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兵庫県淡路市に移住した福山慎一さんのLOCAL MATCH STORY 〜家族が心身ともに無理なく暮らせる新天地〜

移住を経験し、地域で活躍されている人を紹介する「LOCAL MATCH STORY」。
今回は、兵庫県淡路市に移住された現役地域おこし協力隊の福山 慎一さんをインタビューしました。

風鈴の音がチリンと軽やかに鳴り響く中、タオルを首に巻いて爽やかな笑顔をたたえた今回のインタビュイー 福山慎一さんが登場。淡路島の空気感とともに、お話を伺いました。

プロフィール

福山慎一(ふくやま しんいち)

大阪府出身。兵庫県の大学を卒業後小学校教諭として勤めるが、関西圏で数々の他業種に転職。高知県へ移住し、私立学校設立のスタッフとして勤務したのち、2019年兵庫県淡路市へ地域おこし協力隊として着任。奥様と3人のお子さんの5人暮らし。

子どもの教育とは――見つめ直した末に歩んだ破天荒な道のり

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写真:福山さんが好きな、淡路の風景。この美しい夕焼けを眺めるまでの道のりは平たんではありませんでした。

福山さんは、1987年生まれ、大阪府出身。子どもの教育に強い関心をもっていたことから、ストレートで教員採用試験に合格。神戸で念願の小学校の教諭になりました。

子どもたちと関わり合う楽しい日々。
ですが、世間一般の環境と自分がいる教職の場とのギャップをじわじわと感じ、教師3年目を迎えたとき「もっと違う社会を自分も経験してみたい」と離職を決意。
その後、住宅用太陽光発電の営業、学習塾の塾長、塾講師……と、さまざまな業種を勤め渡った福山さん。それぞれの場所で気づきや発見を得、時には辛酸を舐めることもあったそうです。
そんな慌ただしい日々の中、奥様と結婚。2児をもうけ、家族の大黒柱としても汗を流していました。

そうして“経験値”という手ごたえを得た2017年末、もう一度小学校という場に戻ることを決心し、いざ探し始めた先で、高知県で私立小学校の新設のスタッフ募集に遭遇。
これは行くしかない。
奥様の後押しもあって、自分のステップアップのためにと、家族を連れ、一路高知県高知市へと居を移しました。

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縁もゆかりもない土地で感じた、核家族の限界

福山さんが携わったのは、高知県吾川郡いの町勝賀瀬に設立予定だった『学校法人日吉学園 森の小学校 とさ自由学校』の設立。
元来自然が好きで、キャンプなどにも頻繁に出かけていた福山さんは、この学校の“自然の中の体験から学ぶ”というコンセプトに共感し、設立後はそこで教鞭に立つ予定も立っていました。
正直大変ではありましたが、それ以上に再び教職に戻って子どもたちと、しかも自然の中で過ごすことへの期待がどんどん膨らんでいたそうです。

そんな折、第三子の妊娠がわかり、歓喜に沸く福山さん一家。
しかし、両手放しで喜べない、一抹の不安がご夫婦にもたげてもきました。

当時、福山さん一家は高知市の市街地に在住。3歳と1歳のお子さんの面倒はすべて奥様が担っていました。
それぞれの実家は、福山さんは大阪に、奥様は神戸にあり、両親に会うことですら半年に1回が精一杯。そのうえ、住まいである高知には親戚や知人がまったくいません。
奥様は馴れない土地で頼る人もなく、いわゆる孤育て状態
こんな状況で、3人目を妊娠した状態で2人の子のお世話、出産、幼子3人の子育てをできるのだろうか……
消耗する奥様の様子を見るにつれ、福山さんは危機感を募らせ、自身のこれまでを振り返りました。

度重なる転職も、高知へ来たのも、すべて自分のやりたいこと。
そのために最愛の家族が苦しんでいるのは、自分の望むところではない。
自分のキャリアと家族、どちらにプライオリティがあるのか。

迷うことなく、福山さんはプランを変更。
高知の生活に見切りをつけ、家族が心身ともに無理なく暮らせる新天地を求めて行動に起こすことにしたのです。

新天地――今の自分たちに必要なものを探して

今の生活を鑑みて、“実家に近く”“自然のあふれる”場所に重きを置いて候補地を挙げることに。
丹波や豊岡といった山間部も脳裏には浮かんだものの、冬場の寒さを思って断念。

それなら……と目星をつけたのが、淡路島でした。
瀬戸内海式気候の平均気温16℃という、比較的温暖な地域。関西在住時に何度となく観光に訪れ、海も山も美しいことが記憶に残っていました。
そして何より、明石海峡大橋の付近なら神戸や大阪にも近い。
となると、島内でも橋のかかる淡路市――。
そうと決まったら早速、福山さん一家は現地へ行ってその目で見てみることにしたそうです。

淡路市とは

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説明:淡路市と神戸市をつなぐ、明石海峡大橋。(写真出典:photoAC 涼風さん)

瀬戸内海東部に位置する淡路島の北端に位置する市。人口は約4万1000人。
鳴門の渦潮をはじめ風光明媚な景観と、昨今ではアニメテーマパークの開設も相まって、関西地方の観光地のひとつとして人気の場所です。
神戸や大阪から明石海峡大橋を渡って車で約1時間という利便性から、「島ではあるが離島ではない」と謳われるほど、ユニークな環境でもあります。
まちづくりに関しては、2008年に人材サービス大手のパソナグループが地方創生に一役買い、長らく人材誘致を行ってきた歴史があり、他都市からの移住先としても特に子育て世代から人気を博しています。

実際に見たことで感じた「ここだ」というインスピレーション

移住に関する総合イベントへの参加や各地方の配布物などの取り寄せなどはせず、福山さんは一心に淡路市移住相談サポート窓口ヘ相談。早速家族で淡路市を訪れました。
担当者の案内を受けながら市内を巡ることになり、辺りを見ているうち、あることに気づいたそうです。

それは、山に植えられている樹木に広葉樹が多いこと。
高知の生活圏内の山林ではスギやヒノキなどの針葉樹をよく見かけていましたが、それに比べて淡路市内の山に生えている樹木は、ヤマザクラなどの広葉樹が広がっているのが目に入りました。
その印象がなんとも穏やかで、また出会う人もその景色のようにどこか穏やかな雰囲気をたたえていて――
途端に心をつかまれた福山さん。

海・里・山の豊沃な自然と柔和な人たちを前に、もう淡路市以外に住むことは考えられなかったといいます。

唯一の不安、仕事をどうするのか問題

その後も2度ほど淡路市に通い、現地の様子や移住に関する具体的なプランを相談していた福山さんでしたが、肝心の収入源――島でどんな仕事に就くのかが決められず、移住のタイミングを計りかねていました。

そうした心情を移住コーディネーターの方に吐露した折、「ちょうど来年5月から前任の地域おこし協力隊が任期満了で代わりを募集するんだけど、福山さんどう?」とのお声がかかります。
渡りに船!
安定収入の目処が立ったことが背中を押し、福山さんの迷いは一気に吹き飛びました。

そして、ミッション型地域おこし協力隊として着任が決定。
引越し先の住居探しに難儀はしたものの、無事いい物件に巡り合うことができたそう。
そして、2019年5月。淡路市へと人生2度目の移住が決行されました。

移住後のライフスタイル

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写真:海遊びも、思い立ってすぐ行ける距離。友人のお子さんも交えて、思い思いに遊ぶ子どもたち。

なかなか見つからなかったという引越し先は、結果的に一軒家を借りることができました。間取りは6部屋、駐車場2台分付、月約5万円。ほかの離島の借家事情と比べると、比較的家賃相場は高め
住んでみて目立って困ったことはなく、強いていえば水道代がこれまで生活してきた場所と比べると上がったかな……ぐらいだと福山さんは言います。

それ以上に「淡路に来てよかった」と思えることのほうが多く、その最たるものがやはり双方の実家との距離が近くなったこと。
月に1回は行き来できる安心感は、やはり何物にも代えがたい利点としみじみ語る、福山さん。

他にも、当初の理想にあった自然の豊かな場所に住むというのも、家から車に乗らずとも海まですぐそこの距離で、自然がとびきり近いことを実感しているそう。お子さんたちも日々泥んこになったり、海遊びをしたりと、のびのびと思うがままに過ごしているんだとか。

物価はそう高いわけでもなく、普通。むしろ、ご近所の方々から野菜をもらったり、肉体労働を対価に物々交換をしたりと、生活のコストが下がったといいます。

そして意外なうれしいことも。
関西の主要都市と距離が近くなったことで、夫婦双方の地元の友人らが訪ねて来てくれ、顔を合わせる頻度が増えたのだそう。
高知在住時代の孤立感からは、考えられないほど人とのつながりが増えたことをかみしめています。

今の仕事『地域おこし協力隊』の任務

ミッション型地域おこし協力隊として島に入った福山さん。NPO法人『島くらし淡路』に配属されました。島くらし淡路とは、移住希望者や農業従事希望者に向けて、観光や移住情報をはじめとした島のPR活動やそうした希望を実現するためのお手伝いを行う団体。活動を通じて、淡路島内の人口増加や地域の活性化につなげようと、日夜尽力しています。

地域おこし協力隊として「淡路市への移住者を増やす」というミッションを掲げている福山さんは、こちらの団体で移住希望者へのサポート業務を担当。
いままで培ってきた教育関連とは、まったくの畑違いの分野です。

ですが、自身が都市部から家族を連れて移住したことで得た経験を糧に、淡路市へ移り住むことに興味関心のある人たちへ、その知見を還元していきたいと対応しています。実体験からくるサポートは、協力を得る側からもかなり心強いはずです。

そうして島の中を巡る中、福山さんは以前から感じていた“ある違和感”と対峙することになりました。

空き家だらけなのに新入者が住める場所がない

福山さん活動

写真:ポスターに自らの顔を出して活動する福山さん。先住者と移住者の双方のニーズに応えようと日々尽力しています。

福山さんが自身のミッションに加え、目下熱意をもって取り組んでいるのが、淡路市内の空き家問題です。
今日本中で増えている空き家。
淡路市も例外ではなく、平成30年度に市が行った実態調査によると、2万4025戸ある住宅のうち、3119戸が空き家になっているという結果が出ました。実に8軒に1軒が住み手を欠いている状況だったのです。

福山さんが移住を決めた際も、新居を探せども賃貸や売りに出ている物件が非常に少なく、相当苦心をしたそう。
その際、「住みたい人、移住したい人がいるのに、物件少ない。にもかかわらず淡路市には空き家がたくさんある」……というギャップを抱えていました。
結果的にたまたまのタイミングで不動産屋さんから情報を得て事なきを得ましたが、これが淡路市へ移住をしたい人たちの足かせになってはいけない、どうにかせねば……。

市の広報誌によると、淡路市の空き家率は、全国ワースト30内に入ったこともあったとか。
島くらし淡路の事務局にも、空き家に関する問い合わせが年に100件ほど寄せられていたとの話も。

周りを見ると、目立つ空き家。現状をどうにか改善したい!
強い想いを胸に福山さんは、空き家ソリューション講座の受講や、市内の空き家の片付けなど、コツコツと自身にできることを続けています。
またそんな福山さんの様子を見聞きした人たちから、「なんとかしたい家があるんだけど……」「あの人が空き家で困っているって」と相談を持ち掛けられることも。
地道ながら、福山さんの活動が、地域にも浸透し始めています。
1人の100歩より100人の1歩。
「少しの力を出し合って、みんなで進みたい」と願う福山さんの動きは、着実に周りの人たちに伝播しているようです。

譲り受けた山に見る、淡路市の未来の生活

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写真:移住者交流会で参加者とたまねぎ染めを楽しむ福山さん。いろんなワクワクが伝わってくる笑顔です。

福山さんの今後の展望を伺ったところ、「山を購入しまして……」と笑顔で話す福山さん。なんでも、移住して約半年のタイミングで一軒家の付いた山を購入したのだといいます。
賃貸住まいで山とは、また大きな買い物です。

福山さんはそこを大人も子どもも自由にのびのびと自然の中で遊び尽くせる“プレイパーク”のような居場所にしたい、と夢を語ってくれました。

淡路島に渡って、たくさんの人、たくさんの家族に出会い、たくさんのつながりができました。山を購入するに至ったのも、そのつながりがあったから。
島に生きる素敵な人たちと、少しずつ力や知恵を出し合って、この先の未来を生きる子どもたちに、そうしてできた素敵なものを残していきたい。
そのために、福山さんは毎日を積み重ねているように見えます。

福山さんが伝える移住先選定のポイント

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写真:家族団らんのひととき。大切な家族との大切な時間――それを得てなお思う、福山さんの移住のポイントとは?

移住の相談窓口にもなっている福山さん。移住を検討している人に向けてのメッセージをお願いしたところ、非常に参考になる視点を教えてくれました。

(1) 自分にとって何が一番大事かを判断基準にすべし
福山さんが今の移住先で安住を得たのは、何より自分が一番愛おしい“家族”が“安心して健やかに過ごすには”という点を最優先にしたから。
自分は何が一番大切なのか、その一番大切なものにとって移住先はどう関係するか。
“一番大事なもの”を尊重する視点を忘れずに。

(2) 考えすぎない
移住をするにあたって、考えすぎが一番のブレーキになるといいます。
100%理想通りの場所はありません。多少はすんなりと飲み込めないこともあるでしょう。
そんなときは、実際に現地へ赴いて自分の目で見ること。
福山さんが淡路市への移住際に仕事がないことがネックであったののように、実際に行ったら解決することもあります。迷わず行けよ、行けばわかるさ です。

(3) 生活の目線で現地を見る
実際に現地を見る際、生活するとしたらどんなことが気になるか、その部分にも注目を。
得てして美しいところや、素敵なポイントに目が行きがちですが(特に景勝地は)、ゴミの分別やインフラ、電気水道ガスなど、“日々の小さなストレス”が自分にとってどれほどのものかを確認しておくと、実際に生活してから苦に思うことが格段に減ります。
小さなストレスは積もり積もって爆発する……これをお読みの方も経験があるのでは?

(4) 土地を購入する際は、物件へ行って周辺在住者に話を聞く
これは一般不動産に関してもいえることですが、家を買ったり土地を買ったりする際には、物件を見るだけでなく、必ずその周辺にお住まいの地元の方にお話を伺うのがおすすめ。
なぜその土地が売りに出ているのか、もししばらく売れていないのであれば何か理由があるはず。そこの地盤の情報など、重要な判断材料を得られることもあります。
また、「移住しようと思っていて」と伝えれば、その時点で人とのつながりが生まれることも。

(5) 現地移住先輩の話を出来るだけたくさん聞く
「移住する前に、現地で知り合いを作っておくことは大事なポイントだと思います」と語る、福山さん。
各所で行われる移住検討者向けのイベントで詳しく話を聞いたり、現地の移住者交流会等で実際に顔を出してそこから知り合いを増やしたりしていくことで、その土地の特性や人とのつながりを知ることができ、ひいては地域との関係を築くことにもつながります。
移転先で孤立しないためにも、心得ておきたい要点のひとつといえます。

おわりに

お話を伺ったのが初秋、移住関連では非常に忙しいシーズンの中、はつらつと答えてくださった福山さん。協力隊の任期は3年ですが、その先も淡路市に暮らし続けるのだそう。永住の地になる確信をもっているようでした。

子どもたちのために――移住先となったこの地で叶えたい生涯の夢ができ、それを語るときの福山さんの生気に満ちた眼差し。
5年後、10年後の淡路市にどんな笑顔の輪が広がっているのか、楽しみで仕方ありません。

【参考URL】
・淡路市
https://www.city.awaji.lg.jp/
・淡路市地域おこし協力隊ふくちゃんブログ
https://ameblo.jp/fuku-awaji/
・特定非営利活動法人 島くらし淡路
https://sk-awaji.com/

(終わり) 執筆時期:2020年9月

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