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むっくんだいすきクラブ シーズン3第二話:暗雲、すれ違う想い(vs.ギラヴァンツ北九州)



なんかラブコメみたいなタイトルになったけどサッカーの話です。別に甘酸っぱくはない。(むしろ苦い)(苦々しい)


前回までのあらすじ


コロナウイルスによる制作延期が続き、待ちに待った3年目の復活のむっくん。それはいきなりの超美麗アシストから始まった。神展開…これは今季の覇権はもらった…とガッツポをキメたのもつかの間、磐田のハイカロリー作画ポゼッションに窮地に立たされてしまう。田中の尊い犠牲により辛くも勝ち点1を分け合ったものの、やはり今季の春アニメ覇権も修羅よの…との認識を製作班は新たにしたのであった。



試合概要


ファジアーノ岡山 0-2 ギラヴァンツ北九州


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ゴール
 61分:高橋大悟(0-1)
    63分:佐藤亮(0-2)

交代
 岡山:62分 清水→斎藤
    77分 上門→関戸、白井→山本
    83分 イヨンジェ→赤嶺、むっくん→松木

 北九州:60分 池元→佐藤
     79分 永田→野口、加藤→永野
     81分 岡村→川上、鈴木→ディサロ








試合内容について


「有観客試合」のオープニングを飾る


まず試合内容の前にお話ししておきたいこと。今節からJリーグでは観客動員を再開。そのトップバッターがこの試合ということになりました。声を出しての応援はできず、入場も5000人までということでかなり制限をうけてはいるのですが、やはり直にプレーを見て、生のリアクションが届く。失ってわかる狂おしく愛おしい場であることよな。声出せないけど惜しいシュートにどうしても声出ちゃうのわかりすぎる。出るよね。

再開に尽力されたすべての方にお疲れさまでしたと言いたいですし、改めていつものスタジアムに戻るように祈念しておりますというお気持ちをこの場を借りて示しておきたいと思います。はよ岡山行きたいです。感染者数240人とかもうマヂ無理なんですけどね…。有観客試合とかいうディストピアワードには早く滅びてほしいんじゃ…。



今宵も君とロングボール戦法


さて試合の話。今節も立ち上がりからヨンジェめがけてロングボール戦法をぶつけるということになりました。そこをめがけて選手が集結して、セカンドボールを狙うぜの形。磐田戦でも機能しましたね。

むっくん×上門のコンビ(識者各位には諸説ある表記と思われますが本マガジンの趣旨をくみ取ってほしい)による攻撃がこの試合でも有望で、いくつかチャンスが生まれていました。また、左サイドの白井×徳元(こっちはたぶんこうだと思う)からもチャンスが作れていたのは、前節に比べてポジティブな部分と言えそうです。

ロングボールを当ててからの早い展開は昔取った杵柄ということなのか、非常によどみなく動けていてよかったと思います。相手のロングボールに対してもうまく拾えていたのも磐田戦と同じく美徳でしたね。ただ残念ながら、それ以外の部分で差が生まれてしまったがために、この試合は劣勢ということになりました。



すれ違う想い


一発ぶつけてそこから攻守で流れに乗るという岡山のアプローチはある程度成功していたといえると思います。ボールを奪いに行けていましたし、実際に奪えていました。ただ、そこからの展開で北九州の機敏さを超えることが出来なかった。敵陣へ運ぶパスが相手の待ち構えているところになっていたり、受け手が準備できていなかったり、出し手が受け手を見ていなかったり。

予測という面で大きく後塵を拝してしまい、岡山がボールを持てば、北九州のカウンターが輝く、という割合が徐々に増えていくことになります。それに従って北九州が押し込むようになっていきます。磐田戦でよく見た光景アゲイン。

磐田同様にボールホルダーが前を向けばFWが裏に出たり降りてきたりで岡山のブロックを動かして、それによって空いたスペースにSHが入り込む。しっかりとスライドされていれば、追いかけられないところにボランチを下げてやり直し、サイドチェンジを入れていく。一度チャンスゾーンにボールが入ったら相手の守備よりも早く動き続ける。その時間を作るのは左の椿のドリブルと右の高橋のテクニック(清水に帰ってきてクレメンス…)。岡山のちぐはぐな駒組に比べて非常に整然とした組み立てとなっていました。

岡山もポープ・パウリーニョ・上田と相手の寄せをかいくぐる力を持った選手はそろっています。ただ問題なのは、かいくぐった後にスピードを上げるべき場面で動き出すべき選手がボールホルダーを見てしまい、相手の守備が集まってしまったり、動き出してはいても一人だけかもしくはタイミングがあっていないかで相手の守備をはがせていないこと。このあたりの自動化(オートマチズム)の差は、磐田戦でも北九州戦でも非常に大きく感じました。

いや~、まあ、むっくんと上門で3回くらい決定機出来てたからいっこでも決まってればね。そういうアヤもあったと思います。でもバシバシ励ますむっくんが見れたのは良かったよ。



前輪駆動の修正


辛くもスコアレスという前半。後半は巻き返すぞという強い想いが表れていました。立ち上がりから前から前から捕まえるという意思統一がFWからCH、CBまではっきりして、敵陣で押し込むチャンスがいくつか生まれます。46分の上田のチェイスで蹴らせてポープさんがゲット、フィードがラインを降りるsmsnにジャストに合って、上田へおとし、上門がサポート、むっくんが裏抜け、という攻撃は岡山の良さが存分に出たシーン。

むっくんには通らなかったものの、上田が拾いバックパス、濱田のフィードから再び上田に落としてクロス、こぼれだまをパウリーニョ→むっくんクロスという二次攻撃が生まれました。こういう、手番を握り続けながら、相手の守備をはがしていくような展開を続けることができれば、試合を優勢にもっていくことができます。修正自体は出来てたと思います。

イヨンジェのチェイスからスローインを得てsmsnとスイッチした48分の決定機も、理想としていた展開でしょう。前から奪いに行くぞというチームの共通認識は後藤圭太さんまで敵陣にプレッシャーをかける(たぶん降りてくるFWについていったと思われる)シーンも見られました。

とはいえ、二次攻撃を行うぞとブロックの外でボールを持った時に、中・外の動きが乏しくクロスを入れるくらいしか攻撃の選択肢がありませんでした。これで北九州の方も攻撃に対応しやすく、時間とともに手番を握られることになってしまいます。



想いとは裏腹に…


きっかけとなったのは、イヨンジェ→パウリーニョのチェイスがはがされて連動しなかったことで生まれたチャンス。SH高橋ダイゴサンが完璧なスピードでドリブルで運び、それに呼応してサイドでSB福森、裏へFW鈴木が斜めへ動き出し、空いたファーのスペースにSB福森がドンピシャのクロス。これは辛くも弾きますが、やはり北九州はチャンスがあれば4人はスペースを狙うという攻撃を継続してきます。4枚の攻めは切れない。岡山は2枚いればいい方という攻めになっちゃってるんですよね。そこが大きな差になってしまいました。

ここから守備ブロックが物理的に下がってしまって、岡山の「前から捕らえよう」という狙いが機能しなくなっていきます。しかし、それでも折れない岡山。狙いはセカンドボール。ヨンジェロングボールを上田が奪い取ったところから速攻をかけてsmsnのシュートは惜しくも北九州の好守にはばまれます。

速攻ではしっかりゴールのイメージが描けているんですよね、岡山。だからこそ惜しいというか。ビルドアップできるチームを目指してると思うんですが、実態はヨンジェに放り込む以外に全然攻撃できてないじゃん?というのが分かってきました。

北九州のゴールシーンはスローインのこぼれ球をキープしたところから。左へのサイドチェンジで流れたFW佐藤(でいいですよね?背番号が2に見えてずっと誰や…と悩んだんですが…)に対応したまでは良かったのですが、ここからのバックパスをきっかけに北九州が加速。


SH高橋はニアへカットイン、FW鈴木は下がり、もう一人ファーへ(誰かわからんけどSH椿君でしょうか)。このスピードに全くついていけなかった岡山は、ゴール前で鈴木を完璧にフリーにしてしまいます。直接は決まらなかったもののこぼれ球に詰めていたダイゴサンが押し込み先行。清水エスパルスさんが危篤だからこんなところで大活躍してないで村松さんとかとすぐ帰ってきて…





この北九州のゴールはほんとにすごくて、今見直しながら敵ながら感激しているんですが、ゴールにつながったきっかけがバックパスなんですよね。バックパスを見て4人が加速してるんです。これは相当すごいことやよ。

バックパスはふつう攻撃のスピードを落とす、展開を休ませるという意味で使ってて、岡山もそうなっているんですが、ポゼッション攻撃が効果的に機能するためには、バックパスで相手を休ませないことにあると思われるんです。実際、磐田も北九州も、バックパスは次のサイドチェンジとワンセットになっていて、岡山の選手は全然休めませんでした。それでスライドがどんどん遅れてしまうわけですね。

これに対して岡山はバックパスで上田やパウリーニョがフリーで持てたシーンはそもそも何個あったでしょうか。そして、そういったシーンで何人の選手が動き出せたでしょうか。それが、パスミスでカウンターをくらうか、ゴールになるかの差になっているんだと思います。

これは完全に北九州が一枚も二枚も上手。飛車とか角くらいは差があるなと痛感させられるゴールでした。



そしてBADENDルートへ


このゴールを取り返そうとする岡山でしたが、残念ながらそれは連動を伴いませんでした。2失点目に関して、パウリーニョや後藤圭太さんが地獄の果てまで奪いに行くことは後半立ち上がりからチームの約束になってたと思われますしビハインドなので悪くないと思います。FWも一緒に奪いに行こうという意識もあったので、前節ほどは悪くなかったです。

問題はそれを継続できないこと、継続を可能にするくらいじっくりと相手を押し込むようなバックパス・サイドチェンジを伴うチェンジ・オブ・ペース攻撃が用意できなかったこと、それでも奪い行くのなら相当に無理をしなきゃいけないのですが、ボランチの二人が無理をしているのに比べて、濱田・徳元が追随できなかったこと。この点にあるのでしょう。

前節でいうとむっくんができてなかったのが田中の退場になっちゃったですね。なので誰が悪いというものでもないのでしょうね。というわけで、岡山としては3分ほどで一気に敗勢となってしまいました。サイカズ氏、関戸さんをつっこんでパワーで押しに行きますが、やはり敵陣での構想不足で決定的なチャンスまでは至らず。松木きゅん、シーサー氏とドカドカ突っ込んで敵陣に嫌味をつけにいくため、むっくんはお役御免。BADENDということになりました。


うーん。残念。



未来へ


磐田戦と同様に力の差が顕著に見えてしまった試合になったでしょうか。同じ土俵でがっぷり組み合ったことではっきりした部分もあるかと思います。


さて、今季のむっくんを第二話まで視聴したところから考察してみますと、、


1.次の展開の構想が描けていない、もしくは選手間で齟齬があり、相手に手番を渡してしまう。特にカウンターや、中(パウリーニョ・上田)→外(むっくん・徳元)→中(上門・白井または上田)と敵陣まで運べた時に顕著。

2.ロングボール以外のトランジション局面における動き出しが相対的に遅い、もしくは選手間でリアクションがバラバラ(周囲が準備できてないままプレーしちゃう)ため、相手が加速した状態でボールを奪わせてしまい苦しくなる。

3.結果、繋ごうとしてるわりにはイヨンジェに放り込む以外になんかした?というチームになってしまっており、放り込んで速攻しそれ以外は我慢するという従来のモデルのほうがまだ一貫できてる分良かったみたいな内容になってしまっている。


こんな感じでしょうか。


岡山も磐田戦の先制点のように連動すること自体はできるのですが、速攻に限られています。二の矢がありません。相手のブロックの外でボールを持った時に手が見えていなかったり、ペース配分が出来てないという点では磐田や北九州のほうが上と言えたでしょう。

特に浮き彫りになったのは「切り替え」の部分での動き出し。奪い取ったボールをつなぎたいという岡山のお気持ちが相手の研究範囲で、カウンターのチャンスと見られてたように思います。すごいテンションで追いかけてきてましたね。守備が崩されているので相手の切り替えにも人数をかけられてしまい、ハマってしまう形。逆に岡山もやりかえそうとしますが、崩しきれていないので奪いに行く選手の人数もポジションも悪く、奪いきれず相手のチャンスになってしまう、という悪循環があったかなと思います。岡山が良くない時はたぶんそういうときなんでしょうね、これからも。

こうしてみていくと、サッカーには”4つの局面”がございますという堪忍袋とか胃袋みたいな話が非常に勉強になる試合でした。ボールをつなぐ・失ったら取りに行く・奪えたら攻め込む・相手に持たせる、この4つをバランスよくやっていかないと、今回みたいな試合になっちゃうわけですね。いまのところ3つめしか出来てないという感じですね。

まあ、「現時点で」「磐田や北九州に比べて」力の差がこうである、ということが表れているだけですので、この先もそうであるとは限りません。いろんなチームと当たりながら高めていくしかないですね。否が応にも連戦ですし。ロングボール戦法では負けてなかったですし、時間帯によってはうまくやれています。それを一局を通してつなげていければ。

敵陣で持ったら全部ゴールに一直線なんだ…!という力みが相手にとっても受けを読みやすくよろしくないようを感じますので、押し込んでもたまにバックパスして自陣を整えてから行こうかとか考えるとか、力配分ひとつで変わるかもしれません。切り替えで動けてないのもそのせいかもなあ。磐田や北九州はそういうの出来てましたからね。緩急ってやつ。わかってても難しいんだよな…(よぎる自分の将棋の悪手)

むっくんはこの夜何度もパスが合わなかった上門を励ましました。何度も苦しいDFラインを励ましました。これからは制限された形ですが観客も彼らを励ますことができます。それがちょっとでも形勢を動かせるといいですし、チームも変わってくれるといいですね。


締めは甘酸っぱくしてみた。


それでは。