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【205】超短編小説「悪魔からの着信」(1220文字)

「ねぇー、あなた アレ知らない?」
「昨晩も遅かったから、また酔っぱらって どこかに忘れてきたんじゃないのか?」
「アレはほとんど外に持ち出さないし、忘れてもあんな大きなもの絶対誰か気づくはずだし…途中から全然記憶がないのよね… あぁー頭痛い二日酔いだわ。」

横浜市内某公立高校の学園祭
コロナの影響で2年間中止となっていた学園祭が3年ぶりに開催されることになった。
部活主体でそれぞれ出し物を考えて展示やらイベントが行われていた。

陸上部は陸上部員との100m競争で、挑戦する生徒は陸上部員より10m前からスタートすることができた。

茶道部は100g1万円の高級抹茶と100g千円の抹茶を飲み比べてどちらが1万円の抹茶か当てるというテレビで見たことがあるようなやつだった。

将棋部は自信のある生徒が臨時顧問の杉本先生と2枚落ちで対局をするというものだった。

落語研究会は部員がそれぞれ落語を披露した。
レストランにて
客「君、この肉 硬くて切れないよ!」
ウエイター「はぁ、お客様は並をご注文されましたので…」
客「じゃあ、上を頼んだら柔らかい肉になるのか?」
ウエイター「いえ、肉は同じですけど よく切れるナイフが付いてきます。」
爆笑

競技かるた部は顧問の国語の先生が水の入った洗面器を頭に乗せてこぼさないように10m競争をするという提案をしたが、満場一致で不採用になり、部員と戦って1枚でも札が取れたら参加者の勝ちというルールで競技かるたを行うこととした。

英会話部は週一で部活の指導に来ているアメリカ人女性と、部員に同じ英語の文章を読んでもらい、どちらがアメリカ人女性だったか当てるというものだった。声質でバレないように、何とかライザーという機器を使いそれで補正してヘッドフォンから聞こえる英語を聴き分けるというものだった。理由はわからないがヘッドフォンにバナナのシールが貼ってあった。

「いつも大事そうにしていたけどそんなに大切なものなのか?」
「ビートルズが日本に来た時に父がメンバーからもらったものなの。」
「……」
「多分違うと思うけど、念のためあの子にも聞いてみるわ。」

軽音楽部は予め先生や生徒からリクエストをしてもらって、それを演奏するというものだった。
「では、ここで5分間休憩を取らせていただいて、休憩後は教頭先生からのリクエストで浜田省吾のナンバーで『片想い』からです。」

休憩と同時にステージ脇に置いてあった1台のスマホのバイブが震えた。
「ズズズズズ…ズズズズズ…」
「おい 高嶋、お前のスマホ『悪魔』から着信が来てるぞ」
部長の高嶋は せめてこの落書きが裏側に書いてあったらメルカリで売れるのにと思いながら 無造作に手に持っていたギターを置いた。ゴツンと音がした。
落書きはよくよく見てみると「John Lennon」と黒いマジックで書かれていた。


※    この作品はフィクションです。登場する人物団体は架空のもので、実在するものとは一切関係ありません。

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