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「死ぬ気で味わう」3冊 #料理本リレー

(※Instagram からの転載です)

#料理本リレー
キターーー(゚∀゚)ーーー!!

【From】青山ゆみこさん( @aoyama_kobe )。作家であり、リスペクトする編集者。『人生最後のご馳走』や『ほんのちょっと当事者』の著書がある。関西の「いっとかなあかん」店を食い尽くしてきた筋金入りグルマン。

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私が紹介するのは「死ぬ気で味わう」料理本。食べるって命がけの行為だ。本来は。食べなきゃ、死ぬ。忘れがちなことを思い出すクールな三冊だけど、すまん…。つまるところ「映え」る本は一冊もない。

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■近藤康太郎『おいしい資本主義』(河出書房新社)

戦時下、ほとんどの作家は国家に絡めとられた。そうしないと食えないから。食わないと死ぬから。著者は嫌われ者の斜陽大マスコミ・朝日新聞社の名物記者。この春から「多事奏論」など書いている。著書も多いが、出版だって不況だし、いつ食いっぱぐれるかわからない。とはいえ、無理やり書きたくもないことを書かされるようになったら、それは物書きとしての死も同然。やりたくもない労働で無理やり搾取される構図はブラック労働にも当てはめることができるだろう。

ではブラックに陥らないで人間らしく生きるにはどうするか。毎朝1時間だけ農作業をやって、生きるための兵糧を確保する。そしてあとは好きなだけ書こう。そう思い立って、米をつくりはじめる。アロハ姿で。

プラトンは、理想的な世界のあり方を〈真善美〉としたわけだが、これはつまり、正しいこと〈真〉、よきこと〈善〉、だけではだめだということでもある。
 〈美〉が、決定的に重要なのだ。美、つまり、自分にとってかっこよいこと、楽しいことでなければ、いくら真であったり善であったりしても続かない。楽しくないと、生きていけない。かっこよくなければ、生きている意味がない。

渋谷生まれ、センター街育ち。足のサイズ29センチ。強面。なのに虫が怖い。そんな著者が、新自由主義に小さな戦いを挑む顛末。挟まれる古今東西の文献引用が最高にロック。疾走する文体はハッピーで、一級のブックガイドにもなっている。読後、一膳の白いご飯がハンパなく美味しくなる一冊。

革命もユートピアも、犬に食わせろ。わたしがやってることは、ただ、「資本主義という怪物に、力なくからめとられるだけが、人生なのではないんじゃないか?」という仮説を、人体実験で確かめようとしているだけなんだ。


■白戸三平『三平の食堂』(小学館)

『カムイ伝』のスピリット溢れる、民族学的な醍醐味に満ちたワイルドな料理の数々。特に蟹漬け(ケジャン)はガチ。初めてケジャンに出合った子ども時代の大阪。近所の朝鮮人のおじさんが藻屑蟹の塩辛(ケジャン)をあてに飲む風景画から、藻屑蟹に寄生するジストマとヒトの食うか食われるかの営みを、そのレシピを描ききる。

蟹漬けの歴史は古く、遠く万葉集にもその記述があることから、古代より日本人に縁が深かった食物であることがわかる。が、ある時期から宗教上の理由もあって、食べられなくなったようである。現代に暮らす我々は、蟹漬けの文化を朝鮮の人から教わることになる。


■上出遼平『ハイパーハードボイルドグルメレポート』(朝日新聞出版)

わけのわからない内戦で生き残った家族を、わけのわからない疫病(エボラ出血熱)で殺されるような国・リベリア。人を食った少年兵の噂を聞いて著者は旅をし、先々で出会う人たちの食卓を見せてもらう。

そのままでは固かったり臭かったり、口に運ぼうなんて思えないような諸々が、様々な知恵と工夫で香り立つご馳走に変わる。僻地に行けば行くほどに、その魔法はビビッドだ。 

実際、蝿が蛆を産み付け放題の魚を使った料理のレシピ(描写)はなんだかレモンサワーに合いそうで真似してみたくなる。蛆は嫌だけど。

印象深い描写がある。エボラから生還した女性に、食後に問う。生還してから何か変わったか?

「私はずっと不幸。生まれた時からずっと不幸で今も不幸」

「こうして生きているだけで幸せです」なんていう、回答として想定しがちな定型文は通用しない世界がある。つまり「美味しく食べて幸せ」というごく当たり前の感情は、それ自体が生存権が脅かされぬ我らに与えられた特権なのだと気付かされる。

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【To】村井理子さん( @rikomurai )。エッセイストで翻訳家。米国人料理人キャスリーン・フリンの著書『ダメ女たちの人生を変えた料理教室』『サカナ・レッスン』の訳者。ぎゅうぎゅう焼きを日本の食卓にもたらした人でもある。

私の大切な著者であり、最高におもろいお喋り仲間です。よろしくお願いします。

※4月28日追記 もうお一方。

【To】三砂慶明さん( @yoshiakimisago)。カリスマ書店員。梅田蔦屋書店で「読書の学校」を主宰。コロナ禍で料理にはまり、最強のレシピブックを探している。

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#料理本リレー は、主婦と生活社・料理編集 @ryourinohon からの発信。愛読している料理本を紹介するリレーです。(詳細はInstagram @ryourinohon の4/8付の投稿)

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