【医学生・研修医向け】君たちはどう生きるか - 誰も教えない医師の進路の話 - 4. 教授になる


さて、話はガラッと変わります。

4-1. 教授になるために必要なこと


そもそもあなたはなぜ教授になりたいのでしょうか。
給料面でいえば、大学からの給与は年間1000-1200万円程度であることが多いようです。もちろんアルバイトなどの単価も変わりますので、全体で1500-2000万円程度と思っておくのが良いでしょうが、それにしても多くはありません。

手術の執刀をしたいのであれば市中病院の勤務医でも十分に可能なところは多いですし、研究がしたいだけであれば自ら科研費に採択されればできるでしょう。集団の長になりたいのであれば、開業医はもっと違うレベルでトップである上、教授となってもその上には学部長や学長、果ては厚生労働省や文科省までいますので、純粋なトップになるのは困難です。

複数の研究を指揮し、地方であればその地域の医療について影響し、日本の先端を走り続けたいという場合に、教授になる必要があります。

もう一度、漠然とではなく具体的に教授になりたい理由を考えてみてください。

教授となるためには、最低でも博士号留学の経験が必要です。
この上で、研究の実績と臨床の実績、教育の実績が必要です。
といったところで実績と言われてもピンとこないでしょう。

一般的に医師の世界で実績といった場合は論文のことで、大学の世界で実績といった場合は獲得した研究費などのお金のことです。

もちろん、学会の役職やシンポジウムでの発表その他も実績ですが、これらは基本的に論文での実績に応じて与えられる側面が強いです。学会発表を繰り返しても論文化しない人は評価されません。とはいえ、もちろんコネクションも必要です。

最近流行している、特に有名研修病院を出た先生方を中心とした「研修会」や「勉強会」の多くは、キャリア形成という意味ではほとんど意味を成しません。論文や専門書以外でのレジデントノートなどへの寄稿も同様です。

研修会や勉強会で華やかな発表を行い、様々な研修医向け雑誌などに記事を執筆してキラキラ輝いているように見える先生方は大勢いらっしゃいます。しかし、そういう先生に憧れる前に、学会発表を継続的に行い論文を査読誌に載せているかどうか、博士号をお持ちかどうかは最低限確認しておいた方が良いと思います。

さて、教授に必要な臨床の実績とは、最低でも地方の大学病院以上の病院での手術件数などの実績のことですので、この点も注意が必要です。無名の市民病院で手術を何件行っても、認められない可能性が高いです。

つまり、教授となるためには最低でも博士号を取得し海外に留学した上で、コンスタントに論文を執筆し科研費を申請して取得する必要があります。
また、基本的に地方の大学病院以上の規模の大病院での勤務を継続する必要があるということになります。

また、教育の実績とはどれだけ人を集めたかという側面がありますので、名前だけで人を呼べるような、その分野の少なくとも日本国内での第一人者となる必要があるでしょう。

では、そのためにはどのような選択をしていけば良いのでしょうか。

4-2. 教授を目指す場合の入局先


教授を目指す場合の入局先ははっきりしています。
それは、コンスタントに他大学の教授を輩出している医局です。
こうした医局では早い時期から様々な意味での実績が積みやすく、大学院の研究テーマも豊富に存在し博士号が取得しやすいです。
また、問題のない留学先が確保されていることが多いことにくわえて、教授選対策のノウハウも豊富に積み上がっています。
もちろんこれまで教授を輩出したことのない医局から教授になる方もいらっしゃいますが、やはり極めて厳しい道であることは間違いありません。最初から教授になることを考える場合は、教授を多く輩出している医局に所属するのが無難です。

自分が進みたい分野を決めたら、その分野の日本の全ての大学の教授、准教授の出身医局を調べ上げてみましょう。多いようでいて意外と少ないです。その中で出身が最も多い医局に入るべきです。
一般的にその医局の10年上の先輩の姿は10年後の自分の姿ですから、見学する際はその点に注目してみてください。

教授を目指す場合3年程度ごとの異動がつきものですので、残念ながら妻の実家近くなどのプライベートな条件はあくまで可能であればの範囲での選択となります。翻っていえば、自らが子育てなどの家庭の仕事に積極的に関わることを諦める必要があります。配偶者の理解が絶対に必要です。

医学生の皆さんは、是非とも5年生の春までに入局先を決めましょう。
そこから夏休みに入局先の教授に挨拶に行った上で研修病院についても相談してみてください。
おそらくどの医局でも年末に忘年会や業績報告会などの機会があり、早々に入局を希望すれば勧誘もかねて呼ばれるはずです。その席で研修病院の長などを紹介されれば、マッチングに悩む必要はもはや何もありません。

4-3. 留学


准教授以上の役職に就くためには留学の経験が必須です。
留学の時期については様々ですが、一般的に専門医と博士号を取得した後が良いと思います。

ご存じの通り、留学には臨床留学と研究留学があります。
診療行為を伴う留学であれば、事前にその地域での医師免許を取得しておく必要があります。一部の国では日本の医師免許がそのまま使用できますし、医師免許がなくても所属長の許可があれば医療行為ができる国などもあります。それを踏まえて留学先を選択する必要がありますが、所属医局の教授がコネクションを持っている場合はそれを何よりも優先しましょう。

研究留学について、アメリカなどでは初年度は無給であることが多いです。この場合でも、2年目からは必ず$1でも給料をもらえるように論文を書いて実績を上げつつ、昇給の交渉をしましょう。

日本と違って給料とはすなわち責任です。
責任のない人間に大事なことは任せません。
教授を目指すあなたが教授となった時、自分の後輩をそのラボに給料がもらえる立場で紹介できるように頑張りましょう。
逆に、そのようなコネクションを持たない医局は避けた方が無難です。

通常1年間で1千万円前後の費用がかかりますので、それまでに最低でも2千万円程度は貯蓄しておく必要がありますが、教授のコネクションによってこの額は大幅に減ることがあります。

教授となるためにはこれ以降も様々なハードルが待っていますが、本稿の目的は医学生や研修医の進路選択の一助となることですので、以降は割愛します。 


#研修医
#研修病院
#入局先
#QOML
#医師
#医師のキャリア

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?