「歳をとったら引退しなきゃ、なんてない?!」- 第二創業期を迎えたLIFULLの、"老卒採用"という挑戦 -
皆さん、こんにちは。LIFULLでコーポレートブランディングを担当している畠山です。
突然ですが、こんなことを考えたことはありますか?「歳をとったら引退しなきゃいけないのが普通。」と。
でもこれって誰が決めたんでしょう?無意識のうちにそうしなきゃ。と思っていませんでしたか?
そんな既成概念にとらわれずに、多様な人が自分らしく生きられる未来の可能性を拡げるために、LIFULLは「老卒採用」という取り組みを行いました。なぜLIFULLがそんな取り組みを行ったのか、今日はそんなお話をしたいと思います。
さてここで1つ、質問です。
Q. 次のうち、どれが一番長持ちすると思いますか?
A. バナナ
B. 牛乳
C. 卵
D. 知識と経験
正解は...そうです、Dですね!
でも、なぜか私たちの社会では、人間の知識と経験にも「賞味期限」があるかのように扱われてきました。
特に就職市場では、ある年齢を超えると、その人の持つ豊かな経験や独自のスキルよりも、年齢という数字だけが目立ってしまう...そんな既成概念が存在していると思います。
しかし、LIFULLは、そんな「既成概念」にとらわれない取り組みをすることにしました。その名も「老卒採用」プログラム。
聞いただけで「おっ」と思わせる、このユニークな取り組みについて、詳しくお話しさせていただきます。
■「老卒採用」って何?
「老卒採用」- まずこの言葉を聞いて、皆さんはどんなイメージを持ちましたか?「老いから卒業ってどういうこと?」「新卒採用とどう違うの?」など、様々な想像が浮かんだかもしれません。
実は、この「老卒採用」という言葉には、私たちLIFULLの思いが詰まっています。それは、「年齢に関係なく、あらゆる人が自分らしく、個人の持つ能力や経験を最大限に活かせる社会をつくりたい」という想いです。
従来の「新卒採用」や「中途採用」という枠組みでは捉えきれない、豊富な人生経験とスキルを持つシニア世代。そんな方々の力を、もっと社会や、LIFULLで発揮いただけないか。そう考えて生まれたのが、65歳以上で、“超経験”をお持ちの方を対象とした「老卒採用」プログラムなのです。
■なぜ今、「老卒採用」なのか?
日本は今、急速に高齢化が進んでいます。内閣府が公表した「令和5年度高齢社会白書」によると、2025年には国民の約3人に1人が、65歳以上の高齢者になると見込まれています。また、総務省統計局「労働力調査」によると、2022年の就業者数に占める高齢者の割合は13.6%で、就業者の7人に1人が65歳以上となっており、多くのシニアが65歳以降も働き続けています。
しかし、LIFULLが実施した「シニアの就業に関する意識調査」では、これまでの経験を活かして働きたいと考えるシニアは多くいる一方、多くの企業が人手不足の中でシニア採用を積極的に行っている企業はわずか2割。
さらに「年齢(高齢であること)を不採用の理由として考慮したことがある」と採用担当者の6割以上が回答しており、経験とスキルを持つシニアと企業の間で大きなギャップがあることが明らかになりました。その背景には、「歳相応の働き方をしなきゃ」「シニアに活躍を求めるのは諦めなきゃ」など、“老い”に対する既成概念が存在していると考えています。
これは、個人にとっても社会にとっても大きな損失です。豊富な経験とスキルを持つ人材が活躍の場を失うことは、日本の社会や経済にとっても大きなマイナスとなるからです。
また、LIFULLは2023年12月、創業社長の井上高志からバトンを引き継ぎ、伊東祐司が株式会社LIFULLの代表取締役社長に就任。第二創業期とも言えるLIFULLは多様性あふれるチームで社会課題解決のためにさらなる進化を目指すことを誓ったタイミングでもありました。
そこでLIFULLは、「老いの既成概念」から脱却し、高齢者の持つ可能性を最大限に引き出す「老卒採用」を導入することにしました。これは、単なる高齢者雇用の取り組みではありません。私たちが目指すのは、“年齢に関係なく、個人の能力や意欲が正当に評価され、あらゆる人のLIFEが、FULLになる社会の実現”です。
■「老卒採用」の具体的な内容
では、具体的にどのような採用を行ったのか、ご紹介しましょう。
1. 募集職種と選考プロセス:
今回の応募条件は65歳以上で、募集対象職種は「営業」「コピーライター」「法務」の3つでした。これらの分野を選んだ理由は、高齢者の方々が長年培ってきた経験やスキルが特に活きると考えたからです。
例えば、営業では人生経験に基づく深い洞察力や交渉力が、クリエイティブでは豊かな発想力や表現力が、法務では長年の実務経験に基づく正確な判断力が求められます。これらは、まさに年齢に関係なく、豊富な経験とスキルが発揮しやすい領域だと考えたからです。
その選考プロセスでは、まずWEBエントリーによる書類選考を行い、その後、オンラインでの面談を1~2回実施しました。これにより、応募者の経験やスキルだけでなく、意欲や組織メンバーとの適性も丁寧に見極めました。
また形態としては、業務委託を採用。これは、働き方の柔軟性を重視したものです。応募者には業務委託の形態を提案し、勤務時間や場所に柔軟性を持たせました。これは、シニア世代が自身の健康状態やライフスタイルに合わせて働くことができるようにするためです。特に、フルタイム勤務が難しい場合でも、リモートワークやパートタイムといった多様な働き方を提供することで、シニア世代が活躍できる環境を整備しました。
3. 企業間でのコラボレーション:
この取り組みや考えがより社会に広まり、浸透していくことを目指すには1社だけだと限界があります。そこで「歳をとったら引退しなきゃ、なんてない。」というコンセプトのもと、さまざまな就業機会を提供されている、パーソルホールディングス様ともコラボレーションし、SNSのキャンペーンを実施。8000弱のリポストによる拡散と、“将来こんな働き方がしたい”というコメントが1800件弱も集まりました。
■「老卒採用」実施に至るまでの苦労と結果
これらの取り組みについてLIFULLのブランディングを推進する部署や、PRを担う部署、人事担当の部署など、社内のさまざまな組織を横断したプロジェクトとして進めていきました。
特に、3つの募集職種に該当する受け入れ先の部署とは、そもそもの企画概要やゴールについての共通認識化から始まり、実際の募集要項や条件面などのすり合わせを細かく行いながら進めていきました。
普段の業務としては広告やSNSやオウンドメディアを起点としたコーポレートブランディングを推進している組織なので、さきほどのような領域での設計・実行は経験がないところも多く、手探り状態ではありましたが、チーム一丸となってカタチにしていきました。
またPRについても、一企業の取り組みとしてだけで終わらないよう、シニアの就業に関する意識・実態を当事者や、採用担当者側から明らかにする調査と併せることで、社会的な課題であることを明確にしつつ、それらの社会課題を事業を通じて解決するLIFULLという発信を丁寧に行っていきました。
その結果、この取り組みについて、TVや新聞、WEBなど様々なメディアにも取り上げられ、予想を超える数のご応募を頂きました。実際に、新しいチームの一員として業務を委託させていただく65歳以上の超経験者の方との出会いもあり、LIFULLとしては「老卒採用」という過去にない挑戦の社会的な意義を実感できた瞬間でもありました。
(実際にどんな方との出会いがあったのかは、またの機会にお話ししたいと思います。)
■「老卒採用」がもたらすであろう社会的価値
改めて、まとめますと、この「老卒採用」プログラムという取り組みを通じて、単なる高齢者の雇用増ではなく、LIFULLにとっても、そして社会全体にとっても、4つの大きな価値があると考えております。
【多様性の促進】 多様な年代の方が協働することで、新しいアイデアや視点が生まれやすくなります。若手社員にとっては、豊富な経験を持つ先輩から学ぶ機会となり、シニア社員にとっては、若い世代の新鮮な発想に触れることができます。
【知識・経験の継承】 長年培ってきた知識やスキルを若い世代に伝承することで、会社全体の能力向上につながります。特に、暗黙知と呼ばれる、言葉では表現しにくい知恵や経験は、直接的な交流を通じてこそ受け継がれていきます。
【新たな市場ニーズへの対応】 高齢化社会が進む中、シニア世代のニーズをより深く理解し、的確なサービス開発につなげることができます。実際に高齢者の方々が社内にいることで、よりリアルな声を反映したサービス展開が可能になります。
【社会的課題への取り組み】 高齢者の雇用促進は、社会保障費の削減や経済の活性化にもつながる重要な課題です。就業を希望するシニアが職を得られない場合の経済損失についてLIFULLで試算したところ、およそ1兆390億8,200万円であることがわかりました。このような経済的な損失の解決にもつながります。
これらの価値が世の中に伝わっていくことで、LIFULLの「老卒採用」という取り組みをきっかけに、社会全体の意識改革のきっかけとなることを期待しています。
■おわりに - 年齢は単なる数字、大切なのは熱意と能力
冒頭の質問を覚えていますか?「知識と経験」が一番長持ちする、というお話でした。
LIFULLは、「老い」という既成概念にとらわれず、この「知識と経験」こそが、社会を豊かにする最大の資源だと考えています。年齢という数字だけで人を判断するのではなく、その人が持つ能力や熱意、そして何より「人生」そのものを尊重する。それが、私たちが「老卒採用」を通じて実現したいことなのです。
「老いは衰えではなく、成熟」だと私たちは信じています。年を重ねることで得られる深い洞察力、豊かな人間性、そして何より「人生を楽しむ力」。これらは、どんな最先端のAIにも真似できない、人間だけが持つ素晴らしい能力です。
LIFULLは、これからも「年齢に関係なく、誰もが自分らしく輝ける社会」の実現に向けて、挑戦を続けていきます。「老卒採用」は、その大きな一歩に過ぎません。
皆さんも、ぜひ一緒に、新しい社会の形を創っていきませんか?年齢は関係ありません。大切なのは、あなたの「やる気」と「能力」、そして何より「あなたらしさ」なのです。
LIFULLは、そんなあなたを待っています。一緒に、もっと面白い社会を作りましょう!
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