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Libya Updates #33: November 2020 Week 3


こんにちは🕊
今週もリビアに関連する動きをまとめました。

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■リビアのこれまで
40年以上続いたカダフィによる独裁体制が2011年に崩壊。新たな政府樹立を巡り、衝突が続いてきた。
現在は首都トリポリを拠点とし、国連の仲介で2016年に樹立した国民合意政府 (GNA)と、東部の都市トブルクを拠点とする政府 (HoR) が分裂している構図だ。
HoRが支持するハフタル将軍率いる勢力が2019年4月、トリポリへの侵攻を開始した。GNA側の民兵組織らが応戦し、武力衝突に発展。GNAにはトルコ、ハフタル勢力にはUAEやロシアなどがつき軍事支援などを行ってきた。
6月はじめにGNA勢力がトリポリを奪還し、ハフタル勢力は同地域より撤退。停戦へ向けた協議が進む一方、現地での戦闘を繰り返してきた。

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1. 和平交渉

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リビアのGNAとハフタル勢力は13日、2021年12月24日に大統領と議会の選挙を行うことで合意した。
両勢力はチュニジアの首都チュニスで9日より、国連の仲介で政治分野での交渉を続けていた。


だが、課題も残っている。
交渉は15日、新たな統一政府の樹立の合意には至らないまま幕を閉じた。

交渉を仲介した国連リビア特別ミッション (UNSMIL) のステファニー・ウィリアムズ暫定大使は今回、選挙の実施のためには一つの統治機構を作る必要があると話していた。


一方、GNAは17日、対立する勢力が合意に至らなくても来年、選挙を行う見通しを示した。
シラージュ首相らは今後、リビアの選挙を担当する委員会 (High National Election Commission of Libya: HNEC) と選挙の実現へ向け調整を行う予定だという。

リビアでは2017年にもフランスの仲介でGNAとハフタル両勢力が翌年に選挙を行うことで合意しているが、実現には至っていない。


2. 現地では混乱が続く

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現地では混乱が続いている。
GNA軍は18日、ロシアの民間軍事会社 (PMC) のワグナー・グループとスーダンのジャンジャウィードの傭兵がリビア北中部のシルトで塹壕を掘り続けていると伝えた。
同軍もこれらの動きを監視するため、シルトでの駐屯を続けているという。

UNSMILが先月23日に発表した停戦合意では、3ヶ月以内に全ての軍勢力や外国の傭兵が撤退することを決定。和平交渉に参加しているメンバーの1人は先週、シルトから両勢力の軍事部隊が撤退したことを発表していた。


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GNAは18日、タルフーナで新たな集団墓地が見つかったことを発表した。

同政府は7月以降、タルフーナで少なくとも8か所に集団墓地があることを突き止めており、これまでに女性や子どもを含む200名以上の遺体を発見している。

同地区は6月にハフタル勢力がトリポリ周辺より撤退するまで、GNA勢力との間の前線だった。この時、ハフタル勢力を支持する現地の民兵組織「カニヤート」が多くの市民を連れ去ったとみられている。
GNA政府は現在、行方不明者の特別チームを作り捜査を進めている。ただ現場では、現地で農業を行っている人なども捜査へ駆り出されている状態だという。


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第2の都市ベンガジで10日、女性法律家で活動家のハナン・アルバラッシ氏が武装勢力に銃撃され、死亡した件についても、依然として犯人を突き止めるに至っていない。

リビアの専門家でジャーナリストのムスタファ・フェトウリ氏は「リビアでまたしても女性が殺害された。だが、だれも責任を問われていない」と主張。法の支配が及んでいない状態が「受け入れられている状態になっている」と指摘した。

アルバラッシ氏は人権問題や政治の腐敗について訴えてきたほか、ハフタル勢力に批判的な姿勢を示してきた人物。メディアやSNSでの積極的な発言も目立っていた。

ベンガジでは2014年にも女性法律家のサルワ・ブガイギス氏が国政選挙の投票から帰った直後に武装勢力に殺害されるなど、民主主義や権利を訴える女性が標的となる状態が続いてきた。


3. 新型コロナウイルス

感染拡大が続く

リビアでは19日 (現地時間) 時点で、累計75,465人の感染者が確認されいている。1週間の新規感染者数は4,580人。日に平均約650人近い新規感染者が確認されている計算。累計死者数は1,053人で、1週間で83人の増加。


リビアでは5月頃まで、感染者数は数十人規模で推移してきた。爆発的な感染拡大が始まったのは6月で、新規感染者数は増加の一途を辿っている。

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リビアの人口は689万人ほど。
情勢不安の続いてきた同国では、パンデミック以前より医療保険制度がきちんと整備されていない状態。感染者に対応するための病床や医療器具なども不十分だ。
4月から5月にかけて、医療施設への攻撃も多発。6月から7月頃には市民が地雷の爆発に巻き込まれる事態が相次いでいた。


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「わたしたちが続けなければ、"彼ら"が力を持つ。ただ殺されるくらいなら、活動を続けるほかない」。現地で平和教育を続けるアジマールさんのお話しです。

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