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Good luck Sadio Mane
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Good luck Sadio Mane

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リヴァプールでキャリアの全盛期を過ごし、多くのタイトルをもたらしたチームのエースの移籍が近づいてる。

 サディオ・マネ。リヴァプールでPL196試合90得点29アシスト。CL57試合24得点5アシスト。成績だけ見ても、彼がどれだけリヴァプールに貢献したかは一目瞭然だ。

 2016年夏、クロップによる血の入れ替えが行われていた当時のリヴァプールは、1人で試合をひっくり返せるゲームチェンジャーの存在を欲していた。15/16の冬にはシャフタールドネツクのアレックステイシェイラにラブコールを送るが、クラブ間交渉が難航し、最終的にはテイシェイラの意思も虚しく、交渉は破断。

 テイシェイラの獲得に失敗したリヴァプールは、シーズン終盤にEL決勝に挑むも、エメリ率いるセビージャに完敗。マージーサイドダービーでのオリギの負傷、脆弱な守備陣、不可解な判定。当時、サポーターやメディアは多くの敗因挙げた。そんななかでも、ヨーロッパで戦うためには、ゲームチェンジャーの存在が必要であると、多くのサポーターが改めて痛感させられたことは間違いない。

 そんな状況下でユルゲンクロップが白羽の矢を立てたのは、当時サウサンプトンで活躍していたセネガルの若きウィンガーであった。

15/16シーズンのリヴァプール戦では、後半45分の出場のみで2得点奪い、セインツを勝利に導いている。
 

 彼の移籍が現実味を帯びてくると、多方面から様々な声が聞こえてきた。移籍金が高過ぎないか?そこまで価値がある選手なのか?ノリッジで活躍しているレドモンドの方が良いのでは?しかし、そんな声などまるで存在していないかのように、セネガルの若き青年はニッコリと少年のような笑顔を浮かべながらKOPの前に現れた。

 2016年8月15日。クロップ政権初のフルシーズンの開幕戦は、ヴェンゲル率いるアーセナルであった。前半31分にウォルコットに先制されるも、コウチーニョのFKで前半のうちに同点に追いつき、後半開始直後にララーナ、コウチーニョがそれぞれ得点を決めてスコアを1-3にする。そして、後半63分、エミレーツスタジアムを沈黙させる黒い稲妻が走る。

モンレアルと対峙するマネ

 右サイドでボールを持ったマネは、大きなスライドと一瞬の加速で、チェンバースとモンレアルの間をブチ抜き、遠心力を利用するかのように身体を捻りながらシュートすることで、ボールをファーサイドに放ち、名手チェフからゴールを奪った。沈黙に包まれるエミレーツスタジアムと、熱狂に湧くアウェースタンド。自らのサポーターに、そしてライバルのサポーターにこれ以上ない完璧な挨拶を示した。

 今のリヴァプールでは1人でゴールを完結させてしまう選手は少なくない。21/22シーズンに、サラーがアンフィールドでマンチェスターシティ相手に決めたゴールは記憶に新しいし、18/19シーズンにフィルミーノがアーセナル戦でDFを3人翻弄して決めたゴールも個人的には印象深い。更に今では、アーノルドやロバートソンからのクロス1本でゴールが決まる光景が当たり前になってきている。

 しかし、当時のリヴァプールでは1人でゴールを完結させる選手は皆無に等しかった。コウチーニョがミドルレンジからシュート決めることはあったが、ゴールに決まるか枠外かの1か0のプレーであり、マネのように0から1を生み出すプレーでは無かった。多くのサポーターが待ち望んだ選手、その期待を裏切ることなく、彼はリヴァプールの攻撃を牽引していった。

 鮮烈なデビューを果たしたマネは、そのシーズン27試合で13ゴールを決め、クラブの年間最優秀選手に選ばれ、チームを4位に導く大活躍を見せる。

 その後、サウサンプトンから来たセネガルの若き青年は、国内だけでなく欧州を恐怖に陥れるワールドクラスのウィンガーへと成長したのは周知の事実として、多くの人間が認めることだろう。

 リヴァプールで輝かしい成績を収め続けたマネだが、リヴァプールで常に活躍し絶賛されていたかと言われると、それは間違いだ。17/18シーズンは、サラーの加入によって左サイドにポジションを戻したことで、適応に時間がかり思った様に結果を残せず、サラーや前年度の自分と比較され批判されることもあった。

 また、リヴァプールでのキャリアの晩年は、若い頃のようなアジリティや身体のキレは既に見られず、相対した選手を一瞬の加速で抜くことも難しくなっていた。それでもマネは、圧倒的な守備面での貢献度、CFでのコンバートなど、自分の持っている武器や戦い方を変えることで、常にリヴァプールの最前線に立ち続けた。

  サラーのように、毎年のように得点王を取るわけでもない。ファンダイクやアリソンのように守備の大黒柱というわけでもない。アーノルドやロバートソンのようにアシストを量産するわけでもない。フィルミーノのように偽9番として時代のトレンドになったわけでもない。オリギのように劇的なゴールを多く決めたわけでもない。ヘンダーソンのようにチームを纏めるキャプテンというわけでもない。

 もしかしたら数十年後、クロップの作り上げたチームが語られる時に、マネの話をする人間は世界では少ないかもしれない。それでも、リヴァプールサポーター達は、彼の惜しみないハードワーク、強烈な攻撃力とスピード、理不尽な身体能力を忘れることはない。クロップのチームを象徴する選手の1人として、サポーター達の記憶には強烈な思い出と、クラブには数多くのタイトルを残したから。

 マネのリヴァプールでの旅はここで一度終わりを迎える。彼の次なる旅は、異国の地で異なる赤いシャツを纏い、王者の一員として始まる。全てを懸けてリヴァプールに尽くしてくれた彼の今後のキャリアが、素晴らしいものになることを心から願う。


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主にLiverpool FCについての記事を書きます。たまーに、漫画や映画について書くかも。