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日本のジョブ型雇用って?本場アメリカから考察してみる

こんにちは、LIG13です。

 今後、日本の企業でも従来の新卒採用から、欧米で一般的なスキル・職種を重視したジョブ型採用にシフトして行くそうですね。僕も新卒採用で社会人になった人なので、4月の合同入社式(たしか就職前の決起集会とかもあった)、地方の研修所での3ヶ月研修、そして2年におよぶOJT。まさに社会人育成のフルコース。あれはあれで僕も役に立った部分もあるので、プログラムの否定はしないです。ビジネスパーソンの人生を左右すると行っても過言ではない配属先も研修期間中に会社側が「適性を見て」決めて行く。という感じでした。

 「適性を見て判断」

 いま思うと、会社が「適性を見て判断」って。される側としては社畜扱いっぽくないか?と思ったりしますけど。それだけ会社が多大な教育コストと手間隙をかけてくださるわけなので、まぁ世の中の評価は割れるかもしれません。

 そんな昭和っぽいトップダウンな慣習から、欧米型のインビテーション形式のジョブ型雇用に移行すると、給与体系も大きく変わるそうです。新卒の初任給は同じでスタートしている状況からスキル別になるので、スキルがある学生からすれば、魅力的な給与をオファーしてくれる会社に入れるわけなので、歓迎すべき部分もあると思います。新卒の雇用枠もなくなるので、中途採用の方々もチャンスが増えますよね。

「ジョブ型雇用の本場」アメリカで見たもの

 僕はそんな代表的な日本の企業(都内の日系と外資系IT)を辞めて、ジョブ型雇用の本場、アメリカで働いて今年で13年目になります。ニューヨークとロサンゼルスで働きました。アメリカでは日本のような新卒採用シーズンとか無いです(日系企業では多少あるけど)ほとんどが通年採用です。「こいつとはXX年入社で同期だよ」とか死んでも無いです。社長や役員ですら外部から飛び入りでアポイントされたりするし、みな最初から最後までアローンです。ある意味、つねに妙な緊張感はあります。

 つまり新人教育もなければ、マナー研修もない。入った日からいきなり職場に組み込まれます。それはアナタのスキルを買って雇用主がオファーを出し、その職場にアナタが「参加するだけ」だからです。念願の会社のXXXに就職したぞ!みたいな日本的な盛り上がりとか薄いです。僕はこの仕事に「参加」している、会社名?ああ、えっとね、XXというところだよ。という感じで、雇用も、正社員(Exempt/non-Exempt)・フリーランス・コントラクター・パートタイムなど、そのときの事業でバラバラですけど、肝心なのはその事業がそのメンバーで成功するのか?なので、お互いの雇用形態とかそこまで気にする部分じゃないです。働く側に取って条件がよければ、何でも良いよ。という感じです。正社員だから偉いとか、日本みたいな考えは無いです。アナタは仕事が、「できるか?できないか?」の単純な世界です。

 「わからない=能力を疑われる」

 もし上司に仕事がわからないからと相談をしても、You wanted this right ? Let's get it done and go home early. (この仕事をやりたくて来たんでしょ?さっさと終わらせて早く帰ろうぜー)で終わりです。わからない=能力を疑われる。です。アメリカのジョブ型雇用ってそれくらい露骨です。もちろん職場のトレーニングはありますけど、基本的なスキルがすでにあることが前提です。逆にいうと、目の前のミッションを実力でこなせばいいわけです。できなければ、「この職場、いろいろ上手く行かなかったなぁ・・辞めよう」ということでさっと辞めて次に職を探します。仕事以外で人間関係のソリが合わないとか、もちろんあります。

 アメリカでは、お互いの仕事の話をするときに、勤務先の会社名はあまり出さないです。「何をしているか?」ということを最初に口にします。たとえば、事務職なら I'm a book keeperとか、アプリ開発者なら、application developerとか、自分のジョブを言います。

「終身雇用を暗黙で約束する」日本企業

 日本みたいに、「私はXXX社で30年働いていて、僕の仕事は何でも屋ですよ、ハッハッハ!」とでも発言したら、いくら会話好きなアメリカ人でもマジで本気か冗談なのか意味がわからなくて、微笑されるでしょう。でも、それが日本企業で働くということと、独特の愛社精神を形成している理由かもしれません。「終身雇用を暗黙で約束する」日本の企業って、アメリカのようにジョブを明確化したら組織がギクシャクするので、あえてボヤかしているのだと思います。

JD = Job Description制度が意味すること

 大抵のアメリカの会社では、雇用主からのジョブオファーを締結する際、JD(Job Description)をかならず締結(以下略 JD)します。JDとは、アナタにどんな仕事をお願いして、どのような処遇を約束するか?という「個別の労働契約書」みたいなものです。なので、JDに書いてないことは、仕事としてやらなくてOKです。もし頼まれても、「これは私のJDには無いです、できません」ってキッパリと断れます。雇用主も、断ったことを理由にクビにはできないので、かなり公平な仕組みではあります。いちおう、会社の事業も変わるので、定期的にJDを雇用主とレビューします。つまり必要に応じてアップデートすることもできます。

JDの定期レビューは、状況のヤバさを測るリトマス紙

 日本のジョブ型雇用でも、このJDの枠組みを採用するらしいですけど、どこまで浸透するのか気になるところです。この制度ってアナタの日々の業務をロジカルに文書化するわけなので、会社の片隅でイミフな立場にいる従業員の方に取っては、仕事内容をロジカルにブレークダウンするため、まさにデスな制度になってしまうかもしれません。なぜなら、そこに書かれたコトをきちんとやっているのか?ということを定期的に確認する。という意味もJDには含まれているからです。ジョブ型のもう1つの特徴は、雇用をサスペンドしやすくなる。ということもあります。「JDに記載された業務は来期から無くなります」そのため・・。という風に、明確に記載することで、逆に雇用を終了する理由も言いやすくなり、双方で定期的に「自分は、いまやばい? or やばくない?」という空気を確認することができます。。 アメリカでは、そのヤバさがじわじわ双方で出始めると、大抵の人は空気を読んで転職してゆきます。事前に伝えてくれるので、それなりに準備もできますし・・。

ジョブ型雇用は労働者の市場への流動化を促す

 日本でも、聖域だった終身雇用から、ジョブ型による雇用の流動化が加速するのではないかと思います。一時期に言われた、就職先ランキングは安定思考がブームってありましたけど、いまとなっては安定でもなんでもなくて、2、30代はバリバリでも、40代でスキルのアプデもされないまま毎日をデスクで過ごし、50代の一番大事なときに老害扱いで左遷・リストラとか起こる時代です。そもそも会社が30年でオワコンになる時代です。それなら、毎年JDをレビューして、客観的に自分がヤバそうだとなれば、早い段階で転職なりキャリアチェンジした方が70歳近くまで働くとしたら、終身雇用を約束された職場で若者からポンコツ扱いにされるよかヘルシーだと思います。特に2、30代でバリバリだった人は新環境への耐性があると思うので、僕はたとえ40代以降でキャリアチェンジしてもきっと成功する可能性は高いと思います。すくなくとも、アメリカは私の両親くらいの方(6-70代)でもまだ平気でイキイキと働いていますからね。日本も会社の帰属意識から開放されて、アナタの仕事(Skill/Profession)で評価されて、会社のブランドネームとか、世界的に見れば権限もろくに無い日本企業の肩書きとか意味ないよって認識するようになって、みな悠々自適に働けるような社会になればいいかなと思います。


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