【詩】次元キャンバス
「次元キャンバス」
わた菓子を連ねたような林だ
毎朝 差し込まれるわずかな時間
視界の水平120°に手を広げ
意識と向き合う 静かな林だ
わたしはその奥行きを未だ知らず
ましてや 時の奥行きまで知るすべもなく
それは遠いキャンバスに描かれた
小さな樹海の油絵に過ぎないのか
ふと 林の手前で
青田に隠れて青鷺のこうべが揺れた
林を見つめる後ろ姿は 心細そうだが
妙に太々しいところもあり
にわかに問いただしてみたくなった
おまえとわたしと
どちらが先にここに来たのか
おまえとわたしと
どちらが先にここを去るのか
──しかし鷺には見向きもされない
そうだ 在りし日のこと
朝靄の密林に舞い込んできた
一羽の雉の鮮やかさが
倦怠に飲まれていた幼児の心に
ほのかな体温を灯したのだった
わたしは 生きるのだ これからも
分け隔てられることのなかった
時間の続きを
雉と鷺のあいだにずっとあった
いのちの続きを
◇
〈after poetry〉
鷺の羽ばたきに林がさざめく
深い緑に光の隆起と畝を刻んで
緑陰の点描をあまねく落としていった
まだ足りないと言わんばかりの
烈しく絶え間ない筆つき!
おのおのが描き描かれ続ける世界だ
今こそノスタルジアの名を剥がす時
◇
ご支援頂いたお気持ちの分、作品に昇華したいと思います!