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Vol.29 The Who

ビートルズ、ローリング・ストーンズと並ぶイギリスの3大ロックバンドとして世界中で知られていますが、日本での知名度は他の2者に比べるとやや寂しい感じであることは否めません。
音楽性や後の世代への影響度などは決して引けを取るものではないのですが、70年代当時に日本であまりプロモーションがされなかった(来日もしていない)のが大きな原因のようです。
ただモッズカルチャー好きであったりプレイヤー志向であったりするコアな傾向のファンが多く、それが逆に人気の根強さにもなっているようにも感じます。

彼らの活動期間は60年代末から80年代初頭、いわば70年代ロックを凝縮したような存在でもあります。
初期のスピード感のあるハードなロックンロールスタイル、69年に”ロックオペラ”というコンセプトを作り上げたアルバム「Tommy」のリリース、73年のアルバム「四重人格」がモッズカルチャーを描いた映画「さらば青春の光」の原作となるなど、多くのロック史のランドマーク的作品を生み出しています。
シンセサイザー・シーケンスのループリズムと生々しい演奏をあわせて独特なグルーブ感とドライブ感を出す手法も彼らが確立したといって良いと思います。
一番人気だったドラマーのキース・ムーン(ドラマーが一番人気というのも彼らの変わったところです)が、シーケンスのある曲をプレイするときにヘッドフォンをつけてプレイするのがなんともかっこよかったものです。

過激なステージパフォーマンス(楽器を壊すなど)もひとつの特徴として知られていますが、これはそもそものちょっとした悪ふざけがメディアから好奇の目で取り上げられ(強調され)たことによるもので、本来の彼らの目指すところではなかったはずです。
いまも昔もメディアはアーティストの真意など無視してよりキャッチーなネタに飛びつくことに変わりは無く、これがクリエーターの悩ましき戦いのひとつでもあるわけです。
ただメディアの存在がなければ作品の発表や宣伝ひいては商業的成功を得ることでの活動の継続もできないのも事実。
メディアとの共存あるいは逆手にとることがきるか否かが才能の(あるいは成功の要素の)ひとつなのかもしれません。

彼らはそのあたりはそのあたりはとてもうまくこなしていたようですし、自身のやりたいことをきちんと作品のカタチで残し、かつ商業的な成功も収めることもできました。
ただそういったある種の歪みが一人の天才を破壊することになるのも70年代の特徴です。ドラマーのキース・ムーンはアルコール中毒に陥り78年にドラッグのオーバードースで32歳で亡くなっています。
いわゆるロックスターの悲劇です。
カート・コバーン以降こういったことはなくなったように思いますし、それはもちろん良いことです。
ただ、命を燃やし尽くしたとすら言える70年代のアーティストの作品にはやはり敬意を払う価値があるな、と強く感じることがあるのもまた事実です。




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