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はじめてインドでインターネットを売ってみた #はじめてのインターネット

今や空気の存在のようなインターネット。ただそれが当たり前では無い国、インドで売ってみた話。

昔、それこそ20年くらい前、初めて家にインターネットが来るときと言えば、工事のおじさんが来て近くの電柱から家にケーブルを引っ張ってきて、そのあと難しいマニュアルとパソコンと格闘してようやくインターネットが開通できた思い出があると思います。

そのもはやノスタルジックな思い出となりつつある苦労のもっとエクストリームなやつがインドでは未だに経験できます! まずこの写真。

もはや工事のおじさんもどれが正しいケーブルかわからないカオス。日本の場合、インターネットを申し込んだらマンションならほぼ即日、新築の一軒家でも1ヶ月待たず開通できると思いますが、かの国は数ヶ月待ちは当たり前。

話は、当時受け持っていたとても大事なお客さんが新しいオフィスをインドの地方都市に開くので、そのオープンの前日までにインターネット回線を引いて欲しいとのオーダー。インターネット回線を通じて遠隔地の幹部へのお披露目のテレビ会議が控えていました。

結論は予想通り、オープンの前々日まで全くインターネットが開通できる目処が立ちませんでした。

今思えば、原因は3つ。まず国土が広すぎるということ。日本の9倍の国土なので、あちらこちらに光ファイバーがあるという状況ではありません。時には何キロも穴を掘ったり、電柱を立てたりしてケーブルを敷設する工事が必要です。首都圏ならまだしも、地方都市はほぼインフラ未整備。

そして、第2に無責任な管理です。日本のようにデータベースが整備されていない上、全てがマニュアルで属人的なので、誰も全貌を把握していないのです。インターネット開通と一言で言っても、道路に例えると家から電話局までの回線が一般道、電話局(=プロバイダ)が料金所、電話局から先がインターネット=高速道路で、全てが一気通貫で繋がらないといけません。もうこれが、かの国ではちぐはぐ。

そして第3にノープロブレム文化。基本的に優しい人たちなので、何でもできる、問題はないと強気で言い切るので、僕は前々日までずっと信じていました。

オープンの前々日、僕はプレッシャーに耐えかねて居ても立ってもいられず飛行機に飛び乗って、その地方都市に向かいました。その夜に泊まったホテルの従業員にこの地域のローカルインターネットプロバイダーの情報を聞き出しました。

翌日、この見ず知らずのプロバイダーのオフィスに乗り込み、「今日にでもインターネットを開通して欲しい」と、日本であったら門前払いの無理なお願いをしました。いきなり見たことも話したこともない日本人が来て、こんなお願いをするのですから相手も困惑気味でしたが、流石はインドの田舎です。ものすごくウェルカムな雰囲気の上、社食に招待されて一緒に食事をしながら「やってみるよ」

いろいろ聞いてみると、この会社は僕のお客さんの会社のビルにも出入りをしているらしい。既にビルまでケーブルが来ていて、あとはいわゆる上記の「料金所」に相当するプロバイダの設定をすればインターネットが繋がるとのこと。これは上記の無責任な管理に繋がるのですが、都市部のオフィスにいて工事の調整をしていても、結局都市部にいる人間は現場のことは全くわからない上、伝言ゲームになるので、こんな簡単な実態も把握できないのです。伝言ゲームを無意味に何ヶ月も続けていたのです、結局。

プレッシャーで何日も眠れない日が続いていてインドが嫌になっていたけれど、このある種の奇跡と、インドの田舎の方の温かさに触れて、気持ちが一気に戻りました。インターネットが繋がって、こんなに嬉しいと思ったことはありません。

ただ繋がって心の底から嬉しいと思っていたのは僕だけです。お客さんは僕のこの苦労を知りません。約束の新オフィスオープンの前日まで、僕はノープロブレムと言い続けていましたから。



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