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心筋梗塞-御代替わり-入院(9)

ステント留置術

手術室には、大型のディスプレイのようなものがあり、狭くなった血管の箇所までカテーテルが移動しているのを片目で見ることができた。ただ、どこの血管が閉塞している箇所かは専門家ではないのでわからず、また、話しかけていいのかもわからなかったので、ずっと天井を見つめていた。

不思議なことであるが、その天井からは多くの人の声が降り注いできたような感覚があった。あぁ、死ぬときってこんな感じなのかな、と思った。

手術室に入ってから1時間40分も経過した頃だろうか。ステントが血管内に無事留置され、これからカテーテルを抜くと言われる。右手首から抜くときに痛みを感じるとのことがあらかじめ説明される。実際に抜いたときは痛みを感じたが、それほどではなかった。そして手術が無事完了。

ディスプレイを見せながら何かを説明していたようであるが、尿道カテーテルの挿入で尿道が痛く、そちらに注意が行って説明が頭に入って来なかった。が、手術が成功したようであることは分かった。

ICUへ

手術室を退室すると控室に移動。控室では、看護師さんのPHSを借りて会社に電話を入れ、「心筋梗塞の診断がなされ、手術を行った。症状次第だが少なくとも約1週間は入院して経過観察することになる。」と伝えた。

この時が、15時30分頃。妻に状況を話し、どうやらICUに行き1日様子を見るらしいと言ったら、えっ、そんなに大変なの、と言われてしまった。

その後、集中治療室(ICU)に移動し経過観察が始められる。そのあとはただひたすらベッドに横になっているだけ。この間も尿道カテーテルの挿入で尿道が痛かった記憶しかない。

指にはパルスオキシメータが付けられ、胸部には心電図をみるための電極やその他の検査器具が装着され、ベッドサイドモニタでその時その時の状況が数字あるいは波形で表される。

看護師さんへの感謝

看護師さんは、このベッドサイドモニタに現れる心電図や心拍数、SpO2呼吸数、脈拍などのデータをみて患者の状態を確認する。

昼間は明るさでよく見えるのでそうそう頻繁には見には来ないが、夜中は、約1時間おきに看護師さんが見回りに来てくれる。寝れないので眼を閉じて寝たふりをして何をチェックしているのかを観察した。

余談だが、私の体調に問題がないかを検査する看護師さんの姿が天使に見えた。無償の愛というのか母親の子供に対する慈しみというのか、看護師さんの看護にそのような感覚を覚えた。今でもそのときのことは覚えている。感謝しかない。

なお、このとき、心拍等の検査機器や人差し指に装着されるパルスオキシメータなど、実物を見たのは初めてであった。いろんな検査機器が装着されていたので、おそらく、これを幽体離脱して天井側からみるとサイボーグのようだったのではないかと思う。

手術翌日

次の日である5月10日までICUでの経過観察が続いた。この間は、食べることもできないので、点滴液で栄養が補給されていた。この点滴用の注射針も尿道カテーテルと同じくらい痛い。ICUでの経過観察はお昼過ぎまでで、とりわけて異常がないことが確認されると、それ以降は病室に移動となった。

大部屋か個室かの選択については、入院同意書を書く時点で個室と決めていたので、個室での術後観察となった。

個室に決めたのは、他人に気を使いたくないのと、普通の声で話が出来ないのと、一度は個室と言うものを経験したかったのと、医療保険に入っていたので多少の出費は大丈夫だろうと思ったのと、自己負担限度額を超えた額が払い戻される「高額療養費制度」があること、からである。実際、負担は医療保険と高額療養費制度により、かなり抑えられた。

個室に移動してからも、点滴用の注射針と尿道カテーテルとパルスオキシメータを身につけて横になっていた。その間は、なにもやることがないのと、装着物があって自由がきかないこともあり、ずっとテレビをつけて眺めていた。

個室に移動して2日目の5月11日の昼過ぎに、やっと尿道カテーテルが尿道から抜かれた。この時の感覚は、痛いのはもちろんだが、もう嫌な思いをしなくてよいという解放感が強かった。ただし、抜かれてもしばらくは尿道が痛かったのは覚えている。尿をするときの痛さは忘れられない。


・・・心筋梗塞-御代替わり-入院(10)に続く

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