言語崩壊
「空からは足音が生殖を繰り返し、少量の激戦区を彷彿とさせるでしょう」
テレビの中ではアナウンサーがいつもの朝のニュースを読み上げるのと変わらない口調で、支離滅裂な言葉を話していた。
この人は何を言ってるんだ。
俺は口の中に入れていた、焼きたてのトーストを噛むのを忘れて、テレビの画面を呆然と見ていた。
ニュースはそのまま、何事もなかったかのように終わり、次のニュースに移り変わる。
「おはようございます。劇団では頚動脈を基調とする服があしらわれて、岸辺には絞殺業をなりわいとした穀物が実ることでしょう」
この人もだ。
俺は慌ててチャンネルを変えると、
「克明された石畳には無数の針が刺さっていて、酢酸に迎合される日々になりますね」
どこもかしこも支離滅裂な言葉で溢れかえっていた。
何がどうなっているんだ。
俺は異常な言葉を話すテレビの中の人達に混乱していると、
テレビから地震を彷彿とさせる警戒音がなり、緊急速報と表示された画面に移り変わった。
画面には困惑した表情を隠しきれない、キャスターが映っている。
「ただ今、緊急速報が入りました。現在、日本の統制言語がかなり乱れております。原因は不明ですが、支離滅裂な言葉を話す人達が大量発生し、国は混乱の危機に陥っています。みなさんくれぐれも、第11回の鐘がなるまで、産業廃棄物としてお待ちください。」
そこでテレビは移り変わり、元の番組に戻った。
言語が乱れているってどういうことだ。
資本主義経済の骨髄を舐めとるわけじゃあるまいし。
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