『弱い一歩』の参考文献の紹介

リベル

 リベルの短編本『弱い一歩 〜自由な地平へ歩きだす〜』の参考文献を紹介します。筆者の私見が入ってしまいますが、その分短編本との関連性も感じられやすいと考えています。より深く考えてみたいことが出てきたときの参考にしてみてください。

岡田美智男 著『〈弱いロボット〉の思考 ーわたし・身体・コミュニケーション』(講談社)
 今回ご協力いただいた岡田先生の著書です。周囲を味方につけながらタスクをこなしていく〈弱いロボット〉の着想の経緯が記されています。その経緯を一緒にたどることで、人の行為って決して完璧ではなく周囲環境の力を借りている、周囲と一体となって生きているのだと気づいていくことができます。
 この本には、短編本では紹介できなかった様々な〈弱いロボット〉が紹介されています。子どもたちを味方にしながらゴミを拾い集める〈ゴミ箱ロボット〉、コミュニケーションに特化した引き算のデザインから生まれた〈トーキング・アイ〉や〈む〜〉など。ロボットの行為と重ねることで、自分たちの社会的行為について振り返るきっかけになるかもしれません。
 人ってそもそも、というような哲学的なことを考えさせてくれる本です。人の不完結さや弱さを肯定的に捉えられるようになり、一つの行為を繰り出すこと、一歩を踏み出すことが楽になる感覚を覚える本でした。ちなみに、もう少し純粋に〈弱いロボット〉について知りたい方は、『弱いロボット』(医学書院、シリーズ ケアをひらく)もおすすめです。

佐々木正 著『新版アフォーダンス』(岩波科学ライブラリー)
 今回の短編本は、周囲環境の支えを借りながら人(や動物)の行為は繰り出されているということを趣旨とするものでした。このようなことを概念として表しているのが「アフォーダンス」です。アフォーダンスとは、アメリカの心理学者・J.J.ギブソンによって提供された概念です。短編本の中では、テーマに関連した部分だけを抜粋した内容になっています。ご興味を持たれた方は、日本にアフォーダンスを広く伝えた佐々木正氏の著書を読むのが良いのではないかと思います。
 この本は、人の知覚に関する実証実験の結果などを交えながら説明されています。私たちは、目・耳・手足・脳などの器官で、別々に周囲環境を知覚しているわけではなく、統合的・全体的に知覚しているのだということが分かります。例えば目で見て映像として認識するというよりも、様々な感覚器で得た情報を脳で束ねているというような表現がされていました。脳で考えて意味付けしているのではなく、脳ですらも感覚器の一つであると言っているのだと解釈しました。
 アフォーダンスとは、「環境が動物に与え、提供している意味や価値」と紹介されています。環境には既に様々な意味を持つものがあり、私たちの感覚器はその複雑な環境を知覚できるように進化してきました。人が主ではなく環境が主であるする、あるいは環境と動物は一体的であると見なすような概念であるため、周囲や自分に対する見方が変わる概念であると感じています。この本は、少し専門書的なものではありますが、アフォーダンスを理解するために必要な読み物なのではないかと思っています。

佐々木正 著『アフォーダンス入門 ー知性はどこに生まれるか』(講談社学術文庫)
 同じく佐々木正氏のアフォーダンスに関する本になります。先に紹介した『新版アフォーダンス』がギブソンの考えを忠実に説明するものであるのに対して、この本は佐々木氏の理解に基づく説明も成されているように感じました。おもしろかったのは、様々な型のサンゴ礁が造られるメカニズムを解き明かすことで生物と環境の関係を考えていたり、ミミズの生態から知覚について考えたりと、生物の生きるための基本活動から、知覚やアフォーダンスについて説明が試みられているところです。理解しきれているわけではありませんが、イメージを持つことができました。
 また、サンゴ礁の話もミミズの話も「進化論」を提唱したチャールズ・ダーウィンの発見によるものなのですが、ダーウィンの研究に関する姿勢も見てとることができます。それはまさに環境をつぶさに観察するというものであり、ギブソンが考える知覚のあり方そのものという感じでした。ダーウィンが示した「進化論」もアフォーダンスと同様に、「環境が生き残る生物を選択する」という環境を主とする理論でした。
 一般的には、人をはじめとした生物を主として考えることの方が多いと思います。普段とは異なる視点で、環境を主にして見てみたり、生きる活動のあいまいさのようなものを感じたりするのに、良い本・良い概念であると感じています。感覚的な話になりますが、自己を強く保持しなくなり、行為を繰り出すことが軽やかになるように思います。周囲環境と一体であるのだという、少し不思議な感覚を抱けるようになるかもしれません。

(吉田)

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