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世界の終わりまで愛してあげよう

 最近はいやなことが続きますね。

 ただでさえコロナ禍でイライラしているのに、政府が国民の批判を無視して法案を強行突破しようとしているとか、傑作小説を書いているのに文学賞の候補に挙がらなかったとか、腹が立つことが多いです。
 そんな時こそ、美しい物事に癒されたいものです。

 前回の「月に問う」に続き、今回で紹介する漢詩は、中国語圏でめっちゃくちゃ有名な恋の詩です。たくさんの恋愛小説が引用しているせいで、もはや知らない人の方が少ないのではないでしょうか。何を隠そう、私は小学校のときからこの詩を知っていて、暗誦できました。とある有名な恋愛小説を読み耽っていたからです。

 この詩はいわゆる「楽府詩(がふし)」というものです。「楽府」は中国の漢という時代の、音楽を司る役所で、民間から民謡などを採集し、保存することなどが仕事でした。「楽府」が採集したこれらの民謡も「楽府」、または「楽府詩」と呼ばれます。
 民謡なので、とても素直に、ストレートに感情を歌い上げることが特徴だったりします。今回紹介するものがまさにそうですね。詩自体はとても短いです。題名は「上邪」です。
 「上邪」というのは別に「よこしま」でも、邪悪でもありません。ここの「邪」はただの語気助詞で、漢文訓読のときは「や」と読みます。「上邪」とはつまり、「神よ!」という意味です。

【原文】
上邪!我欲與君相知,長命無絕衰。
山無棱、江水為竭,冬雷震震,夏雨雪,天地合,乃敢與君絕!

【日本語訳】
神よ!私は神に誓おう!あなたとは永遠に分かり合い、分かち合い、愛し合うことを。
いつか山が崩れて尾根が消え去り、長江の水が涸れ果て、冬に雷が轟々と鳴り響き、夏に雪が降りしきり、天と地が一つになってしまう――そんな日が来てはじめて、あなたと別れることとしよう!

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