経世済民大学院生

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最近の記事

ヒュームとデュルケームの議論に見る、契約と慣習の関係

民法上の大原則「私的自治の原則」の限界「私的自治の原則」とは 「私的自治の原則」という言葉をご存知でしょうか。大学で法学部出身の方などであれば、聞いたことがあるでしょう。法律、特に民法、民事訴訟法などを学ぶ際には、必須の概念と言っても良いものですから。逆にいうと、法律を詳しく学んだことがない方には、あまり聞き馴染みがない言葉かもしれません。 まず、私的自治の原則の意味を、法務省のHPで確認してみましょう。 なるほど、簡単に言い換えるならば、「個々人は、自分のことは国家

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    • 【進歩派のジレンマ】多文化主義と所得再分配が両立不可能である理由

      現在の日本は、直近の入管法改正においても見られるように、移民や外国人労働者についての政治的な課題が山積している状態です。このことは、どの政治的立場からも異論がないと思われます。その中で、リベラル派は、「外国人との多文化共生を推進してくべきである」という、多文化主義に基づく主張を強く展開しています。(一例として、日本の代表的なリベラル政党・立憲民主党の政策「多文化共生社会(外国人)」を挙げておきます。) しかし、そのような主張に対しては、既に20年近く前から、深刻な疑念が呈さ

      • 「本当は日本は規制緩和などしていない!」論は本当か

        「ここ数十年の日本においては、小泉政権や維新の会、竹中平蔵に代表されるように、『規制緩和』、『構造改革』というものが錦の御旗のようにして断行されてきた。これが日本の衰退の本当の原因である。」 最近では、このような反・規制緩和論が世間において支持を得るようになってきたと思います。かくいう僕も、この主張を支持する一人です。しかし、上記のような主張に対して、以下のような反論をする者達がいるらしいのです。 「日本は本当は規制緩和などしていない!事実として、規制の数はここ15年で1

        • 英語化は「貧困国化」であるということ

          僕は最近、中野剛志氏の言論に関心を持って追っているのですが、そのなかで、中野氏が著者である施光恒氏と共に『英語化は愚民化』(以下、「本書」と呼びます。)の出版記念トークショーに出ている動画を見つけ、そのトークショー自体の内容が大変興味深かったこともあり、本書を読んでみることにしました。 本書のタイトル『英語化は愚民化』とは、なかなか強烈です。一般的には、英語を学ぶことは、視野を広げる、活躍の場を広げるということで、非常に肯定的に捉えられているからです。しかし、この本は、タイ

        ヒュームとデュルケームの議論に見る、契約と慣習の関係

          西部邁・中野剛志「保守する方が、改革するよりも活力が要る」

           目新しさ、つまり革命や革新、構造改革といった類のものが三度の飯より大好きな連中はいるもので、その典型が維新であったり、小泉であったり、またそういう政治家を支持する大衆であると言えるでしょう。 「新しいものがかっこよくて好き」、「同じことばかりしていてもつまらない」、「古い伝統や慣習に従うなんて真っ平御免だ」と思う気持ちは、僕もいわゆる若者である以上、分からないとは言いません。しかし、同じことを繰り返すこと、それを維持して守ること、それが本当は大事だが難しいのだということは

          西部邁・中野剛志「保守する方が、改革するよりも活力が要る」

          Twitterの構造に制約される思考

          Twitterというのは大変便利な代物です。140字で手軽に自分のつぶやきを発信できる、というその性質は、本来は発信者という立場になかった大勢の者が発信者となることを可能にしました。その点において、Twitterは大きな意義は持つものであるといえるでしょう。 かくいう自分も、そのような性質に乗っかって好き勝手自分の意見を発信している一人です。しかし、しばらくこの情報流通のプラットフォーム、そしてそれが持つ構造に乗っかって意見の発信・受信をしているうちに、上記に述べた様なTw

          Twitterの構造に制約される思考

          ステファニー・ケルトン教授『The big myth of government deficits』TED講演(日本語訳)

          2021年8月のStephanie Kelton教授による『The big myth of government deficits』と題されたTED talksの、日本語訳による書き起こしです。 ケルトン氏本人のエントリにおいて原稿が公開されていますので、英語の原文が知りたい場合にはこちらを参照してください。以下、日本語訳による書き起こしです。  何かが壊れたとき、それは私たちにとっては好機でもあります。そのピースを拾い上げて古い方法で元に戻すこともできるし、より良い別の

          ステファニー・ケルトン教授『The big myth of government deficits』TED講演(日本語訳)

          消費税という有害無益な税 〜税の役割の観点から問い直す〜

          消費税はここ数十年の日本の政治の中において、特に重要な議題の一つであった。そして10%にまで増税された今でも、消費税を含めた税制のあり方をめぐっては激しい議論がある。 しかしその一方、国政政党で消費税廃止まで踏み込んで主張している政党・政治家は少ない。というよりむしろ異端である。現に、消費税廃止にまで言及している国政政党は、れいわ新選組と日本共産党のみであり、かなり「トンデモ」扱いされている節がある。しかし本当に「トンデモ」なのだろうか? 今回は「消費税廃止なんて無理でし

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