"バランス"で音は良くなるの?
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"バランス"で音は良くなるの?

近頃、ヘッドホンやイヤホン等のポータブルオーディオがちょっとしたブームになっています。
家電量販店でも、音質を売りにしたイヤホン等がズラリと並び、手軽にスマホで高音質を楽しめる時代になりました。

そういった所から一歩踏み込んで、ポータブルオーディオプレーヤーやDAC、大型のヘッドホンや高級イヤホンを買った人も多いかもしれません。

こういった世界で最近、よく聞く言葉があります。

「バランス」

バランス接続、バランス駆動、バランスライン、、
バランスとは一体なに?
バランスだと音がいいって聞いたけどほんと?

バランス駆動とバランスラインケーブル

結構勘違いしてる方がいらっしゃいますが、ヘッドホンのバランス駆動 と バランスラインケーブル というのは目的が全く違います。
ケーブルの構造の違いなどは調べるとたくさん出てくるので端折ります。
ここでは最近よく目にする、バランス駆動とバランスラインの混同という部分だけについて書いていきます。


近年能率の低い、いわゆる"鳴らしにくい"ヘッドホンを鳴らすパワーを得るために、

「アンプを2台使って、右と左を別々のアンプで駆動しよう」

というのが登場しました。これがバランス駆動です。その接続にバランスケーブルが使われているだけで、バランス駆動=バランスライン というわけではありません(実際には、世のバランス駆動はほぼ全てがバランスライン接続ではあります)

バランス駆動が、なぜこんなややこしい名前になったのかというと、確か一番最初に2台のアンプでヘッドホンを駆動しようとした商品がキャノンコネクタ(XLR)を使っていたからだったと思います。

PAやスタジオ機器知識のある人が、バランス駆動と聞いても想像できないのがこの辺の名前のあやです。

民生オーディオ、特にポータブルオーディオから入った方で、バランス駆動とバランスラインを、バランスという言葉で一括にして勘違いしてる人もいます。
私自身、「DACからアンプの接続もバランスじゃないと駄目だ!」という人を見かけたことがあります。
典型的な勘違いなのですが、意外とこれを教えてくれる人は少ないです。

そもそもバランスケーブルって?

ではそもそもバランスラインとは何でしょうか。

これについては検索すると、図解で分かりやすく解説してあったりするので、詳しく知りたい方は「バランス アンバランス 違い」等で検索してみましょう。

とてつもなくざっくり言うと、バランスラインというのは、外来ノイズに強いケーブルのことです。
マイクやPAでマイクやベースアンプのライン出し→DI↔ミキサー等、Hi-zで長距離を引き回すケーブルでは絶大な威力を発揮します。

機材によりけりですが、アンプやミキサー等ではバランスラインで入力しても、内部でアンバランスに変換するものが多いです。
アンバランス信号のほうが効率が良いとされているので、機材内部のやりとりはアンバランスで行うのが一般的です。
ラインレベルはそもそも低出力で、ホームオーディオであればケーブル長も短くなるので、外来ノイズの影響は少なく、ラインレベルのモノラル信号伝送でバランスケーブルを使うメリットはあまりないと思います。

バランスラインとアンバランスラインは線材の構造自体が違うので、単純な変換プラグを使用してつなぎ替えることは、ショートした状態になり最悪機器の故障につながるのでやってはいけません。
いちばん大事なことは

機器の仕様通りに接続する。

これが全てです。


ヘッドホン・イヤホンのバランス駆動

ただこれが、最終的なヘッドホン出力になると話が変わってきます。
基本的にヘッドホン等の出力端子はステレオラインです。
ステレオのアンバランスラインは、右の信号が少し左に漏れてしまう、左の信号がすこし右に、、というクロスオーバーという現象が発生します。
バランスケーブルにしてグランドを落とせば、左右のセパレーションが向上すると主張するメーカーもあります。
また、バランス駆動にすれば単純に2倍のパワーが出るので(内部のアンプ回路も2倍になりますが)特に出力に悩まされがちな携帯プレーヤーでは大きな威力を発揮します。

シングルエンドであってもメーカーによっては、最終的な出力をバランス接続にしている場合もあります。
みんな大好きiFiオーディオの、Micro iDSD Signatureがそうです。


フォンプラグに加え、4.4mm口もありますが、アンプは1台だけです。
「シングルエンドのバランスライン接続」ということです。
Diabloではバランス駆動になっていますが、アナログアンプ回路をもう1つ追加するために、大幅な機能削減や内部レイアウトの変更を行っています。
そもそもの回路が小さいDAPならまだしも、このような小型のヘッドホンアンプで、シングルエンドで音質を追求するか、パワーを求めてバランス駆動にするか、、はメーカーにとっても難しい判断だと思います。

最近のドライバを沢山詰め込んだイヤホン等では、ドライバごとの抵抗が違うかったりします。
また高効率のヘッドホン等では、アンプの低出力の部分を使うことが多いので、これらの場合はアンプの低インピーダンスでの駆動効率の落ち込みの影響を大きく受けます。
こういった場合にはシングルエンドかバランス駆動かで、アンプの特性によっては大きく音が変化してくる場合が多いと思います。また、アンプを変えた際の音の変化も大きく感じる場合が多いです。
携帯機や小型の据え置き機等、シャーシサイズの限られる中で、スペースをめいっぱい生かして1台のアンプを高品質に仕上げるか、アンプを2台搭載しバランス駆動を目指すかはメーカーによって分かれる部分です。
ですが最近は感度の高い、アンプによって大きくキャラクターの変わるイヤホン・ヘッドホンが多いので、出力的には十分な大型の機材でもバランス駆動にしてある場合が多いです。
逆に古典的なモニターヘッドホンでは、抵抗値を高くして環境に依る差を少なくする場合が多いです。
またインピーダンスを低くすると、ドライバが重くなりダイナミックレンジが悪くなるとも言われています(最近はドライバのコーティングや、サスの素材など新しい技術でこの辺りの問題をクリアしているのも多いです)。
本来十分に出力が足りていて、しっかりパワーをかけた状態では、シングルエンドもバランス駆動も、音質に差は出ないはずですが、上記のような理由から、現実的には同じアンプでも差が出る場合は多いです。
また、ちょっとしたバランス駆動ブームの中で、あえて違いの出やすい製品作りをしているものもあるのかなと感じます。
それはそれで楽しいので良いのですが。


とてつもなく基本的な、ざっくりした話でなんてことは無いのですが、もしこれを読んで へぇ、、と思ってしまった方は、バランスケーブルについて少し勉強してみてもいいかもしれません。
無知は罪ではありませんが、正しい知識を得れば、オーディオがもっと楽しくなるかもしれません。無駄のない買い物ができるかもしれません。

最後に、オーディオは趣味で、エンジニアのように正しい知識で音を取り扱わねばならないことはありません。
誤った使い方、繋ぎ方さえしなければ、見た目がカッコいいと言う理由でアンプやケーブルを買ってしまうのも間違いではありませんし。プリ部を複数回通過するルーティングをしても問題はありません。

ただ繰り返しますが、バランス、アンバランスラインについては線材の構造がそもそも違うので、誤った使い方をすると機器の故障に繋がります。知識がなければ、基本的に変換端子を使用して違う接続口に繋ぐのはやめましょう。


趣味で一番大事なのは、自分が納得できるかどうかです。
スペック競争になりがちな世界ですが、音楽を楽しく聴く、という原点を忘れないでください。
スマホに数千円のイヤホンでも、楽しく音楽が聴ければそれで良いのです。


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