見出し画像

予測の効果

noteをしばらく続けているとありがたいことに、ごくまれに人気の出た記事が生まれることがある。いい評価をされたことはもちろん嬉しいのだけど、なんでその記事がよく読まれて高評価をもらえたのかが疑問に思う。

自分としてはどの記事も同じぐらいの出来だと思っているので、記事によって大きく差が生まれることに不思議を感じる。

自分で自分の記事を客観的に評価できていないからというのもあるかもしれないが、他にも何か要因がありそうな気がする。

趣味が読書である私は、行動経済学者で有名なダン・アリエリーの本を読んでいるときに、その要因を解明できるかもしれない内容に触れることができた。




ワシントン・ポスト紙のある実験

ワシントン・ポスト紙の人たちは、傑出した芸術は、「平凡でみすぼらしいという予想のフィルター越しでもはたして光輝くのか?」ということを調べる実験を行った。

実験内容は、世界でも指折りのバイオリン奏者であるジョシュア・ベルに朝のラッシュ時に、ワシントンD.C.のメトロの駅でストリートミュージシャンのふりをして、名曲を何曲か演奏すると人々はどんな反応をするかを調べるというもの。

人々がこの演奏がプロのバイオリニストの演奏であることに気づくかどうかを、調べたわけだ。


結果はなんと98%の人が、プロのバイオリニストの演奏だと気づかずに急ぎ足で通り過ぎた。

立ち止まって1分以上耳を傾けたのはわずか0.5%だった。

また、このとき通りがかった何人かの人にインタビューをした。演奏に足を止めた人のうちのひとりは、少し前にベルの演奏を聴きにいったので本人だと気づいた。またひとりはその人自身が、本格的なバイオリンの奏者だった。べつのひとりはメトロの職員で、何年もストリートミュージシャンを聴いているので気づいたそうだ。

こうしたわずかな人たちを除くと、ベルの演奏に立ち止まって耳を傾ける人はいなかった。通り過ぎて行った人たちにもインタビューをすると、まったく気づかなかったか、平均的なストリートミュージシャンよりも少しましだったと回答した。まさか世界一流の音楽家の演奏がメトロのストリートで行われているとは、だれも思わなかったわけだ。

つまり人は音楽を聴くときにどう感じるかは、思い込みの影響を受けるということだ。

ダン・アリエリー教授はこの実験のあとにベルに会って、大勢の人に気づいてもらえず無視されたことをどう感じたのかを聞いた。落ち込んでいるかと思えばそんなことはなく、ベルはそれほど驚かなかったと答えた。音楽を経験するのに期待が重要な役割を果たすということを認めたのだ。一流のバイオリニストではないのに、すばらしいコンサートホールの環境にいるおかげで熱狂的な喝采を受けている人を彼は知っているからだ。




予測の影響

芸術だけでなく料理についても、予測の効果を調べた研究が行われていて前もっておいしそうだと信じたときはおいしく感じ、まずそうだと思ったときはやはりまずいと感じるそうだ。

たしかに値段が高くて高級な雰囲気の店だと、まずいわけがないという予測の影響を受ける気がする。多くの人がおすすめしている店の料理は自分の味の好みに関係なくおいしいと感じるのも、予測の効果かもしれない。

この本では予測が芸術に影響を与えるものとして、モナリザが例に取り上げられている。なぜこの肖像画がこれほど美しく、この女性の微笑みが謎めいているのだろう。ほとんどの人にとって、この絵が美しく、微笑みが謎めいているのは、そう教えられたからだとダン・アリエリー教授は述べている。なんの予備知識もなしに初めてこの絵を見たときに、僕はこの絵の芸術的な価値を正しく見抜ける自信はない。

簡潔ではあるがまとめると、予測は私たちがものごとをどう経験するかという部分でとても大きな役割を果たしているということだ。


この観点からみると、僕の人気の出た記事は予測の効果を受けたからかもしれない。たまたま運良くスキの数が多くなると、新しく読んだ人はスキの数が多いからよい記事なのかもしれないという予測の影響を受ける。その読者もスキをつけてくれて、スキの数が増えてまた新しく読む人がよい記事だろうという予測の影響を受ける。それが雪だるまのように転がっていくことで人気の記事になったかもしれない。

もちろん記事の内容が大切だというのは言うまでもないけど、予測の効果も少なからず影響していると、この本を読んで思った。

運の要素もかなり大事だという話は聞くけど、この予測の効果もその一つだと思う。

いい運の波が来たときにうまく乗れるように、結果に一喜一憂せず生産性を保って書き続けていくのが大事だと思う。書き続けていればしだいに認知されるようになり、評判が高まってくれば予測のいい影響を受けるようになるから。


でもまずは記事の質をしっかり上げていこうと思う。




参考文献


この記事が参加している募集

スキしてみて

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?