【現代詩】泡沫(うたかた)の歌

もっと光を
と叫びながら闇へ堕ちていく多くの人に
いつ私たちが加わるか
隊列があんなにも長く、地の果てまで埋め尽くす

いつからかそこにかかっている月と太陽のように
いつからか私たちはいて、息を殺して生きてきた
なぜ生きるかより
どう生き抜くかの方が常に切実で
気付けばもう覚えていない
先に信じられなくなったのは
正義なのかサンタか
利と欲と思惑に塗り替えられた色とりどりの世界に
あなたと私は今日も密やかに生きる

マイクの前で薄笑いを浮かべるあの人や
ネットの虚空へ弾丸を撃ち続けるあの人の
彼らの嘲りが聞こえるか
差別がダメか
無知が罪か
どうせ全ては自己責任か
より幻に近いのは二次元の推しか形而上学的真理か
デカい顔をしたあの評論家には
私の夢も見られないし詩も書けやしない

起きては寝るを繰り返すことに疲れたら
この薬を飲んだら二度と起きずに済むか
怒りと哀しみに押し潰されることに飽いたら
あの谷に飛び込んだら重力から解放されるか
レズ、ホモ、オカマ、オナベ、
メンヘラ、コミュ障、引きこもり、かまってちゃん、
ネトウヨにパヨク、TERFにTRA、
何でも名前がつく時代に、レッテルはなお増え続け
生は駆け抜けていき、死だけが膨張する

生まれてくる時は独りで
死んでいく時も独り
と、寂しそうに笑ってつぶやくあなたの薄い手を
私はそっと握り、耳元で慰めの歌を口遊(くちずさ)んで
いつかともに、泡沫(うたかた)へと消える日を待つ

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