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恋の本。/ずっと恋していたい

児童書/ヤングアダルト向けの本の世界は奥深く、素晴らしい本が数多、存在します。

14歳の世渡り術 恋ってなんですか?
27人がすすめる恋と愛の本

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ある時…中学に出向いて本を紹介する時に、結構悩みました。
学校司書さんから
「中学生は部活に勉強に忙しいし、本を読む時間がとにかく無い。純文学やいじめが題材の本は暗いから読まない、なるべく避けて欲しい。」
みたいに言われまして。
いや、私は…
純文学の素晴らしさや、いじめの廃絶を伝えたいんだけど…
と思いつつ…
そんな時、YAの書架から発見したこのシリーズ。素晴らしい!

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14歳の世渡り術、というシリーズは中学生向けと侮るなかれ、非常に秀逸な内容で。
これまで数年、シリーズで読んできて、大人でも凄くためになりますし、新たな発見があります。おすすめです!!
今回は、昨年末出た一冊にフォーカス。

恋ってなんですか?

毎回、いろんな作家さんの書き下ろし。
書評のようなコラム+薦めたい本が書かれているのですが。
全部、読みたくなるんですよ。
河出書房新社だから本当に、流石のラインナップですね。
金原瑞人さんが新たな歌人を紹介したり。 
皆川博子さんが『死都ブリュージュ』(ローデンバック)を紹介したり。
宇垣美里さんが「恋は本みたい」と書いてたり。
今をときめく方々も掲載。

特に響いた作品を抜粋。


「ようこそ恋の混乱へ」榎田 ユウリ

恋とは混乱です。
ウワァァであり、ドドドドドであり、ヒャッホーイであり、しばしばズドォォンです。

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おもしろい…
そして、SNSに夜、トンデモな愛の言葉を綴り、朝読み返して恥ずかしくなる…。
あるいは、アナログな恋文を書き出す…と。
現代を生きる/かつての若者にはあるある、の気がする…
榎田さんは、恋に混乱したとき、

『好き?好き?大好き?Do You Love Me?』(R・D・レイン)

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をおすすめしています。
客観的に恋の混乱を読んで、「恋に悩んでいるのは自分だけではない」と気がつくのが大事、と。たしかに!

「学校空間での恋」山田ルイ53世
 

山田ルイ53世さんは、多感な中学生の頃に『風と木の詩』(竹宮惠子著)を読んでいたという。凄い。中二で引きこもりになった山田さんの言葉は、説得力があります。

あの年代の僕にとっての学校は、世界のすべてでした。学校以外の世界も様々にあるのに、学校でしくじったら人生すべてダメ、みたいな気持ちで生きていたのです。

わかる。大人になったら学校なんて、いくら失敗しても良い、とわかる。辛くてしかたないなら、行かなくても全然良い、といまの私は思う。

『風木』では、そんな学校の異質性と、煮詰まる人間関係、閉塞感が丹念に表現されています。

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しかし、その学校を舞台に、男と女、男と男、先輩と後輩、などのカテゴライズを超えていく。
一個の人間対人間の物語が『風木』である、と。

「恋愛のカン違い」上野 千鶴子

上野千鶴子先生は、さすがの切れ味。
純粋な恋に悩む中学生には、良い意味で刺激が強いのでは…


…男の考える「恋愛」という近代の産物は、歴史と共に去りゆく、一過性のものだったのかもしれない。

『恋愛小説の陥穽』三枝和子著 を引き合いに、日本近代男流文学のミソジニー(女性嫌悪)を暴いています。

思えば、『男流文学論』(上野さん、小倉千加子さん、富岡多惠子さん共著)を大学の頃読んだのだけど、文豪の私小説風恋愛小説、というのは女性がひたすら客体、というのは確かに、ほぼデフォルト。

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感化された私は非常にドライな視点で文学を読んでしまい、一時期女性作家さんの本しか読めない時期がありました…。今もちょっと、男性の一人称には身構える。

「恋心を深読みできる“信用できない語り手もの”の名作」三浦 直之


『日の名残り』(カズオ・イシグロ著)を引き合いに、信頼できない語り手、をなんと中学生向けに紹介…!凄いな。なかなか本格、文学論ですね。
語り手が語る言葉の裏を読む、書かれていないことや思いを想像する。
それは十代や若い読者にとっても大事だし、大人にとっても大事。
「嫌い」という言葉の言外にある、ほんとうの気持ちとは?
人称というのは大事ですね。一人称の恋愛は、とかく独善的になりがち。

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生真面目な執事、スティーブンス。彼は女中頭、ミス・ケントンが好きなのに、恋心を否定し続ける。もどかしい…
『日の名残り』は映画版も美しくて、うっとり。アンソニー・ホプキンスがハマり役ですね。
二人が階段で話すシーンの、背景のブルーが美しくたまらなかったです。
ラストがもう…はあ…ああ…


「恋に包まれたとき」木皿泉


さて今回、木皿泉さんの、恋についての文章が特に共感できました。

無理をして生きてきた人ほど、自分が本当は何を考えたり、感じたりしてきたのか、わからなくなるものです。それを天啓のように、示してくれる人がいて、その瞬間、恋に落ちるのではないかと思います。

恋の対象は、異性だけではない。
同性かもしれないし、漫画や小説、アニメの中、アイドル、音楽や美しいものかもしれない、と。

「愛の対象は人間を越えて」(岡本 裕一朗)
にもありましたが、恋や愛、は何も人間へ向けてだけではない。ある対象、趣味や仕事や事物にも、起こる。

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わかる。
私は、ずっと、アートに恋してきました。
ときめきたいたらありゃしない。
いくつになっても、恋はしていたいですね。

#恋 #文学 #読書 #中学生 #アート

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本の虫(三十而立)。アートとROCKとレトロなものがすき。今は秘書(へなちょこ)。

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書評。純文学中心に書きます。たまに文学理論、社会学…

コメント (2)
私も読んでみたくなりました。
ありがとうございます。
芥会さま

コメントありがとうございます!嬉しいです。
芥川は読書の原体験でした。素敵なnoteですね。
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