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リモート会議に適したマイクの選び方

こんにちは、秋元です。

Legalscape という会社でエンジニアをしています。

皆さん、リモートワークしてますか?Legalscape では週4でリモートワークをしています(2021年12月現在)。

リモートワークではリモート会議がしばしばありますが、そこでどんなマイクを使うのかが悩みの種になりやすいですね。

果たして、リモート会議では一体どんなマイクを使えばいいのでしょうか?

この疑問について、「限られた時間で自分に最適な組み合わせを見つける」という視点で、いくつかの「選び方」の選択肢を用意しました。具体的なマイクはあえて挙げていません。

非常に多くの商品・組み合わせがあり、すべて見ていくのは大変です。そこで、個々人が達成したい目的に対し、どんな要素を考慮すればよいだろうかという視点で考えました。

💡 一言でいうと: マイク環境構築には、マイク、オーディオインターフェイス(必要なら)、XLRケーブル(必要なら)、マイクアーム、ウィンドスクリーン、ノイズキャンセリングソフトウェアが含まれます。目的を明確にして、シンプルな構成にするか、細かく組み合わせるかを検討しましょう。

🎄 この記事は Legalscape アドベントカレンダー 2021 の12月14日の記事です。前回は津金澤さんの「会議体設計(の重要性)」でした。

選び方の選択肢

それぞれの選択肢にはコンセプトがあります。

  • とにかくシンプル

    • 単一指向性の USB マイクを PC につなぎ、ヘッドホンをマイクにつなぎ、PC からマイクへ音声を出力する。ノイズキャンセリングソフトを使う。

      • ヘッドホンではマイクが拾った自分の声とPCからの音を同時に聞ける。

      • 責務が分離されておらず拡張性が低いが、そのぶん考えることが少なくて済む。

      • マイク1本とヘッドホンで完成してコンパクトで便利。

      • ノイズがどれくらい入りやすいかはマイクの種類による。でもソフトウェアで対策すればあまり問題ない。

  • 音質を追求したい

    • 単一指向性の XLR コンデンサーマイクとヘッドホンをオーディオインターフェイスにつなぐ。そのインターフェイスをPCにつなぐ。PCからオーディオインターフェイスに出力する。ノイズキャンセリングソフトウェアを使う。

      • ヘッドホンではマイクが拾った自分の声とPCからの音を同時に聞ける。

      • 環境音も拾ってしまうが、だいたいソフトウェアでキャンセルされる。

      • コンデンサーマイクなので、ゲイン次第ではマイクから多少離れても声が届く。

      • ちなみに、ゲインを下げればマイクの指向性とノイズキャンセリングソフトウェアのおかげでスピーカーから音を出してもあまり問題ない。

      • マイクとインターフェイスで責務を分離しているので、今後アップグレードしたくなったら個別に検討できる。

  • ヘッドホンをしたくないのでスピーカーから音を出しつつエコーは防ぎたい

    • 単一指向性の XLR または USB ダイナミックマイクを(XLR ならオーディオインターフェイス経由で)PC につなぐ。PCの音声はスピーカーから普段どおり出す。ノイズキャンセリングソフトを使う。

      • ヘッドホンがあればモニター専用としてオーディオインターフェイスまたはマイクにつなぐ。

      • ダイナミックマイクなので環境音を拾いづらい。また指向性のおかげもあってスピーカーから出た音も入りづらい。

      • ダイナミックマイクなので姿勢がかなり固定される。

とりあえず 3 つのコンセプトを挙げてみました。以下にマイクや周辺機器の選び方を述べますが、大事なのは「自分がどんな目的で、どんな環境で、どのようにマイクを使いたいか」を先に決めることだと思います。より具体的には、「いま自分がリモートワークにおいて音声関係の何を改善したいのか」を先に明確にしておくことで、マイク環境構築の見通しがよくなります。

なお僕は Podcastage という YouTube チャンネルをよく参考にしています。無数のマイクレビュー動画もさることながら、以下の動画は特に参考になりました。

マイクを選ぶ

シグナルをいかに拾い、ノイズをいかに退けるか。また毎日使うものなので、普段から便利に使えるか。そのために考慮したい軸がいくつかあります。

コンデンサーかダイナミックか

マイクには、音を拾う方式が主に2種類あります。

コンデンサーマイクは感度が高いです。エアコンの音を拾えるくらいです。そのぶん細かい音も拾えますし、多少遠くの音も拾えます。ノイズキャンセリングソフトのおかげで環境音はあまり気にならないことが多いです。

ダイナミックマイクは感度が低めです。かなり近づかないと音を拾えないので、エアコンの音、食洗機の音、ルンバの音まで入りにくいです。その代わり自分の声も角度や距離次第では全然入らないことがよくあります。

指向性

マイクがどの方向から音を拾うかという特性のことです。様々な指向性があり、それぞれ最適な要素は異なります。極性とも言われます。

まず無指向性と単一指向性、双指向性にわかれます。そして単一指向性ではカーディオイドという一方向への感度が大まかに高いタイプが一般的で、リモート会議でもカーディオイドで問題ないと思います。

指向性があると、感度の高い角度とそれ以外の角度とでかなり音の拾われ方が違います。スピーカーから出た音であっても、それが感度の低い角度であれば、ゲイン次第ではあまり拾われません。

XLR か USB か

XLR マイクは責務の分離がよくできていて拡張性に優れている一方、USB マイクはうまく選ぶと非常に便利に使えます。

XLR マイクは XLR ケーブルでオーディオインターフェイスにつなぎ、それを PC につなぐ必要があります。他方 USB マイクはマイクにオーディオインターフェイスの機能が組み込まれていて、直に PC につなげます。

XLR マイクだと、マイクだけ、オーディオインターフェイスだけを独立してアップグレードできます。

USB マイクには、そのまま PC につなげて机の上がすっきりするメリットがありますが、オーディオインターフェイスの機能が組み込まれているぶん高価なことが多いです。また、2本目以降に XLR マイクが欲しくなったらオーディオインターフェイスも買う必要があります。

なお XLR マイクを買う際は、XLR ケーブルが付属しているかを確認し、なければ別途購入しましょう。

予算

お金をかけると、それだけ高機能になったり音質がよくなったりします。マイクであればミュートボタンがついたり、指向性を変更できたりします。オーディオインターフェイスであれば、モニター音量と PC からの音量のバランス(モニターミックス)を調節できるようになったりします。

「人気だから」で選ばない…けど

あなたのユースケースにぴったりな組み合わせが必ずしも人気であるとはかぎりません。…が、人気なマイクには人気になる理由がちゃんとあります。個々の製品の特徴をよく知ったうえで選んだのであれば、最終的に人気商品を選んだとしてもそれが正しい選択であることには変わりないと思います。

何に使うのか

リモート会議で使うマイクに、どこまで音質を求めればよいのでしょうか。ネットワークを介してリアルタイムに会話する以上、一定までは音質改善の効果があると思いますが、ポッドキャスト等とは性質が異なりますし、聞き手の使うスピーカーにもよるため、とことんこだわっても聞き手にとってはほとんど変わらない、というのは十分ありえます。

実際、同僚に僕のマイクの違いによる音質の違いを尋ねてみましたが、違いがあるという人とほとんど変わらないという人がいました。

しかしそれこそリモート会議だけじゃなくてポッドキャストも録りたいんだ、など他に目的がある場合はより高い音質を追求する意味があると思います。

マイク以外の構成要素

マイク以外にも必要なものがあります。

ノイズキャンセリングソフトウェア

多くの人は防音室をもっていないと思います。また環境音が入りやすい環境にある人も多いと思います。

そういった部屋の反響や環境音といったノイズを低減してくれる Krisp, Nvidia Broadcast などのソフトウェアが使えるのであれば、そのぶん感度の高いマイクを使えます。

最近はリモート通話サービス自体にノイズキャンセリング機能が付いていることも多いため、このことを考慮すべきケースは意外と多いと思います。

オーディオインターフェイス

オーディオインターフェイスはマイクと PC の橋渡しをします。XLR マイクでは別途買う必要がありますが、USB マイクであれば内蔵です。

コンデンサーマイクは外部から電力を供給する必要があるので、ファントム電源を供給できるタイプのオーディオインターフェイスが必要です。

オーディオインターフェイスでは、マイクの入力音量(ゲイン)を調節できます。ゲインを大きくすれば多少遠くても自分の声を拾わせられますし、逆に小さくすればマイクに近づいて話すことでノイズを減らせます。

さらに、オーディオインターフェイスはマイクから PC に音を伝えるだけでなく、PC から音を受け取って出力できます。これにより、オーディオインターフェイスにヘッドホンをつなぐと、モニターしながら PC から出る音を同時に聞けます。つまり、リモート会議であれば自分の声も相手の声もひとつのヘッドホンで聞けます。

ヘッドホン

ヘッドホン・イヤホンをするのであれば PC から音は出なくなるので、ノイズ源が 1 つ減ります。そのぶんマイクの選択肢も広がります。

オーディオインターフェイスでモニターするためにも必要です。

また、ゲーミングヘッドセットなどには「ヘッドホン + マイク + オーディオインターフェイス」のような機能を備えているオールインワンのものもあります。機能や音質を求めると値は張りますが、検討の価値はあります。

マイクアーム

マイクアームが1個あると格段に取り回しやすくなります。特にダイナミックマイクはかなり口に近づけたいのでほぼ必須ではないでしょうか。

また、コンデンサーマイクのように感度の高いマイクをデスクにスタンドなどで立てると、キーボードやデスクの振動が聞こえるレベルでかなり伝わりやすいため、やはりアームがあったほうがよいですね。

ウィンドスクリーン

またはポップガード。息を吹きかけたときの音を軽減します。ないよりはあったほうがいいけれど、なくてもマイクの角度を少しずらしたり、距離を少し離せば対策はできます。

部屋

これは調整しにくい要素です。普通の部屋は反響音対策や環境音対策が施されていないので、感度の高いマイクだと容易にそういったノイズが入ります。一般にはウォークインクローゼットの中で話すと周りが布で囲まれているから一番良いと言われますが、そうもいかないので、他の要素を調整することでなんとかしましょう。

マイクを使う

選んだマイクを生かすコツもあります。

モニターする

オーディオインターフェイス(USB マイクの場合はマイク)にヘッドホンをつなげば、マイクが拾った自分の声をリアルタイムに聞くこと(モニター)ができます。

モニターすることで、マイクとの最適な角度・距離を調べられます。また話している最中に、自分の声が適切な音量・音質であるか、環境音が過剰に入っていないかといったことをリアルタイムにチェックできます。

気をつけたいのは、自分が選んだマイクの指向性が何であるかということに加えて、「マイクのどの向きが最も感度が高いのか」「どのくらいの角度・距離までなら拾ってくれるのか」を実際に確認することです。

たとえばカーディオイドのマイクを買ったとして、「マイクの正面」がどこかは製品によって異なり、自明ではありません。マイクの上 (front-address) なのか、マイクの側面 (side-address) なのか、側面であればロゴが書いてある向きなのか、はたまたロゴとは真逆の側面なのか。

また特にダイナミックマイクであれば、どの角度まで、どの距離までならば自分の声が相手に伝わる音量か。

この指向性・距離を実際に確認するうえで、オーディオインターフェイスを通じて自分の声を確認する、すなわち「モニター」すると非常に便利です。

もしくは、GarageBand などのソフトを使ってモニターすることもできます。

設定を確認する

PC の音声設定や、リモート通話ツールの設定をよく確認してみましょう。せっかくマイクをつないだのに、実はずっと PC 本体のマイクが有効になっていた、なんてのはよくあります。

入力をマイクにするだけでなく、PC からオーディオインターフェイス(USB マイクの場合はマイク)へ音を出力するよう設定するのも忘れないようにしましょう。オーディオインターフェイスまたはマイクにつないだヘッドホンで自分の声とPCの音の両方が聞こえるようになります。

あえてスピーカーから PC の音を出したい場合は、出力設定はそのままにしておきましょう。

結局どれがいいの?

本当に手っ取り早くなんらかのマイクが欲しい場合、とりあえず数万円の USB マイクで済ませてもいいかもしれません。高機能で音質も十分な USB マイクであれば、環境や目的に関わらずひとまずは用を足せそうです。ただし、必ずモニターをして、声が入りやすい角度と距離を確かめ、どれくらいのゲインをセットするのが適切なのかを確かめておきましょう。

気長にマイクのことを調べつつ、徐々にアップグレードしていきたいという場合、最初は非常に安価なアイテムで揃えてみるのも手です。5千円〜1万円程度の XLR マイク、同価格帯のオーディオインターフェイス、あとは XLR ケーブルとマイクアームさえあれば始められると思います。そういう構成の記事を書いたこともあります。

ちなみにもし今自分がゼロから環境を整えるとすれば、良い USB マイクと良い有線ヘッドホンを探して買うと思います。シンプルな構成ゆえの自由度の低さは運用でカバーし、そのぶんコンパクトにまとめることで机の上を片づけたいですね。

Work remotely at Legalscape

今回の記事はちょっと細かい話ではありましたが、Legalscape においてリモートコミュニケーションはその質を上げるために時間や機器を投資するメリットがあるくらい重要です。この記事を読んで Legalscape での仕事に興味が湧いた方や、マイク環境構築の工夫しどころについてもっと詳しく聞きたいという方は、ぜひ採用情報をご覧ください。カジュアル面談の機会も用意していますので気軽にご連絡ください!

🎄 この記事は Legalscape アドベントカレンダー 2021 の12月14日の記事です。次回は久本さんの「Elasticsearchでの同義語展開に関する話」です。

ちなみに見出し画像中の素材は shigureni さんです。