『遊動する生』の参考文献の紹介

リベル

 リベルの短編本『遊動する生 〜ちょうどいい自由をさがして〜』の参考文献を紹介します。筆者の私見が入ってしまいますが、その分短編本との関連性も感じられやすいと考えています。より深く考えてみたいことが出てきた時の参考にしてみてください。

瀬川拓郎 著『縄文の思想』(講談社現代新書)
 今回ご協力いただいた瀬川先生の著書です。縄文の思想がアイヌ・南島などに生き残ってきたと考える理由とともに、縄文の思想や生き方がどのようなものであるのかが紹介されています。伝説や習俗から、何を信じ、どのようなものと共に生きてきたのかがイメージされていきます。現代では受け入れ難いと思われるものも多いでしょうが、それらを一つの社会システムとして、生きてきた人々がいたのです。短編本では縄文の思想を一つの極点や視点として捉えてみていますが、ひとつの世界として、思いを馳せるのもいいでしょう。

山田康弘 著『縄文時代の歴史』(講談社現代新書)
 縄文の一万年以上の歴史について、4つの期間に分けて考古学的知見をもとに説明されています。短編本では、主に定住化が進んだ頃の、文化が豊かに発達していくところを取り上げました。ただ一方で、その歴史の詳細に目を向けていくと、非常にゆったりと、しかし着実に文化的な進行があったことが分かります。まだそこに何もなかった時代、人は、何を思い、何を作るのか、そんな原初を見るような感覚になれるかもしれません。縄文時代の歴史を網羅的にみられる本となっています。

岡村道雄 著『縄文の生活誌』(講談社学術文庫)
 狩りのさまや集落間の交流、集団存続の危機などを、岡村氏の知見と想像によってつくられた物語とともに紹介されている本です。もちろん考古学的知見・研究も多数紹介されています。狩りは不安定にも思えますが、おそらく経験と技術で、それなりの確率で成果を上げていたのだろうと想像されました。集落間の交流で大きなムラを訪れる時は、海外に足を踏み出すようなドキドキ感があったことでしょう。集団存続の危機を回避するために打ち出した打開策は、論理的にはあいまいかもしれませんが、当時を生きる人々で共有されていた心性にもとづく合理性があったのでしょう。そんなことがイメージされていく本です。

山田康弘 著『縄文人の死生観』(角川ソフィア文庫)
 縄文の墓制や死そのものに焦点を絞っている本です。さまざまな墓制の形式や供えられたものの意味するところは何か、またそれらから当時の人々のどのような人生や精神性が想定できるのか、発掘された資料をもとに想像力をもって解き明かされていきます。また、随所に縄文時代からみた現代に対する山田氏の見方が記されています。円環的死生観をもつ人々にとっては、死は再生の循環の入り口であるとも捉えられるものでした。現代とは異なる、死に対する切実さのようなものも感じられる本です。

藤尾慎一郎 著『弥生時代の歴史』(講談社現代新書)
 弥生時代の歴史の全体感が著されている本です。弥生時代は縄文時代に比べて、水田という土地所有が始まり、労働が組織化され、世代を超えた地位の継承・世襲も生まれていきました。つまり、現代的な社会への一歩目を歩み始めた時であったとみることができます。そのような価値観の大転換が図られた画期であったのですが、それを一度は受け入れながらも元の縄文的な生き方に戻る地域もありました。洪水などで水田が浸水しても頑なに弥生的な生き方を続けた地域が、もう一方ではあったにも関わらずです。つまり、新たな文化に染まりきるか否かには、切り替えスイッチにあたるような何かがあったのではないかと考えられるのです。弥生の歴史の全体感を学ぶだけではなく、社会の変化について考えを巡らせてみるのにもいいかもしれません。

ステファン・W・ポージェス 著/花丘ちぐさ 訳『ポリヴェーガル理論入門』(春秋社)
 ポリヴェーガル理論とは、ヒトを含めた哺乳類が、社会交流を営むための自律神経を発達させていることを示した理論です。自律神経は、神経が自らを律するものであるため、私たちの意識でもってコントロールできるものではありません。つまり、反射に近いようなかたちで自動的に、社会交流を行うかどうかが選択されているのです。短編本では、哺乳類が好奇心を発揮できる条件を簡単に紹介しました。この本ではさらに深く詳細に、人間が外のものとどうすれば融和的になれるのか、あるいはその逆が起こりうるのか、生理学的な見地から考えることができます。

岡檀 著『生き心地の良い町 ―この自殺率の低さには理由がある』(講談社)
 とある町の自殺率の低さを解明していく本です。著者・岡氏の大学院の研究テーマでもあるので、論理や根拠を緻密に組み立てながら解明していくのですが、さながら冒険であるようにも思えてきます。短編本では、自殺率の低さにつながっているのではないかと考えられた5つの仮説を簡単に紹介するにとどまっています。本の中では、5つの要因の詳細や、研究の過程で出会った町の人々や研究関係者との間の出来事、また歴史的・地理的背景から考えられるさらに踏み込んだ考察などが記されています。

福澤諭吉著/斎藤孝翻訳『学問のすすめ 現代語訳』(ちくま新書)
 明治維新を経て、江戸の時代から、近代国家への仲間入りを果たそうと躍動していた明治の時代への移行期に書かれた、『学問のすすめ』の現代語訳です。民主主義社会になるとはどういうことなのか、またその中において学ぶことの意味は何なのかを考えさせてくれます。明治維新・文明開化などといきなり言われても、そうそう変われるものではないのが人であるということも垣間見られます。一番最近の歴史的画期を覗き見るという意味でも、いい本なのではないかと思っています。

(吉田)

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