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Libya Updates #18: AUGUST 2020 Week 1


こんにちは🕊
今週もリビア情勢をまとめました。

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リビアのこれまで
40年以上続いたカダフィによる独裁体制が2011年に崩壊。新たな政府樹立を巡り、衝突が続いてきた。
現在は首都トリポリを拠点とし、国連の仲介で2016年に樹立した国民合意政府 (GNA)と、東部の都市トブルクを拠点とする政府 (HoR) が分裂している構図だ。
HoRが支持するハフタル将軍率いる勢力が2019年4月、トリポリへの侵攻を開始した。GNA側の民兵組織らが応戦し、武力衝突に発展。GNAにはトルコ、ハフタル勢力にはUAEやロシアなどがつき軍事支援などを行ってきた。
6月はじめにGNA勢力がトリポリを奪還し、ハフタル勢力は同地域より撤退。停戦へ向けた協議が進んでいるものの、現地での戦闘は収束していない。

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1. 国内の動き

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リビアで戦うため、世界中から傭兵や武器が集まっている。

イエメンからは武装勢力「大衆の抵抗 (Popular Resistance)」の傭兵がGNA側で戦うため、同国へ派遣されている可能性があるという。

メディアでは「噂」と報じられており、真偽のほどは定かではない。だが同国からは7月にも、200名の傭兵がリビアに到着していることが分かっている。トルコ側を介してGNAへ送られたと見られている。

「大衆の抵抗」はサウジアラビアと良好な関係を持ち、イエメンのフーシ派と戦ってきた。パンデミックの影響で休校となったイエメン国内南西部の学校に訓練キャンプを設営し、勧誘を行っていることが分かっている。職を失い、生活難にある若い男性らが戦闘に参加しているという。


ロシアの貨物飛行機は2日、ハフタル勢力側に武器を提供するためリビアへ到着したことが分かった。GNA軍が発表した。

この他にも、2便がシリアのアサド政権の兵士がハフタル勢力を乗せてリビア第二の都市ベンガジに到着したという。


ハフタル勢力の動きに対して法的措置を取ろうとする動きもある。
GNAを支援するトウブ民族は4日、南部のムルズク県で昨年、同民族に対して行われた「虐殺」についてICCに告訴した。

ムズルクでは昨年8月、ハフタル勢力の市街地への爆撃により40名が死亡している。


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ジャーナリストのイスマイル・ブズレーバ・アルズワイ氏 (39) に東部の軍事裁判所が懲役15年の刑を言い渡した。トルコ系の私営メディアと協力して働いていたことが原因。
東部トブルク政府はGNAを支援するトルコを「イスラム主義のテロと関連がある」としている。

最初に治安当局がアルズワイ氏を摘発したのは2018年。東部の町のアジダビヤでローカルニュースを取材していた。現在まで2年間、東部当局により拘束されている。


これに対して、国連リビア特別ミッション (UNSMIL) は懸念の意を表明。アルズワイ氏を即時解放するよう求めた。


EUも声明を発表。アルズワイ氏の即時解放とともに、表現の自由や基本的権利を尊重するよう訴えた。


2. 国際社会の動き

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米国は6日、リビア人3名とマルタを拠点する企業に対して制裁を加えた。マルタへ麻薬と石油を密輸した疑い。


米国のポンペオ国務大臣は同日、エジプトのシュクリー外務大臣と電話会談を実施。リビアの問題を国連の政治的・経済的なプロセスで解決することを確認した。


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トルコはハフタル勢力を支援する国への批判を続けている。
アカール防衛大臣はUAEについて6日、リビアとシリアで「悪意のある行為」を行っているとして名指しで非難した。

UAEはハフタル勢力を支援し、ドローン武器などを提供してきた。昨年7月には移民・難民ら52名が犠牲となった空爆で、同国が関与していることが疑われている

同国の外務大臣は同日、トリポリを訪問。リビアの政治的解決についてシラージュ首相と会談している。


3. 新型コロナウイルス

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新型コロナウイルスの感染拡大に歯止めがかからない状態が続いている。
リビアでは7日(現地時間)時点で、累計4,475名の感染者が確認されいている。前の週から新たに1,458名の感染が確認された格好。
死者は99名で、1週間で32名の増加

リビアの人口は665万人ほど。
GNA政府は30日、感染拡大防止のためのロックダウンを実施することを発表している。対象はトリポリなど同政府の支配する地域で、同国の一部に限られる。

情勢不安の続いてきたリビアでは、パンデミック以前より医療保険制度自体が弱い状態が続いてきた。感染者に対応するための病床や医療器具なども不十分だ。
4月から5月にかけては医療施設への攻撃も多発。6月からは地雷の爆発に市民が巻き込まれる事態が相次いでいる。

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法律家でリビアのジェンダー問題などに取り組むハラ・ブガイギス氏は、「リビアの人びとは常に孤独で、政府は日常の困難を増やしてきた」と訴える。
停電や断水などの問題に人びとが独自に対応してきたことに触れ、「だが新型コロナは私たちだけでは戦えない争い」と述べた。


4. 移民・難民

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トリポリから160km東にある町ズリテンでは2日、リビア沿岸警備隊が移民・難民ら55名が倉庫にいるところを発見し、捕らえた。
移民・難民らは地中海を渡り欧州を目指すことを計画しており、中には女性4名と子ども6名が含まれている。

人身売買業者1名も捕らえられたという。


カダフィ体制の崩壊後の混乱で、サブサハラアフリカ諸国よりリビアを経由し、欧州を目指す移民・難民が急増。EUなどとの協力のもと、同国は移民・難民が地中海を渡るのを阻止しようとしてきた。
リビアに留め置かれた移民・難民らの一部はGNA政府や武装勢力により収容施設へと送られることがある。収容施設では生きるために必要なものへのアクセスも絶たれ、外へ助けを求めることもできない。難民・移民から金銭を巻き上げるために脅しをしているほか、リビア人が暴行や性暴力を行なっていることも分かっている。

先月27日には、地中海を渡ろうとしていたところを沿岸警備隊に連れ戻されたスーダン出身の移民3名がリビアの沿岸警備隊に銃撃され死亡する事件が起きている


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Also read:

リビアの4月からの新型コロナの感染拡大状況を整理しました。
6月20日は世界難民の日でした。リビアの難民・移民について、一緒に考えてみませんか。

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