#11 『キャラコレOSAKA』(大阪)
『ミミさん』
大阪の初日、午前3時半、ちょっと調子こいてファミレスとしてはワンランク上の『フォルクス』に入った。
見るからにアヤシイ2人の日本人に連れられた30人程の外国人ホステスさんたちが入ってきて、全員ケーキと飲み物を注文した。
ミミさん(間違いなく源氏名)の誕生日で、パーティーが始まった。
こんな時間にファミレスで誕生日パーティーが開かれる・・・やっぱり大阪は油断ならないオモシロイ独立国だ。
ミミさんは嬉しそうにしてた。パーティーの音頭を取ってたアヤシイ日本人の話しぶりからして、ミミさんは新人のようだ。
先輩たちは、楽しんでる雰囲気は皆無で、どっちかというと
「ハヤクカエッテ 寝サセロヨ」
って顔してた。
『ヨーゾーくん』
「名古屋にもいましたよね?まさか、大阪にいるとは・・・」
大阪に遊びに来てたヨーゾーくんは、名古屋のナナちゃん前を通り過ぎた時に『話し相手』の看板を見て気になってたらしい。
「もしかして5人ぐらいで、キックボードで通り過ぎた?」
「えッ、よく覚えてますね」
「キミだけずっとこっち見てたやろ」
「あ、はい、見てました。みんなと居たのでスルーしちゃいましたけど」
この日は、一緒にいた彼女のえりちゃんと、スルーせずに声を掛けてくれた。しばらく話した後、となりの3人組の学生さんたち(#10参照)に、2人の似顔絵を描いてもらってた。で、その似顔絵の色紙を
「これ記念にどうぞ」
って置いて行ってくれた。これ、オレ、どうしたらええの?明日もう1回来て
「やっぱり返して下さい」
って言うてくれへんかな。(これまた#10参照)
『メダカさん』
「にいちゃん、こんなとこで商売やっとんのか?」
吉本新喜劇の池乃メダカさんが演じるような、ガニ股でポケットに手を突っ込んでサングラスをかけた典型的な893屋さんが近づいてきて言われた。
ドラマ以外に、こんなセリフを聞くとは思ってなかったんで、ちょっと嬉しさもあったが、正直ヤバイと思った。
「いえ、これは商売ではなくて」
「商売とちゃう?」
「はい、料金いただいてませんので・・・」
「なにぃ、料金頂いてない?」
「はい」
「いただかなアカン」
財布から2,000円を出して「めちゃくちゃオモロイやないか」と言って、家紋(?)の入った名刺を手渡された。
「なんか言われたら、わしの名前出しや」
という頼もしい言葉を残してメダカさんは消えて行った。
『ホストくん』
「ダメなんすよねぇ〜、オレもコレ(話し相手)でいこうかなぁ、ホンマうまいこと考えましたねぇ」
「いや、オレのはキャッチやないから」
ホストのニイちゃんは、話し相手のイスには座らず、ウンコ座りで隣に座ってる。キャッチに失敗してはオレの隣に座ってタバコを吸う。
一服して、ターゲットをロックオンしたら、また、飛び立っていく。で、何度目かに戻ってきた時に
「ホストやりはったらエエのに、コレ店に置いたら、絶対ナンバー1なれますわ」
「いやいや、オレ、もう30過ぎて・・・」
と、突然ターゲットをロックオンしたホストは、 吸ってたタバコを投げ捨てて飛び立って行った。こらこら、 人の話は最後まで聞かんかい!
「ねぇねぇ、これからどこに行こ?」
って、「どこに行くの?」ではなく「どこに行こ?」って、すでにカップルになってる会話やん。
「なぁなぁ、どこ行くの?え?友達と飲みに行くの?俺、その子と友達になれるかな?」
「なぁなぁ、こんな時間にどこ行くの?電車なくなるで!ちゃんと門限には帰ってきいや。待ってるからな」
「なぁなぁ、どこ行くの?えッ、帰るの?そしたら俺も一緒に帰る」
「ちょっと止まって。一瞬止まって。めっちゃ歩くの早いわ。オリンピックめざしてる?」
「たぶんキミは俺の事キライやと思うけど、俺はキミの事が好きやねん」
気づいたら、3人のホストが、入れ替わりでオレの隣りに座ってる。どこのお店の待合室やねん!
『そね』
本名は知らんが豊中の曽根に住んでるから、みんなから『そね』と呼ばれてる高校1年生は、家族で全国を転々としてた。
「なんや、おやじの仕事のせいか?」
「いや、仕事のせいではなくてね、おやじが会社の金庫パクってクビになったんすよ」
「えッ、逮捕されたん?」
「なんか、1回目の時はね・・・」
「1回目?」
「1回目は飛ばされただけなんですけど、2回目はクビになってね」
「スゴイおやじやなぁ」
「なんかうちのおやじカッコええでしょ?」
「いや、そね、お前がカッコええわ。で、大阪にはしばらく居てんの?」
「おやじ次第なんですけど、いまんとこパクってないし、パクられてもないんで、しばらくは居てると思います。」
そね・・・うまいこと言うな。
『アベさんとクワバラさん』
「かっこいいなぁ〜、ドリーマーだよなぁ〜」
終電間際に、少しだけ『話し相手』に立ち寄ってくれたアベさんとクワバラさんは、そぉ言って財布からお札を出して終電に走って行った。
丁寧にお礼は言いつつも、見覚えのないお札やったんで、走っていく2人の後ろ姿に叫んだ。
「すいませーん、これぇ〜、どこの国のお金ですかぁ〜?」
「たいわ〜ん」
「これ、どないしましょぉ〜?」
「たぶん400円ぐらい〜」
答えになってなかった。
終電が終わると、人は一気に減っていく。その瞬間がけっこう好きやった。
『オーラさん』
「金のオーラが見えるようになれば、拳銃の弾もよけられるんやで」
「え?撃たれたことあるんすか?」
「まだや。金のオーラが見えるようになってからやな」
「そうですね。見えてないのに撃たれたら怪我しますもんね」
「半分見えてるねんけど、まだ黄色やろ?」
「え?あ、オレが見えるようになるんすか?」
「そらそうやろ。ワシから出てるオーラやろ!」
なんやそれ!完全に人任せかい!!
「それはスンマセン。黄色も見えてないですわ」
「見る方にもチカラは要るからな!」
オーラさん(仮)が言うには、自分から発するオーラが金色になるらしい。そんな説明をしながら頼んでもない太極拳を見せてくれた。
太極拳をやると見る側のチカラも備わってくるから「やった方がええで」と薦められたが、丁重にお断りした。
「金のオーラがあれば、水の上も走れるんやで」
「(アメンボかッ!と心の中でツッコミながら)まだ走れないんですか?」
「あぁ、もうちょっとや。太極拳が一番近道なんや」
「どれぐらいやってはるんですか、太極拳」
「7ヶ月や」
オーラさんの長い道のりは、始まったばかりやった。
『カゴシマンズ』
「どうすれば、大阪の女の子をナンパできますか?」
鹿児島から出てきたばっかりの2人組の純朴男子(19歳)が聞いてきた。いくつかのアドバイスを伝えたら「行ってきます!」と元気に出動していった。
ホストくんたちとは、まったく違った初々しさのカタマリが、梅田東通り商店街の闇に飲み込まれていった。
20分後に、オレの前をカゴシマンズの2人が、女子2人を連れて通過していった。2人は、コッチに頭を下げながら、サイコーの笑顔で女の子の後を歩いてた。
前を歩け前を!初々しさのカタマリが、大人女子に飲み込まれていった。その日、帰えり支度をしてる時に、カゴシマンズの2人がやってきて
「さっきは、ありがとうございました。」
「あれ、さっきの子たち2人は?」
「電話番号聞けました」
初々しさのカタマリは、壊れることなく闇から抜け出した?放り出された?とにかく無事戻ってきた。
「ちなみに、どの作戦でいったん?」
「あ、『僕たち鹿児島から出てきたばっかりなんですけど、東京タワーってどこに行けばいいですか?』のやつです。」
「おぉ、それか!それで、よくナンパできたな」
「はい、『うちらも九州なんで分かんない』って言われて」
「おぉ・・・お?」
作戦自体は空回りしてたとはいえ、カゴシマンズは同じ九州出身の友人に巡り会えたようだった。女の子2人は博多出身だったので、完全にイニシアティブは博多にあるやろな。
『ロマンチスくん』
「僕が好きやった子の誕生日が秋なんですけど、チューリップを好きな子だったんで、誕生日にチューリップをプレゼントしようと思って冷凍飼育をしたんですよ」
終電過ぎたからというわけではないけど、なんか大阪っぽくないロマンチストなサラリーマンが寄ってくれたので、ロマンチスと名付けた。
「チューリップって春の花なんで、球根を冷蔵庫に入れといて、いいタイミングで出してやると、チューリップが春と勘違いして咲くんですよ」
「なに、チューリップを騙すんかい!」
「はい、騙すんです。」
うわッ、悪びれることなく、めっちゃ澄んだ瞳で答えてるやん。大阪人なら(完全な偏見だが)「騙してんのとちゃいますやん!勘違いさせてるだけですやん!!」ってなるんやろうけど、ロマンチスくんは違った。
すごい誠実&一生懸命話してくれた。
「2年間は失敗して、3年目にやっと成功したんで、彼女に渡しに行こうと思ったんですけど、やめました」
「なんでやめたん」
「ピンクに育つはずのチューリップが、小さく白く育っちゃったんですよ」
「ええやん、白でもカワイイやん!」
「白いチューリップの花言葉は『失恋』なんです」
「うわッ、ロマンチスト!!」
結局その女性とは縁がなく、他の男性と結婚して幸せに暮らしてるらしい。オレは、ここに座って縁を待ってる。大阪で結ばれる縁は、これまでよりも、なんか味が濃くて、めっちゃ後を引く。
大阪の夜は、次回にもつづく・・・
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