見出し画像

#206 「A特許事務所(就業禁止仮処分)事件」大阪地裁

2008年4月16日に配信した「会社にケンカを売った社員たち」第206号で取り上げた労働判例を紹介します。

■ 【A特許事務所(就業禁止仮処分)事件・大阪地裁決定】(2005年10月27日)

▽ <主な争点>
就職禁止条項が公序良俗に違反するか否か等

1.事件の概要は?

本件は、A特許事務所を経営する弁理士であるXが、就職禁止約定に基づき、A事務所を退職したBら12名に対し、同事務所の依頼者にとって競合関係を構成する特許事務所等において退職後2年間就業行為の禁止を求めたもの。

2.前提事実および事件の経過は?

<XおよびBらについて>

★ Xは、A特許事務所を経営する弁理士である。

★ XはBら12名との間で、それぞれ雇用契約を締結したが、BらはいずれもA事務所に採用される以前特許事務所に就職したことはなかった。

--------------------------------------------------------------------------

<本件誓約書および本件就職禁止条項等について>

★ Bらは1名を除き、A事務所に入所した日付でX宛ての誓約書(以下「本件誓約書」という)に署名押印したが、その際、その内容について説明を受けなかった。

★ 本件誓約書には、退職後の守秘義務として、A事務所の顧客に関する一切の情報を外部に持ち出さないこと、前記顧客から委任を受けた案件につき、これに敵対する形で退職後に別の顧客の代理をしないこと、A事務所を退職後2年間は同事務所の顧客にとって競合関係を構成する特許事務所・法律事務所に就職することを禁止すること(以下「本件就職禁止条項」という)が含まれていたが、地域は限定されていなかった。

★ A事務所において、Bらのうち3名は秘書業務を担当し、その他は翻訳業務に従事し、その多くが特許協力条約に基づく国際出願の国内移行手続きであった。また、A事務所における新人講習会は、出席は任意とされていた。

★ BらがA事務所を退職した際も、Aから本件就職禁止条項の正確な意味についての説明は受けなかった。Bらのうち3名は、退職後Aが本件就職禁止条項に触れると主張する3つの特許事務所等にそれぞれ再就職している。

★ A事務所においては、コンフリクトチェック担当者が同事務所におけるチェック基準に照らし、コンフリクト(利益相反)の可能性があると判断して報告した新規依頼案件については、コンフリクトに相当するとして受任を断ったり、依頼者の了承を得たりするなどの対処を行っていた。

--------------------------------------------------------------------------

★ 弁理士法には以下のような規定がある。

ここから先は

3,211字
この記事のみ ¥ 100

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?