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6/1 夜

宣言通りにお昼は友達と食べてきた。久しぶりにオムライスを食べたが美味しかった、あんな味が自分でも作れたのならさぞ幸せな人生であろうことは明白である。

昨日の夜は旅のほんの出だしを書いたつもりだったのだが思いのほか長くなってしまった、手軽に読める文を目指しているわけではないがいかんせん長すぎる気がした。(こういう部分をなくせばもっと短くなるのよね)


同行者とバスを降り、ここまで安全運転で送り届けてくれた運転手の方にお礼を言って荷物を受け取った。向かうは名古屋駅方面…ではなくコンビニだ。今日の昼飯までの食糧を確保しなければならないのだ。名古屋に来てまでコンビニ飯かよ、と思うだろう。私もそう思う。思い起こせば私の旅行は家族旅行以外、まともな旅行ではないのだ。1年前に名古屋に来た時は夕飯だけは名古屋を味わったのだが、これは日帰り弾丸遠征だった。まともではない。

朝食にはサンドイッチ、昼飯におにぎりを2つと飲み物を買った。コンビニを出ると目の前の高架線を赤い車体の電車が駆け抜けていく。名鉄電車だ、今回もついぞ世話になることはなかった。歩きながらサンドイッチを頬張る、朝マックなどという選択肢は存在していない。前回のときは朝マックだったが、どうもあのバンズが苦手である。そもそもバーガーキング論者なのだ、マックで食べるのはチキンフィレオだけと宗教上の理由で決められている。

名古屋、名古屋と連呼しているが目指しているのは近鉄名古屋である。ここで同行者の予定を確かめる、私とは違って彼は旅行の行程をしっかりと考えている。彼と違い私は場所さえ決めておいたら、あとはなるようになれの行き当たりばったり旅である。『根本的に旅と旅行は違う』のである。彼は途中まで私と同行、ある程度満足したら自分の旅程にするという。ほう、今更だが私の今回の旅のメインは鉄道である。置き去りにしないように頑張るよと心の中で思っていると、どうやら彼は私の目当ての路線に興味があったらしい。好都合だ、存分に振り回させてもらおう。

しかし10時には別行動に移るという、ぼっちの時間のほうが長くなるか。しかし私も事前にこれだけはと決めていたことがある。近鉄の名阪特急での大阪入りである。ライトな鉄道オタクなので車種は知らないし乗れればなんでもいいのだが、名阪特急というネームバリューには興味をそそられた。なにせ地元の鉄道は1都1県武蔵野台地を駆け抜ける西武鉄道である。特急に乗っても1駅で降りることになってしまうし、池袋線はとにかく急行が速い。特急に乗るという習慣は存在しないのだった。というわけで同行者が大阪に着いて余裕ができる頃合いを見計らって特急券と乗車券を購入、かなりの値段であるが勉強だと思おう。そもそも自分で望んで買っている。(実はこの次の日のダイヤ改正によって、私の乗った特急は新型特急での運用となった。つくづく惜しいものだ)

まだ6時を少し回ったくらいだが時間は有限だ、ホームに止まっている急行電車に乗り込む。目指すは近鉄富田駅である、ここから伸びている他路線はただ一つ三岐鉄道三岐線だけである。理由は追々話そう。名古屋を出発した急行は関西本線と並走しながら次々に駅を通過していく。蟹江、弥冨、桑名に停車すると次はいよいよ近鉄富田である。胸が高鳴る、気味の悪い表現で申し訳ないが実際こんな気分だったのだ。思い返すと気持ち悪い。

近鉄富田で下車し一度改札を出る、三岐線の改札は反対側である。窓口で一日乗車券を購入した、こいつがなかなか便利である。同行者は保々までの切符を購入。最初の我々の行先は保々である。我々と言っても保々の先は独りぼっちなのだが。

ホームに停車していた3両編成の黄色とオレンジの電車に乗り込む。ここで説明すると私が三岐鉄道を訪れた理由はこの車両たちであった。全ての電車が元西武鉄道の車両で、私が生まれた頃にはとっくのとうに西武鉄道では廃形式である。製造から50年を超えるとは思えないほど綺麗に整備されている、それどころか元西武の車両が西武の黄色一色や赤電と呼ばれるカラーを纏っているのだ。誇張表現ではあるが悶える、悶えまくれる。電車は関西本線をオーバーパスして次の駅へと向かう、ここから何駅か先まではまだ町である。乗るたびにバスのような次駅案内が流れるのが少し面白く思える。山城駅を出ると右へカーブする、新名神高速道路をくぐると三岐鉄道の車両基地が左に見えた。…どうやら赤電カラーを纏った車両は動いていないようだ、無念である。保々駅に着くと駅を出て撮影ポイントに向かった、道はなんとなくしか覚えていなかったのでGoogleマップとにらめっこである。そんな大げさな表現を使うほどの道でもなかったな、話を盛るのはよろしくない。

撮影地と思われる場所に着いたが同業と思われる人どころか近隣の人の姿すら見えない、同行者と私の2人しかいないのであった。なかなか来ない電車を待ちながら踏切の警報音と共にカメラを構え、ファインダーに電車が写ったらシャッターを切ること数回。本日の本命がやってくる、西武イエローを纏った復刻塗装である。昨年訪れたときには巡り合わせが良くなかったが、今日はどうやら良いあたりを引いたらしい。

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7時50分、1か月後のこの時間はまだ布団の中で眠りについていることがほとんどだとはこの時はまだ知らないが、大満足である。去年訪れてからはこれのために1年間があったのだと思った。これは誇張表現ではなく本心だった。

同行者はこれにて撤収、彼の旅行に向かった。彼の旅行の話も是非じっくりと聞いてみたいものだと切に思っている。


ここらで今日は終わらせたいが最後にひとつだけ。あまりに電車が来ないあまり暇を持て余した同行者が一言、

「ちょっと車両基地まで走ってくるわ」

大した距離ではないのだが私には少しばかりしんどい、荷物を見ていて欲しいとのことだったので有難く役職を引き受けた。彼は足が速い、というか持久走のような長距離ランナーだ。次の電車がやってくる前に彼は戻ってきたが、辛そうな表情は見受けられない。むしろ旅行先の見知らぬ土地で走ることができて満足といった様子に私には見えたのだった。

明日の夜はいよいよぼっち旅行のスタートである。

2020/6/1 23時

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