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怖い絵/中野京子

読書の秋、芸術の秋ですね。

私は美術に関する知識もセンスも皆無に近いです。お恥ずかしいことに教科書に出てくる圧倒的有名な絵画についても作者・タイトルともにぼんやり…というレベルです。

そんな私が今回ご紹介したいのが「怖い絵」(中野京子著/角川文庫)です。手に取ったきっかけは知人の紹介です。絵画や芸術については上述のようなレベルでしたので、自分の意志ではこの本を選ぶことはなかったと思います。

さて、こちらの内容についてはまえがきにある著者のこの一言に尽きます。

ー特に伝えたかったのは、これまで恐怖と全く無縁と思われていた作品が、思いもよらない怖さを忍ばせているという驚きと知的興奮である

まさにその通りです。中学生のとき夏休みの課題として市立美術館にいって絵画を見て回り、感想文の提出をしなければなりませんでした。当時は当然何も知らずに絵画をみるわけですから「きれい、でもよくわかんない」「これ何?」程度の感想しか出てきません。もし誰かが解説をしてくれたら全く違う印象をもつ絵もあったでしょう。

絵画鑑賞はその当時の歴史的背景や社会情勢、国の文化、宗教などを知らないと意味がないに等しいと思います。例えば多くの芸術家が題材としている「受胎告知」についても、あれが聖母マリアが大天使ガブリエルによって処女のまま妊娠を告げられている場面だということすら知りませんでした。またマリアには大工の夫がいること、その夫は妻マリアが処女のまま妊娠した事実を受け入れたこと、また宗教画を描く上のルールとして聖母マリアは必ず赤と青の衣服を身につけているということもこの本を通じて初めて知ったことです。そしてこの「受胎告知」も含め一見普通にみえる絵画にもある意味での「怖さ」が潜んでいると中野京子さんによって多角的に解説されていきます。

こういった解説があると、「後方の背景やここに○○を描きこんだ意味は?」「他の受胎告知を題材にした作品はどう?」「で、何が怖いの?」という興味であったり、あるいは「普通そんな告知をされたらもっと驚くだろ」というツッコミさえ頭に浮かびます。

ここに書いたことはあくまでほんの一部で、本中では中野京子さんが複数の作品についてさまざまな解説をされています。本自体もシリーズ化され、また2017年には「怖い絵展」として日本各地の美術館で展覧会が開催され大盛況でした。残念ならが私はいけませんでしたが、いつかはこの本を通じて知った作品たちをこの目で直接みて確認したいと思っています。

※見出しの作品はレオナルド・ダ・ヴィンチの「受胎告知」ですが著書のなかでは別の「受胎告知」を取り上げて解説されています。

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