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虚無

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どこまでも続くだだっ広い海の中にいた

もうこの世のものでなくなって

何十年と経つだろう

僕は海水の藻となって

風が吹くたびゆらゆらと揺れる

太陽がずっと向こうの方を照らしてる

水中に入ってくる光はほんのわずかだけど暖かい

人間だった頃

僕は悲しみばかり抱えていた

劣等感でもなく

敗北感でもなく

なんだか人類に必要とされていないように

毎日毎日自分を卑しく感じていたんだ

同い年くらいの子が殺人を犯したニュースを見ても

僕は人を憎むこともできなかった

それは愚かなのか確かなのか

今となってはどうだっていい

僕は人気のない海の底に生えた藻なのだから

息をしてもいつも眠たい

死んでるようで死にきれてないみたいだ

まだ生きたいという自分じゃない声が頭の中でたまに響く

神様は僕にいったい

死んでもなお

何を訴えたがっているのか

考えるだけで嫌になる

もう生きてても死んでても

終わりなんてない

夢も現実も

地獄も天国も

同じ一線上にあって

僕らはそこを行ったり来たりしているようにして

日々生きているように感じていた

それは今まさに僕が海の中で波に揺られているように

この揺らぎが

誰かに届いて

何かの役に立つなんて思ってもいない

だけど

僕は右も左もない手でただ空を掴んだ

1円でもありがたいお気持ち_( ´ ω `_)