる事が多いが根は優しく部下思いの人物。英国出身。
 リアリストで余程の事が起こらない限りは危険な賭けなどに打って出る事は無い。無駄な事を嫌い、必要のない事はしない主義なのだが国際連盟から依頼が舞い込むたびにマリアの奔放さに付き合わされて苦労する事になる。


国際連盟

機密保安局 ーセクション6ー

マリア・オルティス・クリスティー(不明)
 国際連盟 機密保安局、通称セクション6の局長を務める。金髪でウェーブのかかったミディアムヘアに赤い瞳、ドールのような均整の取れた顔立ちと華奢な体格の見た目は十代半ばくらいの少女。普段から黒を基調としたゴシックドレスを身に纏う。年齢、出身、経歴など一切が謎に包まれている。
 リナリア島の調査に関してほぼ独断で国連や機構の調査を実行させるなど強力な意思決定権があり、それを実現させるための根回しを確実に行うなどの政治能力に長けている。
 未来を見通しているかのように将来に起きる出来事やその結果を次々と言い当てる様と可憐な見た目から、彼女を知る者からは「予言の花」という二つ名で呼ばれている。いつも太陽のように明るい笑顔を振りまいているが、時折その瞳の奥に底知れない暗さを湛える事があり、その本心や心理などは常人では窺い知る事は出来ない。
 レオナルドやフランクリンとは旧知の間柄であり、数十年来の付き合いがある。機構へ依頼を持ち込むたびに二人を翻弄しているという。マリア曰く、先に語った機構の二人は明晰な頭脳と優れた人柄を備えている賢人でありお気に入りとの事。レオナルドやフランクリンの事を愛称で呼ぶのもその為。
 とある目的を叶える為に行動をしているようだが、その目的に関しては不明。ただひとつ分かるのは、その目的自体は彼女がいつも言う【世界の平和の為に】という言葉と繋がりがあるという事だけである。

アザミ(不明)
 国際連盟 機密保安局局長であるマリアの傍に寄り添う女性。黒色を基調とした服装を常に纏っており、その顔や表情は帽子でいつも隠している。
 マリアと同じく年齢、出身、経歴など一切の素性が不明の人物。マリアとは違った薄暗さがあり、フランクリンから警戒をされている。
 笑ったり不貞腐れたりするマリアの表情の移り変わりを眺める事が趣味であり日々の楽しみとしている。彼女の事は心から大切な存在だと認識しており、実際世話を焼きすぎるなどやや過保護な傾向がある。マリア本人から心配性が過ぎると言われ時折煙たがられる事もあるようだ。
 マリアからアザミと呼ばれているが本名かどうかは不明。アザミは花の名前であり、その花言葉は「復讐」などを指し示す。


統括総局 ーセクション5ー

局長(不明)
 国際連盟 統括総局、通称セクション5の局長。ハワードにリナリア島の現地調査を指示した。

ハワード・ウェイクフィールド(米)
 国際連盟 統括総局に所属する人物。元軍人。優れた艦隊指揮能力を持ち、リナリア島調査艦隊の司令として指揮を執った。調査計画に対しては命令を受けた当初から疑念を持ち続けていた。
 艦隊の指揮を執ってリナリア島に接近するもイベリス・インペリアリスの妨害により所属艦艇二隻が衝突事故を起こし撤退を余儀なくされる。事故の際の迅速な人命救助や全員救出の功績を評価され顕彰されたが、本人はそれらも含めて全て何者かによって最初から仕組まれた茶番であると考えている。


組織編

-世界特殊事象研究機構-

概略
 地球規模で災害が多発していることを受け組織された国際機関。
 この機構は世界中で観測されているあらゆる異常気象や自然災害の観測及び被害に対する支援、またそれらの兆候の事前察知とその研究、その他航空・海洋事故などに関する調査、救助支援等を行う為に組織された。
 当該国が予め機構との間に国際条約を締結さえしていれば、その国で災害等が起きた時、必要だと判断すれば入国の承認を待つことなく領地・領海・領空への立ち入りが許可され、救助活動等を限定的ながら遂行できる特殊権限を持っている。ただし領地内での行動にはもちろん制約があり、その範疇を越えた行動・活動は出来ない。活動条件に付いては加盟各国とそれぞれ事前協議の上、その条件など内容が細かく決定されている。

 公海上に建造されたメガフロートが本部であり、各海洋ごとに区切って3つの本部が配置されている。

大西洋方面司令 セントラル1 -マルクト-
太平洋方面司令 セントラル2 -ケテル-
インド洋方面司令 セントラル3 -ティファレト-

 その他、7つの支部と公には存在が秘匿されている1つの支部がおかれている。具体的には医療特殊研究支部ブランチ5 -ケブラー-などが存在する。

 これらは生命の樹(セフィロトの樹)を名前の由来としているが、それは地球上の全人命の健康と安全、さらに人類の発展を願っての事である。

機構における階級制度
 軍隊ではないが指揮系統を明確にするため階級制度を設けている。
 准尉階級は専門知識を持つものが任命され特に抜きんでた技能を持つものが三等准尉の階級を与えられる。技能によって「マイスター」や「ドクター」などと呼ばれることもある。
 士官学校制度もあり、在学中から実務訓練を受け卒業後には少尉階級から各隊に配属となる。
 一般入隊の場合においても現場での実績により士官への登用が行われる。
 
【階級一覧】
「将官」 総監 - 副総監 - 司監
「佐官」 大佐 - 中佐 - 少佐
「尉官」 大尉 - 中尉 - 少尉
「准士官」三等准尉 - 二等准尉 - 准尉補佐官
「下士官」一等隊員 - 二等隊員 - 三等隊員

運営
 機構の運営に関しては世界各国が資金や物資、研究に必要なものを援助している。その代わりに研究で得た成果やデータは国際連盟を通じて各国、又は別の国際機関へ譲渡されており、有事の際には速やかに当該地域で展開している機構の本部が中心となって救援活動を行う。
 国際連盟との繋がりは深いが、互いの運営や行動に対する不干渉の原則を持つ。
 尚、特定の国に対して便宜を図る行為や、他国の利益を侵害する行為、危険にさらしたりするようなデータの譲渡等は条約で全面禁止されている。

国際連盟

 世界中の国々が加盟する一大組織。各国が国力の差などを抜きにして特定の問題に対する意見を交換し合ったり議論を行ったりしており、国際社会の情勢が円滑に進むようにする役割を果たす。世界中にいくつかの支部が置かれている。
 国際連盟には下記のような部門が設立されており、各専門分野への取り組みが行われている。各部門はセクション1~5の名前で呼称されている

和平推進部-セクション1-・・・世界恒久和平の実現と安全保障を司る。
経済計画部-セクション2-・・・世界経済の滞り無き安定運営を司る。
統治開発部-セクション3-・・・発展途上、後進国の援助及び先進国との橋渡しを司る。
世界法廷部-セクション4-・・・国際司法による国家間の司法紛争の解決を司る。
統括総局 -セクション5-・・・各部門から立案された計画や意見を取りまとめる本部。

 世界中から集められた情報などを元に解決が必要であると判断された事案については各セクションから統括総局へ意見書などが提出され、一度統括総局がその取りまとめを行った後に世界議会へ提出される。さらに議会で世界各国が事案に対する話し合いを行った上で解決への取組方を協議し、最終的に承認が得られたものに対して実際に取組が行われる仕組みである。

機密保安局 -セクション6-
 公にはその存在が秘匿されている裏部門。マリアやアザミが所属する。各セクションや世界議会を超える強力な意思決定権を持ち、単独で世界各国を動かせるほどの命令権も持ち合わせている。
 セクション5で取りまとめられた資料はそのまま世界議会へ提出されるが、規模の大きな事案や特別懸念される事案に対してはセクション5からセクション6を経由した後に世界議会へ提出される。このセクションを通過する際にはその取組み方などは事前に確認と決定が予め行われる為、世界議会の承認は形だけのものとなる。
 この部門の存在を知る者は国連内部でも局長級など極僅かである。世界特殊事象研究機構に所属するレオナルドとフランクリンの二人に関してはマリアと直接の面識がある為その存在を知っている。

機構が所有するシステム等

【プロヴィデンス】(全事象統合集積保管分析処理基幹システム)
 世界中で観測された事象及び研究成果などが収められた莫大な容量のデータベースと、それを超速で処理するスーパーAIにより構成される機構が誇る基幹システムの名称。
 「神が全てを見通す目」の名にふさわしい情報処理能力を持ち、気候予測や災害予知はもちろん、送信されたデータから導き出される予測結果の演算など用途は多岐に渡る。
 調査においては必要なデータはトリニティにより採集し、要求される内容に応じて即時に分析等を行い結果を返す。その為の各種指示は専用のコンソールを活用するか、各隊員が所持する専用外部小型端末ヘルメスを使用する。
 過去の調査では「現地で物質の採集、データの採集」を行った後に「研究機関へ持ち込み解析」し「結果を出す」までに相当な時間をかけていた事が、このシステムとトリニティのおかげでわずか数分以内、場合によっては数秒以内で全てが完結できるようになった。
 ただし、システムの使用にも当然制限がかけられており、使用者の厳密な認証や使用目的・履歴などは常時監視されている。データベースの参照や簡易的な分析などについては機構に所属する人間であれば常にオープンにされているが、高度な分析や規模の大きな演算を伴う処理については申請許可が下りない限り使用できない。予め決まった調査予定がある場合、調査に出向く隊員のヘルメスからの処理要求には随時応じるように許可が出されている。(但し処理要求に対する難易度設定により、要求が弾かれる事もある)
 申請許可が下りていない場合に例外的に緊急で大規模な処理が必要な場合は外部端末であるヘルメスを通じて特殊認証を行うか、各セントラルのコンソールから緊急指示を出す事でシステムの使用が可能となる。

 尚、このシステムの存在は部分的にしか一般公表されていない。具体的には「高性能のコンピュータがある」程度の情報である。またシステムの存在する位置についても機構内では機密事項とされており、その詳細を知る者は数少ない。開発者の一人であるルーカスですらその存在位置については知らされていない。これは悪意を持った人間による不正利用やシステムの破壊等を防ぐ為である。


【トリニティ】(全事象統合観測自立式ドローン)
 全事象統合観測自立式ドローンの名称。陸・海・空の3方における全環境自立行動能力を持ち、映像・音声・温度などあらゆるデータ採集を可能としている。採集したデータはプロヴィデンスへと送信されデータベースへ登録される。また、ヘルメスやコンソールから要求された指示によってそれらの採集された情報が即時に分析処理に活用できるようになっている。


【ヘルメス】(基幹システム連携 携帯型情報通信端末)
 携帯型情報端末の名称。機構に所属する人間に対して1つ支給される。メールや音声通信など隊員同士の連絡等のコミュニケーションに使用出来るほか、プロヴィデンスのデータベースに登録されているデータ参照や簡単な分析を伴う処理を実行させることが出来る。
 本作においては玲那斗が尖塔に設置されていた階段の構造強度チェックをプロヴィデンスへ要求するシーンや、ルーカスが中央広場における石碑に記載された古代文字を解析するシーンなどで使用された。


【ルルド】(移動式水処理装置)
 移動式水処理装置の名称。小型のものから大型のものまで分類がある。海水淡水化を始めとして、あらゆる環境下にある水を飲用可能レベルまで短時間で浄化する事が可能。
 現地調査において大量に持ち込むことが難しい水の確保や、災害時に安定して水を供給する事を想定して設計された。浄化に必要な時間は浄化しようとしている水の質や量によって変化する。
 作中ではベースの横に浄化後一定期間保存も可能な比較的小型サイズのものと、各隊員が調査に出向く際に使用する携帯特化型のものが使用された。


イベリスの能力設定

 イベリスの死後に備わった特別な力。【光に関する事象を自由に操ることが出来る】能力。作中に登場した能力を主に記載する。
 ※尚、質量をもたない光子の集合体であると推測される彼女がそもそも反射する対象が無い空間にどのようにその姿を現界させているのか、また現実世界の物体に触れたりといった干渉が出来ているのかについては現在解明されていない。

能力によって出来る事(一部抜粋)

【分身体投影】
 自身と全く同一の個体を全く別の場所に投影する。投影された個体を自分自身の意思で操作する事が可能。物に触れたり会話をしたり、本体と全く同じように行動させることが出来る。投影した個体から見える景色は本体の左目で視認する事が出来る。

能力による制限は以下の通り。
1.投影する起点となる場所は自身が一度でも直接訪れた事のある場所に限定される。

2.投影した個体の活動範囲は本体の位置から約半径200メートルが限界。

3.本体と投影体の距離が離れるほど左目の瞳の色がスペクトル順に変化する。本体と投影体共通で同様の変化が起きる。大まかに分類すると下記のような変化を辿る。

※距離が近い 「紫→青→緑→黄緑→黄色→橙→赤」 距離が遠い

 この事が分かっていればイベリスが能力を使用しているのかいないのか、又実際の本体との距離が遠いのか近いのか等を判別する事がある程度可能。
 ただし、能力を発動しているかの区別は出来たとしても距離については投影体だと思っていたものが本体だった場合、第三者から見る距離感はまったくの逆になる可能性がある(投影体を限界近くまで別の場所に投影して赤い瞳になっている状態の本体が自身の近くにいる場合等)為、厳密に本体の距離がどこにあるのかを判定するのは容易ではない。

4.投影した個体を操作している際はそちらに注意を向ける必要がある為、本体での行動にある程度制限がかかる。(能力使用時は集中力を使うような複雑な作業は出来ない。)

5.光を使用した投影の為、光源が存在しない場所へ投影体を出すことは出来ない。(本体を現界する事も出来ない)

6.投影体も下記に挙げるような能力を使用する事は出来るが本体よりかなり小規模な能力の行使しかできない。

7.能力使用時は本体の左目で見える景色は投影体の目から見える景色になる為、現在地の状況を左目で視認する事が出来ない。


【透明化(可視無効化・認識阻害)】
 姿そのものを瞬間的に消すことが出来る。また姿を消した後に別の場所にすぐに現界する事も可能。
 これら一連の動作速度自体は光速によって行われる為、その瞬間を視認・知覚する事はまず出来ないが、彼女の意思によって「姿を消して」「次にどの場所に姿を現す」かを考えて決定する為の時間は必要な為、実際には人の思考の速さと同一の速度で能力の行使をすることになる。
 その為、ある程度彼女の考えや思考の読み取りができるか勘によって予測する事が出来る人間であれば、いつどのタイミングで消えて姿を現すかを予期する程度は可能である。機構内においては玲那斗、フロリアン、総監が現在の所該当の人間となる。
 作中においては自身の姿を消すだけではなく、本当の位置にあるリナリア島本体を隠匿していた。代わりに別の場所にリナリア島の虚像を構築し、そこに自分自身の投影体を現界させ、その場所に近付く者を追い返し続けてきた。


【虚像構築(蜃気楼)】
 現実には存在しない場所に現実に存在するものを虚像として投影する能力。自身の投影体を出す能力に酷似しているが、こちらは自身を投影するわけではなく、ただ現実に存在する見たものを別の場所に投影するだけなので自由に操作したりすることは出来ない。
 その表出の仕方は蜃気楼のようである。作中ではリナリア島の現実の所在地から5キロメートル離れたまったく別の場所に本物と同一の島を存在するものとして表出させるという離れ業を行使してみせた。これだけの大規模な投影を永遠に近い時間継続出来ていたことについてはリナリア島の加護による力の増幅が働いていたからこそであると言える。
 尚、現実には存在しないものを投影する事は出来ない。また、彼女が知らない、見たことがないものについても投影する事は出来ない。
 

【電子機器への干渉】
 作中では通信機器への割り込みやカメラへの干渉、さらに意図的な電波遮断や座標データ改竄、電磁パルス攻撃のように電子機器のシステムダウンさせたり、その他あらゆる計器異常を起こさせるなど、デタラメとも言える強力な操作を同時に行って見せた。
 彼女は現代の知識があるわけではなく、専門的な機械知識をもつわけでもない。これらについてはリナリア島にいた事で「土地の加護による力の増幅」が行われた結果、彼女がそうあってほしいと願った事が現実の機械に影響を与えたものと言えるだろう。
 島から離れた状態の彼女が意図的にこれらの現象を起こす為には、ある程度その対象の仕組みを理解したりする必要がある。カメラの映像にいたずらを施す程度であればすぐに可能になるかもしれない。


【フラッシュ】
 巨大な投光器から放たれるような強烈な光を瞬間的に周囲に拡散させることが出来る。西暦2034年の国連の調査隊に対して目くらまし及び海面の水分をある程度蒸発させるために使用した(後述:霧の発生項目にて)。
 高速で明滅させることで意識障害を起こさせることも可能ではあるが、彼女本人も気分が悪くなる為使わない。


【霧の発生】
 作中で西暦2034年の国連調査隊に対して使用した。厳密には彼女自身の能力を複数組み合わせて霧が発生する状況を意図的に作り出したという意味で、霧を発生させる能力があるわけではない。
 特定地点の海面の水分をある程度瞬間的に蒸発させ大気中の大量の水蒸気を生み出す事でその環境を再現した。光線収束(後述:光線収束の項目にて)にて太陽光エネルギーを海面に照射し水分を蒸発させ、収束させていた光を一気に周囲に拡散させる事で目くらましに転用(フラッシュ)した。
 この一連の動作が国連の調査隊からみると突然の強烈な光の後に霧が発生したように見えた。


【念写(ソートグラフィー)】

 心に思った事を現実世界の物体に焼き付ける力。作中では中央広場の石碑にメッセージを書き込む際に使用したとみられる。


【光線収束】
 この能力を単一的に使用した描写は作中には無いが霧の発生の為に応用的に使用した。周囲にある光を特定の一点に収束させる事で強力な熱エネルギーによって燃やす事が出来る。光を収束させる為の凸レンズとなる焦点距離を彼女の指先から任意の距離に設定する事が可能。
 原理上、素早く動き焦点を合わせられない物体に対しては行使は限りなく難しい。また、威力は周囲に存在する光源の強さに依存する為、室内のLEDや蛍光灯などの照明程度ではこの能力は使用できない。(目くらまし程度に収束させることは可能である。しかし人に対しての場合は、相手の目を傷つける可能性がある事から本人は使いたがらないと思われる。)
 使用する機会があるかどうかは別として、野外で火を起こす必要がある場合に使う可能性はある。


【インペリアリス】
 イベリスが目的の為に手段を選ばず能力を全開放した状態。端的に言うと怒りが頂点に達した際に表出する。
 銀色の髪は金色に染まり、瞳の色は両目の瞳が虹色に輝く。また本人の言動も多少変わる。この状態であればリナリア島の土地による加護がない状態にあっても普段よりかなり大規模な能力の行使が可能となる。いわばリミッターが外れた状態である。
 ただし、その絶大な能力を行使できる時間は15分程度が限界であり、本気で力を出し切った場合はしばらくの間自分の姿を現界させる事すら出来ないほど消耗してしまう。(姿を現界させずに玲那斗と会話する程度は可能)

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