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【往復書簡/10通目】たっぷりどうぞ、まるごと文旦とタマネギのサラダ

いがらしさんへ

2021年、最初のお手紙ですね。去年春からのコロナ禍で、いろいろなことが変化してしまったけれど、それをきっかけに生まれたこの往復書簡は、私にとって嬉しい変化のひとつでした。今年もどうぞ宜しくね。

年の瀬のお手紙での「赤ネギと骨つき鶏のスープ」、ごちそうさまでした。お気に入りの特別な野菜を植えて、手をかけて育てて、満を持して収穫した、その喜びと嬉しさが伝わってくるような一皿だね。骨つき鶏よりも赤ネギが前にくる、スープの名前にもそれが現れてる。笑 寒い中、スープ畑で赤ネギを収穫して、帰ったらすぐに、準備しておいた骨つき鶏のお鍋に入れて、スープで身体を温める、みたいな時間を過ごして、野菜も畑も季節も、いつか丸ごと味わえたらいいな。

私は、関西でのはじめての冬を迎えています。お正月明けの数日間は、珍しく最低気温が氷点下になるくらい冷え込んだのだけど、そのあとは、札幌で言えば、4月くらいの気温で、日中はストーブをつけなくていいし、窓全開にして風を通しても平気。冬でも暖かいんだから、単純に幸せな気分になっても良さそうなものだけど、道産子としてはなんだか調子が狂っちゃう感じで、慣れるまでしばらくかかりそうです。

それだけ気候が違うのだから、当然、穫れるものが違うのは当たり前だよね。年末くらいから、お隣の伊丹市にあるJAの直売所に買い出しに行くようになりました。露地ものの青菜がわさわさと積まれているのは、相変わらずだけど、おどろいたのが、柑橘類の多様さ。年末から柚子や酢橘はあったけれど、今年に入って、どんどん種類も量も増えてきました。主要な産地といえば、愛媛や和歌山、高知なんかが浮かぶけど、伊丹でも、温暖化を逆手にとって力を入れている果樹農家さんたちがいるみたい。札幌では、橙なんて売っているのを見たことがないし、文旦もデパートや催事くらいでしか買えなかったけど、ここでは普通に並んでいる。グレープフルーツやオレンジだって、地元産のものがある。柑橘は大好きな食材だけど、北海道では育たないものだから、値段も高いし、選択肢も少ないので、ここ数年はあんまり食べられなかった。その欲求不満を解消するかのように、買い出しに行くたび、興奮しながらいろいろ買って、試してみています。

そして、地元産の柑橘があるということは、庭でだって、育てられるということなんだよね。散歩をしていると、よその家のお庭に、黄色い実がたわわと実っているのが見えるし、隣町の植木屋さんに行けば、レモン、甘夏、金柑などの苗木がたくさん売っている。色々、食べ比べてお気に入りを探して、春になったら苗木を植えてみたいな、と妄想しています。

そんな、柑橘でいっぱいになっている私が、今回いがらしさんに食べてもらいたいなと思ったのは、もちろん柑橘のお料理です。シチリア料理にオレンジのサラダというのがあるのだけど、今回は文旦をまるごと1個使って。だって、1個150円なんだもの!

文旦の薄皮をむいてお皿に並べ、タマネギのスライスを散らし、くせのない菜種油をたらして、少し多めの塩と香りのいいマダガスカル・ペッパーを。シチリアのサラダにならって、ミントの葉も添えました。

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「まるごと文旦とタマネギのサラダ」

それではどうぞ、召し上がれ。

みやう




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