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椎間板変性と疼痛について

臨床では画像上の椎間板変性の程度と腰痛の程度が必ずしも一致しないことが多い。椎間板変性が大きくてもさほど痛みの訴えのない場合と椎間板変性は小さくても痛みの訴えが強い場合がある。

ここで考えられることは

①椎間板変性があっても必ずしも痛みを起こさないのではないか

②椎間板変性にプラスして何か他に腰痛を引き起こす生理的作用があるのではないか

①に関してはいろいろな文献や臨床経験からもわかってきている。②に関しては和歌山県立医科大学の研究チームの移動式MRIを用いた一般住民を対象とした大規模な研究で、椎間板変性単独では腰痛との関連はなかったが、椎間板変性に加え終盤変化があると腰痛と強く関連することが報告されている。つまり、椎間板変性にともなう椎間板内部の環境変化が疼痛と関連があるのではないかということである。

このあたりはとても興味深いので、さらに考えていく。


椎間板変性と神経について

椎間板は主に洞脊椎神経に支配されている。そして、通常その神経線維は椎間板線維輪の外側1/3にしか存在しないとされている。

しかし、この洞脊椎神経が椎間板内層に侵入する神経線維数や神経線維長が増加する現象が報告されている。

また、腰椎椎間板傷害による椎間板変性モデルの支配感覚神経である後根神経節や脊髄後角を免疫組織学的に検討した研究において、疼痛関連物質(カルシトニン遺伝子関連ペプチド、マイクログリアなど)が長期に渡り発現上昇していることが明らかになっている。つまり、支配感覚神経の持続的な感作が生じていることになる。

椎間板変性と血管について

上記の椎間板内層への神経侵入と合わせて血管の侵入もみられることが報告されている。

もともと椎間板は人体最大の無血管組織である。そのため全身の免疫系から隔絶された組織であるが、椎間板の変性にともない、神経とともに血管の侵入がみられる。この血管の侵入が疼痛関連物質と大きな関係をもってくる。


椎間板変性と疼痛関連物質について

坐骨神経痛患者と椎間板性腰痛患者の椎間板検体を比較すると、椎間板性腰痛患者の椎間板検体には炎症性サイトカイン(インターロイキン-6、-8)の発現が上昇していたと報告がある。また、同様に神経成長因子(NGF)や血管内皮細胞増殖因子(VEGF)といった各種成長因子の発現上層も報告されている。つまり、炎症反応と神経、血管の侵入が椎間板内で生じていることがわかる。

また、炎症性サイトカインはマクロファージから産生され、炎症性サイトカインはマクロファージ以外の椎間板内の細胞を刺激します。これにより成長因子の発現上昇を引き起こすことが明らかとなっています。

※VEGF:脈管形成や血管新生を誘導するサイトカイン


椎間板性腰痛の発生機序

以上を踏まえて椎間板性腰痛の発生機序を考えると


線維輪の破綻

椎間板内が外界と接する

神経や血管などの侵入

血管侵入によりマクロファージが流入

炎症性サイトカインを産生

炎症性サイトカインが椎間板内組織を刺激

成長因子の発現上昇を促進

これらの相互関係により椎間板由来の疼痛が発生


今回は椎間板の変性が組織学的にどのような影響があるのか、それが疼痛とどのような関係があるのかを簡単に記した。



参考文献

・臨床整形外科.2018.No11.椎間板研究の最前線  

・日本腰痛学会会誌.2008.椎間板の免疫特権と腰痛との関係

・日整会誌.1970.腰部椎間板障害の研究











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