幻の鹿鳴館(奇行小説仮案)      第2話 侵略子狐銀子

 土曜の朝の7時過ぎテーブルに座って膝の上に銀狐を載せてシリアルに牛乳を掛けて食べさせていると(そうしないと食ってくれない)ピンポーン。

 もう来やがったのか。
 銀狐を膝から降ろし椅子に載せて玄関へ、直ぐに後ろから追いかけてきた。

 が玄関を開けて昨日の狐女が入って来るとたーッと部屋へ戻って行った。

 開口一番昨日の怪しいレストランの事を追求する。

「昨日は一体何を食わせたんだ、ドブネズミか」
「さあ食材までは知らないわ普通に牛肉とか海老じゃなかった?」
「あんな場所にまともな食材が有る訳ないだろ」
「残念ながら鹿鳴館は存在するのよ但しあなたの見た場所じゃないわ、分かり易い言葉で言えば異次元よ、便利な言葉ね実在しなければ何でも異次元で片付ける、まあ説明しても理解できないでしょうから異次元で良いんじゃない」
「存在はするがこの場所には実在しない、か?」
「そんなところよで、お銀様お迎えに上がりましたこんな所に居ては何をされるか分かりません宮殿にお戻りください」

 すぐに銀狐の方に呼び掛けた。

「酷い言い様だな、お銀様ってなんだ地球侵略宇宙人か」

 狐女俺を無視して横をスイッと通り過ぎて居間の方に駆けていく、さすが狐素早い身のこなし。

 しかたなく後を追いリビングに向かうと銀狐は椅子の座面からテーブルに手を掛けシリアルをムシャムシャ食っていた。

「何をお食べになっているんですか」
 切羽詰まった口調で狐女が言う。

「シリアルと言う人の食べ物です、美味しいですよ」
 今まで一言もしゃべらなかった銀狐が普通に声帯を使って話す、脳内ではなく。

「なんだ話せるなら初めから話してくれよ」
「女王様に失礼な言葉使いをしてはなりませぬ」
「いいのよ私が勝手に押しかけたのですから、それにここではただの狐にすぎません」
「分かりました、では早々に宮殿にお戻りください宮殿では大騒ぎになっております」

「ではそなたが私の身代わりになればよい&%#*$」

 女性姿の女狐は銀狐と同じ姿に変わった、そして銀狐はポンッと人の子ども姿に変わった。

 その子は銀狐を両手に掴むと狐を自分の方に向けて顔の高さに持ち上げた、
「さあ宮殿にお戻りさない、そしてあなたは銀子として生きていくのよ」

 そう言うと手に持った狐はスーッと姿が薄くなって消えていった。

「えっと、、、喋れたのかよ女王様ってなんだ?」
「さあ何かしら、こっちの世界に来るとすべて忘れてしまうの、そして私はもう帰る場所が無くなりました、今の者が銀子として元の場所で暮らしていきます、今更戻っても偽銀子として直ぐに処刑されてしまいます」
「まいったな」
「ご安心ください私はあなたの妹です、そうですねこの格好じゃご迷惑を掛けてしまいますね」

 またまたポンッと姿を変えた、セーラー服の今時の女子高生姿。
 頭を抱える俺。

「どうなさいました、妹じゃなくて嫁の方がよろしかったでしょうか」

 こやつとんでもない策士だ、一年前行方不明になったまま未だに見つからない妹そのままの姿になっていた。

「その姿は止めてくれ、それとキツネ女以外ならなんでも良いから」
「すっかり女狐嫌われてますね、やっぱり狐姿に戻りましょうか?」
「ああそうしてくれ一番落ち着く」

 ポンッと音がして元の銀狐の姿になった。
「やれやれそれが一番落ち着く女子高生は頼むから止めてくれ」
「失礼しました、妹さんの姿を見れば喜んでくれると思ってしまいました」
「ありがとよ、でも本物じゃなきゃ意味は無いって何で知ってる?」

 それには答えず、
「狐ネットワークでお探ししましょうか山の中なら警察よりお役に立てると思います」
「そりゃそうだな、生きていれば・・・」
「それは何とも言えません、それと匂いの付いたものがあればかなり早く探せます」
「そうなのかここには何もない実家に戻らないとな」
「博殿と違う匂いの物が有りますよいくつか」
「遥の物?有ったかな」

 妹がここへ来たのは一度切り何か残っているか。
「1年以上も前だが役に立つのか?」
「保管状況によります日の当たる風通しの良い場所は難しいのです」
「そうか押入れとか引き出しの中、、、あっあれが有った」

 居間の横が台所でそこの棚に差し入れだか土産だか何かおいて行った。
 10センチ角程の箱に入って包装されたままの物、下の扉を開いてとりだそうと手をのばしたら、
「触ってはいけません、匂いが交ってしまいます」
 なるほど真剣に探してくれる様だ。

 タオルを重ねて掴み銀狐の前に差し出す。
「これは何人かの匂いが交っていますので難しいです、出来れば本人だけが触ったものが有れば良いのですが」
「んーそりゃそうだが、、、ってそれならお前が選んでくれよ、匂いの混ざってない物を選んでそれが遥の物か違うか俺が判断するから」
「えーそれは物が多すぎます、これは違うと言うものを除外してください」
「それはそうだな、じゃああいつの物は、、、遥が使ったコップはどうだ?」
「洗ってなければ大丈夫です」
「洗うだろ普通」

 部屋をウロウロして遥が使ったようなものを選んでみるがそう大して使ったものが無い。
「んームズイなあいつが使った物なんてそうは無いぞ」
「手鏡とかは?」
「自分の物で残ってない」
「身に着けてたものが残っていれば、、、有りませんよね」
「まあ無いだろうな、タオルは洗ったし1年も前だからなあ」
 
 洗面所に入ってみるがあいつが使ったままの物が残っている筈もない。
「ここはムリだ」
「どこで泊まって行ってのですか、どこで寝たのですか」
「押入れだが、、、」
「中を見てみましょう」
「でもなあ1年もそのままなんて無いだろ」
「押入れなんて普段使っていますか?可能性は残っています」
「そうか?」
「はい」

 ウロウロしている間子狐姿で抱っこしていた、中々可愛いものだ、ふすまを開けるために下に降ろすがちょっと名残惜しい。(やられてるな)

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