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Libya Updates #34: November 2020 Week 4


こんにちは🕊
今週もリビアをめぐる動きを整理します。

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■リビアのこれまで
40年以上続いたカダフィによる独裁体制が2011年に崩壊。新たな政府樹立を巡り、衝突が続いてきた。
現在は首都トリポリを拠点とし、国連の仲介で2016年に樹立した国民合意政府 (GNA)と、東部の都市トブルクを拠点とする政府 (HoR) が分裂している構図だ。
HoRが支持するハフタル将軍率いる勢力が2019年4月、トリポリへの侵攻を開始した。GNA側の民兵組織らが応戦し、武力衝突に発展。GNAにはトルコ、ハフタル勢力にはUAEやロシアなどがつき軍事支援などを行ってきた。
6月はじめにGNA勢力がトリポリを奪還し、ハフタル勢力は同地域より撤退。停戦へ向けた協議が進む一方、現地での戦闘を繰り返してきた。

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1. 国内の動き

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ハフタル勢力を支援するHoRは、モロッコのタンジェで29日にHoRの再統一について議論するため会議を開催する見込みだ。会議には議員40人が参加する予定。

HoRは2014年の選挙で樹立した政府だが、それ以前の政府GNCが解散を拒否したことなどから大規模な武力衝突に発展。国連の仲介のもと、HoR含む各勢力の権力を分散する形でGNAが作られた。
だがHoRは直後、GNAより離脱し、東部地域で独自に統治を続けてきた格好だ。

HoRが支持するハフタル勢力は9日から、GNAとチュニジアの首都チュニスで国連の仲介で政治分野での交渉を開始しており、2021年12月24日に大統領と議会の選挙を行うことで合意した。ただ交渉は15日、新たな統一政府の樹立の合意には至らないまま幕を閉じた。

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首都トリポリでは23日、リビア国営石油会社 (LNOC) に武装勢力が襲撃を試みる事件が発生。警備員が静止した。
LNOCによると、死者・負傷者はいなかった。

SNSでは襲撃未遂の一部始終を撮影した映像が拡散しており、それによると武装勢力の1人はNOC会長の辞任を要求していたという。
ハフタル勢力が今年1月から9月までの8ヶ月間、油田につながる港を封鎖。石油・天然ガスの輸出国であったリビアではディーゼル燃料などを輸入する状態が続いていた。
リビアでは燃料不足などが原因で停電が頻発し、最大で1日に16時間停電していた地域もある。8月末から9月には、北西部や北東部で市民の抗議運動を引き起こした。


2. 国際社会の動き

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リビアをめぐり、トルコとEUの対立が先鋭化した。
EUがリビアの武器禁輸を徹底するために行なっている「イリニ作戦 (Operation Irini)」の一環で先週、ドイツ軍の部隊が地中海東部を航行していたトルコの貨物船を調査した。
トルコは同国が武器禁輸措置を破ったとのEUの疑いを否定。船が人道的支援のための物資を運んでいたとし、許可なく軍が船に乗り込んだとして批判した。

「イリニ作戦」はEUが今年4月に開始したもの。9月にはリビア北東部のデルナから150kmの国際水域を通行中していたUAEの商船を、国連によるリビアに対する武器禁輸措置に違反していた可能性があるとして拿捕している。

EU諸国はリビアの和平交渉を推進する動きも見せている。
フランス、ドイツ、英国、イタリアの4カ国は23日、共同声明でリビアで進んでいる政治交渉を妨害する勢力に対して制裁を課す可能性をほのめかした。
声明ではリビアの勢力が2021年12月に選挙を行うことを合意したことを歓迎。ドイツ外務省は「選挙がリビアの主権や民主主義を回復するための大事な一歩になる」と言及している。


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国連リビア特別ミッションのステファニー・ウィリアムズ暫定特使も19日、国連に対してリビアの和平プロセスを妨害する勢力へ制裁を課すよう求めた。


だが、国連がどこまでこうした動きに応じることができるかは不明だ。
ロシアは国連安全保障理事会で翌日の20日、リビアで人権侵害を行なったことが疑われている民兵組織「カニヤート」に対する制裁を課す案を拒否した。
「まずは更なる証拠を見たい」と主張している。

「カニヤート」はリビアのタルフーナを拠点とし、ハフタル勢力を支援する民兵組織。同地区は6月にハフタル勢力がトリポリ周辺より撤退するまで、GNA勢力との間の前線だった。この時、ハフタル勢力を支持する現地の民兵組織「カニヤート」が多くの市民を連れ去ったとみられている。
タルフーナでは7月以降、少なくとも8か所に集団墓地が発見されており、GNAはこれまでに女性や子どもを含む200名以上の遺体を発見している。

米国はこれを受けて25日、「カニヤート」が市民の殺害に関与したとして独自に制裁を課すことを決定した。


3. 新型コロナウイルス

感染拡大が続く

リビアでは19日 (現地時間) 時点で、累計79,797人の感染者が確認されいている。1週間の新規感染者数は4,332人。日に平均約600人以上の新規感染者が確認されている計算。累計死者数は1,125人で、1週間で72人の増加。


リビアでは5月頃まで、感染者数は数十人規模で推移してきた。爆発的な感染拡大が始まったのは6月で、新規感染者数は増加の一途を辿っている。

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リビアの人口は689万人ほど。
情勢不安の続いてきた同国では、パンデミック以前より医療保険制度がきちんと整備されていない状態。感染者に対応するための病床や医療器具なども不十分だ。
4月から5月にかけて、医療施設への攻撃も多発。6月から7月頃には市民が地雷の爆発に巻き込まれる事態が相次いでいた。


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