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もし"僕"が子どもを産めたとしたら "わたし"のことを選んでくれますか


好きな人がいます。

どうしようもなく好きな人が。
でもこれを信じられない自分もいます。
だって、好きなんてわからないよ。


『 子どもを授かりたいとは思わない。』

そんな女性がいました。
いまの時代だって、違う時代だって。
おかしいことなんて何もない。
実のところを言うとわたしは子どもがあまり好きではありません。無邪気な笑顔が怖くて、泣き出した子どもを落ち着かせたことなど もしかしたら一度もないかもしれない。


もしわたしが将来誰か愛する人と結婚して、子どもがほしいかと言われると、言葉に詰まる。そもそも子どもが"ほしい"という言い方もあまり好きではなかったりして。でも自分の子どもはきっとかわいいだろうな、なんて。そんな色んなことを考えすぎなのだろう。わたしにはそもそも相手もいなければ、恋が始まる予感すらない。

でも"僕"が子どもを産めたとしたら変わっていた未来がどれほどあっただろう。きっと数え切れないほどあった。そう思うだけで気が滅入りそうなのです。



『 女の子だったら… 』

そんな空想を、もう何万回としてきた。
無意味なこともわかっていた。
ただ考えずにはいられないことだってある。
好きな人がいて、その人のことを1日中想い続けること。そんなこと、誰しもがしていることだと思っていた。


わたしには好きな人がいます。
その相手は男の人で、とても素敵な人です。

格好いいんですよ。
わたしのことを女の子にしてくれて。
「大好き」ってわたしが言えば深く頷いてくれて。仕事をしている姿なんかもう美しく輝いていて。シャツを腕まくりして、そこから見える腕の筋がたくましくて。大きな瞳も、綺麗な鼻も小さな口も。この前会ったら髪も染めちゃっててね。わたしは黒髪が好きだったけれど、少し明るい髪の色も素敵だよって。結局は彼のことだったらなんだって許せちゃうし好きなんだけれど。でも何言ってるんだろうね、わたし何言ってるんだろうね。わたしは彼の何にもなれていないのに。友達でも恋人でも家族でもないんだよ。おかしいよね。いっそ身体の関係にでもなれればよかったのに。でもそれすらも叶わない。だって、わたしは男の子だから。


泣いてないよ。涙を流しているだけ。
見えているよ。前も現実も。

わたしは男の子で、好きな人も男の子でした。

ただそれだけ。それだけだよ。
恋ってなんだろうね、愛ってなんだろうね。

わたし、ずっと独身でもいいよ。
彼の隣に居られるなら。でもきっと嫉妬しちゃうな。


わたしは彼となんでもない関係。
SNSで知り合った彼は、わたしと同じ街に住んでいて。時折わたしのことを誘ってくれて、ごはんを一緒に食べたり買い物をしたりする関係なんです。

たたそれだけ。それだけだよ。
でもなんでこんなに苦しいのでしょうか。彼の目の前に立つと、心臓の鼓動が速くなって収まらない。顔は赤くなって、両手を頬に当ててしまう。

彼のことならたくさん知っています。好きな食べ物だって洋服の趣味だって、好きなアーティストもわかる。洋楽も好きだって言うから、よくわからないけど聴いたりしてみた。どんな方法でもいいから彼に近づきたかったから。彼との話の引き出しをひとつでも増やしておきたかったから。おかしいことじゃないよね。ねえ、そうだって言ってほしいのよ。



彼とこうしてたまに会って話すわたしの生活も、もうだいぶ長くなってきました。ただ、今もまだ彼に会える保証なんてありません。もう彼はわたしのことなんてどうでもよくなって連絡すら返してくれなくなってしまうかもしれません。わたしが全然気づいていないだけでもうこれは"過去の恋"だったりしてしまうかもしれません。


彼には今、恋人がいます。
その相手は女性でした。
わたしなんて比較の対象にすらならないほど妖艶な女性。彼女に勝てる要素をあげようと思っても、悔しくて虚しくて。ひとつも思い浮かびませんでした。こんなにわたしは彼のことが好きなのにひとつも、勝てない。


彼がたまにわたしの前で恋人の話をして。その話を聞く時間だけが苦かった。

『そんなに楽しそうにしないでよ。今はわたしと一緒にいるのに。わたし以外の人の名前を出さないでよ。駄目、駄目なの。目を逸らさないで。やめて、どこにもいかないで。嫌だよ、嫌だよ。』

心が暴れ回る。
声にすることのない感情が渦巻いていました。



わたしは彼に告白をしたことがあります。

「好きです。」

そう、恋人になるために放つものとわたしにとっては同じだったのです。それでも届かないこと、伝える必要もないこともわかっていました。彼にはその時から恋人がいて、そして男の人が好きな男性ではなかったから。


それでも彼は残酷で優しいから。
いまのいままでわたしのことを見離すことはありませんでした。温度感をさほど変えることもなく。わたしの心と手を繋いでくれました。



恋で、後悔はしたくなかった。

彼はわたしとの何気ない会話の中で、子どもの話をしてくれた時があります。恋人と将来結婚したとしたら子どもがほしいと、そんな未来を語ってくれたことがありました。

しかしながら相手の恋人、つまり彼女は子どもを授かりたくないと言っていることで彼は悩んでいました。

子どもを産めるのは女性でした。
男性は産めません。天地がひっくり返っても。



彼女がどうして子どもを授かりたくないのか。そこまでの話をわたしは聞くことが出来ませんでした。ただそんな時、わたしはまた自分のことを空想してしまいました。


「"僕" が子どもを産めたとしたら…」


わたしは、男の子でした。
つまり、わたしは子どもを産むことは出来ません。それでもわたしは彼に聞いてみたかったのです。

『わたしがもし仮に、子どもが産める何か特別な身体を持った男の子だとしたら。そしたら"わたし"のことを選んでくれますか?』


きっと。いや、確実に。
それでも彼はわたしのことを選ぶことはないでしょう。ですが、思い描いてしまいました。彼との将来を。彼と家庭を持ち、彼との子どもと生活をするわたしを。



最近は彼からも連絡があまりこなくなりました。
この恋も、過去のあの恋に変わってしまっているのでしょうか。追いかけたいけれど、追いかける必要もない気がしてしまいます。好きなら好きと伝えた方がいいなんて。そんな言葉を丸めて飲み込んで。わたしは彼の彼女にだって負ける気はなかった、なかったのに。


わたしは結局、ひとりでした。
気づいたらもうわたしは30も近い。そして最後にお付き合いした"女性"の恋人と別れてから もう三年は経ちます。

淋しくないのかと聞かれたら、もう。



家のベッドに寝っ転がり、天井を見上げれば好きな人の顔が浮かびます、それも鮮明に。

苦しいです。恋は苦しいです。
きっとわたしが男の子で、好きな人が男の子だから。それだけではないでしょう。届かない想いは、何千何万年後、どこへいくのでしょうか。


始まった瞬間から過去になる恋をしたかったわけではありません。それでも人によって恋の形や色は違う。これからどれほど彼との日常が繰り返されようが、これは全て過去になってしまう。未来がないから。

それでも諦めない方がいいのでしょうか。もう過去です。あの恋です。答えがほしいのに答えを聞きたくないと思うのは矛盾でしょうか。


こんなことなら女の子に生まれたかった。そうしたら彼のことを「大好き」と、とびきりかわいい声で伝えられたのに。誰にもおかしいと思われずに愛を願えたのに。

どうせ叶わないなら、そうであってほしかったな。


最後に。
わたしが言えるのは今日、ひとつだけ。


『でも、まだ好きでいるよ。』


許してね。


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女の子にしてよ…
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この文章は女の子が書いてると思ってすべて許してほしい。性と日記。言葉で会いに行く、エッセイで詩に至る。【毎日更新276日目】Twitter : https://twitter.com/liegirl_1chan
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