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鉄緑会で6年間落ちこぼれ続けたらどうなるのか

 どうも、紫新です。
 今日は高学歴らしい記事を書こうと思います。知る人ぞ知る、鉄緑会という天才集団の塾についてです。

 僕の中高は偏差値65くらいの一貫校で、中1から鉄緑会に通っていました。はっきり言って、鉄緑生で早慶、しかも一浪なんていうのは、とんでもない落ちこぼれです。世間では鉄緑会の話と言えば、東大に合格した人からしか出ないので、僕の話は逆にレアかなと思い、書かせてもらいます(笑)

 一つ前置きすると、僕が鉄緑会に通っていたのは、10年以上前なので、参考程度に聞いてください。ただ、細かいカリキュラム等に変化はあっても、鉄緑会という塾の大きな指針は、今も昔も変わらないように思います。


中学受験を終えてすぐに東大を見据える

 前述の通り、僕は偏差値65くらいの中高一貫校に、中学受験をして通っていました。第一志望だったので、合格発表では親と一緒になって喜んだのを覚えています。
 その合格発表を見終えた帰り、校門のところで親が1冊のパンフレットを受け取ります。それが「鉄緑会」の案内パンフレットでした。

 この鉄緑会には、中学1年生から高校3年生までの生徒が在籍しています。浪人生は受け入れていません。そして、他の塾との決定的な違いが、入塾テストがあるということです。この入塾テストでボーダーの学力に届かなければ、入塾をお断りされます。他の塾の入塾テストは、普通クラス割を決めるものですが、鉄緑会の場合は入試のようなものなのです。

 ただ、僕自身は、入塾テストを受けずに鉄緑会へ通いました。それは、中学1年の春に限り、鉄緑会が定めた指定の中学入学者は試験を免除して入塾できるからです。この指定の中学とは、開成、麻布、桜蔭、筑駒、といった、名だたる進学校を指します。僕はこの指定の中学に合格していたので、入塾テストなく入会できた、というわけです。中学受験ですでに学力が証明されているからですね。
 しかし、この進学校パスも中学1年の春しか通用しません。それ以降に入塾しようと思ったら、学校に関わらず入塾テストの合格が必要になります。この入塾テストですが、滅茶苦茶難しいことで有名で、指定された進学校の生徒であっても、容易に合格できるものではありません。だから、鉄緑会に通うなら中学1年の春から行け、と言われるのです。

圧倒的な速度の授業と地獄の居残り

 鉄緑会で学ぶ教科は高校生になるまで、英語と数学だけです。ただ、授業の速度は尋常ではありませんでした。中学校の授業も進学校なので当然早いのですが、それを遥かに凌駕するレベルです。具体的には、中学数学の範囲を約1年間で終わらせます
 それを可能にするのは、圧倒的な量の宿題と、できるまでとことんやらされる居残り授業です。授業は基本的に先生の説明だけで終始するため、演習は宿題で補うわけですが、3年間を1年に圧縮してるわけで当然膨大な量になります。そして、毎週授業の最初に、前回授業の理解度を図る復習テストを実施するのですが、ここで点数が悪いと、間違えた問題の直しや再テストを3時間の授業の後に居残りでやらされます

 ちなみに鉄緑会の先生は、全員東大卒、もしくは、現役東大生です。かなり厳しい採用試験をしているようで、全員熱意も知識も半端じゃない、東大の肩書に恥じない方ばかり。現役東大生だと生徒との距離感も近く、基本的にフレンドリーで質問しやすい環境でした。この東大生に気軽に質問できる(=的確でレベルの高い回答が得られる)環境は、鉄緑会に通う大きなメリットだと思います。

 さて、この環境で、僕も最初の一年は何とかくらいついていました。それでも鉄緑会の中で、中の下くらいでしたが。しかし、中学2年以降、どんどんついていけなくなります。さらにこの時期、僕はネトゲにはまってしまい、鉄緑会だけではなく、中学校の中でも下の下の落ちこぼれになります(ネトゲにはまった経緯は別記事で書いています)。

 落ちこぼれると襲ってくるのは、大量の居残り課題。17時から20時まで3時間授業を受け、2時間居残りをし、1時間かけて帰宅。家に着くのは23時ころというのも普通にありました。
 この頃の僕は、鉄緑会の課題をこなすことだけに必死でした。宿題は深く考えず、とにかく何かしらの答えを出す。考えてないから当然答え合わせはボロボロだし、身にならない。で、復習テストもボロボロで、居残りさせられる。居残りでも、早く帰るために、その場しのぎの答え暗記だけして、理解しようとしない。
 でも、それでも僕はこれをしていれば東大に受かると思っていました。何故なら、鉄緑会に通っているという事実だけで安心していたから。中学校でも鉄緑会が凄い塾って認識はされていて、鉄緑会に通っているというだけで、「あいつは頭がいい奴だ!」と思われたりしました。それで勘違いしてしまった、というわけです。

頭がいい奴しか残らないという事実

 僕に才能があるとしたら、「継続」することだと思います。中学2年、3年、そして高校になるにつれて、どんどん自分が鉄緑会の授業についていけてないという実感は深まっていきました。それでもやめずに続けたのは、ここで鉄緑会をやめたら、「自分は鉄緑会についていけない落ちこぼれである」、と認めたことになるからです。鉄緑会に通っている限りは、自分は東大ルートに乗っているのだ、と半ば暗示のように、思いこむことができました

 ただ、宿題も授業も全然分からない、復習テストは解けない、そして鬼のように居残りさせられる、という中で、継続できる人は稀です。周りでも1人、また1人と、脱落者が出ていきました。そうした中で、当然残るのは、授業についていけている優秀な生徒。後は、途中で入塾した生徒も、厳しいテストを合格しただけあり、かなり優秀であることがほとんどでした。
 こうして、どんどん塾内の優秀な生徒の純度は高まります。どんなに落ちこぼれても、お金は払っていますし、「塾をやめてください」とは流石に言われません。でも、できない人に対して、温かい万全のフォローがあるかというと、ないです。尤も、居残りには先生もとことん付き合ってくれるので、やる気次第で復活は全然可能だと思いますが。

 ちなみに、圧倒的な速度の授業カリキュラムも、膨大な量の宿題も、ついていけた人は続けているうちに慣れます。気が付けば、普通の生徒より圧倒的に勉強する習慣がついているのです。そして、周りの鉄緑生に刺激され、学年が上がるにつれて東大へのモチベーションが上がる。好循環により、難なく東大合格に必要な学力を身に着けていくわけです。
 僕が一緒に鉄緑へ通っていた同じ中学の友達がそれでした。彼は学内では決して1番ではなく、TOP30くらいの位置でしたが、しっかりと鉄緑会のカリキュラムについていった結果、現役東大文一に合格したのです。

 一方、僕は鉄緑会に在籍していただけ。鉄緑会の中どころか、学校でも落ちこぼれとなり、結局東大は足切り、早慶も全滅して現役を終えます。僕は周りの天才純度が高まる中で何故か残り続けた不純物だっただけで、自分自身の学力は何一つ伸びていなかったのだと、このとき実感しました。

 ただ、僕の人生の中で見ると、鉄緑会に通っていたことを後悔はしていません。受験という視点で見ると失敗でしたが。あの天才集団の中で6年間過ごしたという事実。そして、いくら環境がよかろうと、自分自身で何もかも腐らせることができるのだということ。今思えば、大きな学びがあります。

 とはいえ、今現在、鉄緑会に通っている、あるいは通いたい中学生や高校生にとっては、受験で成功できるか否かだけが大切かと思います。でもそれは、鉄緑会に通う、通っていないなどという環境に左右されるものではない、とはっきり断定できます。「自分は鉄緑に通っているから東大にいける!」、というのは思い上がり甚だしいし、「自分も鉄緑に通うことができればもっと学力が上がるのに!」、というのも自身との向き合いが足りません。

 鉄緑会はいい塾か否か、という問いに対し、全ての答えはポジショントークです。鉄緑会に限らず全てに言えることですが、どんな道具も環境も、生かすも殺すも貴方次第なのです。

 最後に。学歴はそれだけで全てを為せるわけじゃ全くありませんが、あると便利なことに違いありません。その詳細はまた別の記事で書きますが、苦労に見合うものは得られます。大学進学を目指している学生の皆さん、頑張ってください!


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