見出し画像

先週の1冊 「パリの朝食はいつもカフェオレとバゲット」

 先週の1冊は国末則子さんの「パリの朝食はいつもカフェオレとバゲット」。副題は「フランス人はなぜ仕事と子育ての両立が上手なのか?」。フランスのことを書いた本が無性に読みたくなったのは、この間「冬時間のパリ」を観たからだろうか。(失礼を承知で率直な感想を書くと退屈な映画だった。けれど、パリの景色はどこを切り取ってもとびきり美しい)

 著者の国末さんはご主人(今の時代〝ご主人〟という言い方は好ましくないかもしれないが)の仕事の関係で幼い2人のお子さんを連れて二度渡仏し、計6年半フランスに滞在した。フランスでは働く母親が多く、日本では難しいことがなぜフランスでは可能なのか?と彼女は思ったのだそうだ。その彼女の〝なぜ?〟の答えがまとめられているのがこのオシャレな1冊だ。

 タイトルにもなっているようにフランス人の普段の食事は質素で、週末には自宅でコース料理を作ってゆっくりとご馳走を食べる。これは以前にも聞いたことがあって、すごくいいなぁと思った。〝きちんとした食事〟(ご飯、お味噌、主菜、副菜)を作らなければ母親失格のような気持ちになってしまう日本のママはわたしだけではないだろう。〝きちんとした食事〟は確かにいいかもしれないが、この呪いを解かなければ母親は疲弊していくばかりだ。私が子どもの頃、幼なじみ7組の中で核家族はたった1組だけだった。そして母親が仕事を持っている家は2組だった。その割合は今、逆転しているかもしれない。我が家では夕飯の支度は母の担当で、その時間は祖母が兄とわたしの面倒を見てくれた。そして夕食後の食器洗いは祖母が担当した。専業主婦の母親と祖母が分担していたことを、働く母親一人でこなすなんて至難の技で、完璧にできなくて当然だ。

 フランスでは男性も家事育児に積極的に関わっていることも知られている。労働者を守る制度が浸透しているフランスでは、男性も家事や育児に関わる時間が持てるというのが一つの大きな理由だそうだ。この本とは別のところで知ったのだけれど、男性にも14日間の産休があるらしく、母親の負担の軽減と父性の芽生に大きく影響しているのだろう。日本も変わりつつあるとは言え、まだまだ道のりは遠い。日本との共通点もあった。それは祖父母の育児参加も珍しくないという点!意外だった。

 そもそもフランスという国はフランス女性は堂々として、自分に自信を持っている。大人の女性である「マダム」が尊重される。空港や駅の放送では「メダムゼメッシュー」とムッシューよりも先にマダムがくる、レストランでも妻を先に

 公立幼稚園は無料で、入園準備はほぼ不要。幼稚園で小学校への準備教育をしてくれる。入学式はもちろん、卒業式、運動会、授業参観がなく行事があるとしても土曜。お弁当は簡単なもの。と、学校も日本に比べて親の負担が少ないのも特徴だ。

 こうして見ると、日本とは社会が違いすぎて、現時点で本人たちの努力でどうにかなるものではないのかなぁ、と少し悲しい気持ちになってくる。10年後、20年後、私がおばあさんと呼ばれる頃には男女共同参画が当たり前になっているといいな。

 これは感想というよりメモなのだけれど、素敵だと思ったこと。仕事と家庭、二つの世界をもつことで、人生を豊かにできる。フランス人は年を取ることを肯定的。ワインのように時間が経つほどに魅力が増すならば年を取ることは楽しい。フランス人の生活には美術、映画、オペラと芸術が当たり前のようにある。社交が好き。日本人は失敗したらダメだと考えるが、フランス人は失敗したらやり直せばよいと考える。

 うんうん。豊かに生きるヒントが見つかったような気がする!

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?