スナックでちやほやされたいなら、私と別れてからにしろ。
この記事の人間とはまた別の話である。
出会い
2年前、わたしは長距離ドライバーと付き合っていた。
週の三分の一は地元に、それ以外は高速道路で暮らしているような人だ。
出会いはSNS。
まあここで間違っている。当時は、若気の至りだったと今は言い訳させてほしい。
SNSでの出会いをダメだと言っているわけでもないし、反対しているわけでもない。一切ない。
ただ、わたし自身にとっては健全ではないと思うだけだ。
いや、ただロマンチックな出会いを妄想しているだけかもしれない。
わたしは知らない奴だったが、友達がそいつのことをなんだか知っているというので、来た連絡に怪しく思うこともなく普通に返してやりとりが始まった。
付き合う前の楽しい関係がいちばんドキドキすると言われているのは、わたしも心の底から賛成だ。
だんだん連絡を取るのが楽しくなっていった。
非常に楽しかった。
返信が待ち遠しくなった。
わたしたちは会うことになった。
大型トラックに乗せてもらって、仕事姿を隣で見たりもした。
頼もしかった。
でかいトラックから見る外の眺めは、最高だった。
皆が小さく見える。街がいつもよりキラキラして見える。
街灯すら美しい。
不思議な優越感に浸った気分だった。
わたしが飲みに行くと迎えに来てくれた。
そのまま湖にドライブに行った。
「眠かったら寝てていいよ。」と彼の運転する車で眠るのは、最高に心地よいものだった。
このままどこまででも行ってほしい。
どこにも着かないでほしい。
わたしたちは付き合った。
とても幸せだった。
「早く一緒に住みたい。」
(気が早すぎる。どう考えても早すぎる)とツッコんだものの、
「住むならどこがいいかなぁ♡」
なんて会話したものだ。
わずかばかりの青春だった。
わたしたちの幸せはそう永くは続かない。
付き合ってからだんだんと彼の連絡は少なくなり、わたしに会おうとする姿勢すら全く見えなくなっていった。
わたしのなにが、彼の重荷になったというのだろう。
釣った魚に餌をやらないという典型的な男か。
そうか、わたしはそれに引っかかった魚なのだ。
別れるきっかけとなった決定打。
ある日の朝、いつも通りにインスタを何気なく見ていると、彼がストーリーを更新していた。
いい予感はしなかった。
しかし、それを覗かない理由はない。
あとから撃沈するわたしの姿を想像もせず、それを開いた。
ふーん。そうか。こいつスナック行ったのか。
わたしより"美人ではない女"と、楽しそうにほっぺをくっつけ合ったり、楽しそうにお酒を飲んでいた。
わたしにとっては、恋人がスナックに行くのは許容範囲"外"だ。
もちろんわたしもそういう場には行かない。
そうか、こいつスナック行ったのか。
この後の行動なんて、容易に想像ができる。
いや、ただの被害妄想かもしれないが、ショック状態の人間が被害妄想を起こさない方が難しい。
"悲しむだろうなと想像すらしてもらえない女"だということを突きつけられた気がした。
想像力の欠片もない男が、そんなものをSNSにあげてしまう頭の悪さ。
それ以前に、わたしは当たり前に好かれていなかったのだ。
そんな人間にわたしは惹かれていたのだ。
「美人ではない女」と表現したのは、自分の精神状態を保つために他ならない。
スナックで遊びたいなら、わたしを振ってからにしろ。
しかし、わたしの恋愛遍歴に登場させたのは、わたしだ。
どうか、今後は付き合う女ひとりくらい幸せにしろなんて、思ってる暇も言ってる暇もない。
わたしは、強くならなければならない。
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