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[論文メモ] オオコウモリの認知地図 2


Harten et al.
The ontogeny of a mammalian cognitive map in the real world
Science, 369, 194-197 (2020)
https://science.sciencemag.org/content/369/6500/194

前回の論文メモ(オオコウモリの認知地図 1)に書いた論文と同じ号の次のページから、同じテーマ&同じ対象種の論文も載っていた。どちらもイスラエルのグループみたいだけど、完全に別々のチームなんだろうか。それともタイミングを合わせて投稿したんだろうか。

問い

エジプトルーセットオオコウモリは認知地図をナビゲーションに使っているか


検証方法

・これまで通ったことのないショートカット経路を使って2地点間を移動することがあるかどうか調べる(オオコウモリの認知地図 1と同じ)

・22頭のこどもオオコウモリをケージ内で飼育したのち、野外に戻してGPSトラッキング。サンプリング間隔は15~30秒。
→  生まれて初めての飛行から継続的に移動経路を記録
→  対象個体がショートカット経路を使ったとき、確実に「これまで通ったことがない」と言える

※『オオコウモリの認知地図 1』の論文では、ロガー装着前の行動がわからない=本当に「通ったことがない」のかがわからない、ことが弱点であると書かれていた。この論文ではその弱点をストレートに解決している。

・トランスロケーション実験
GPSロガーをつけたこどもオオコウモリをコロニーから5 kmくらい離れた地点へ運び出して放した
→ 帰ってくる経路を記録

主な結果

・以前は通ったことのないショートカット経路を使っていた
・過去に訪れたことのある場所に向かってhome rangeの外から直線的に移動する「ロングカット」もあった
・目的地が遠いほど、飛行高度が高くなっていた。
・トランスロケーション実験では、元々のhome rangeが大きかった個体の方が帰ってくる経路の直線度が高くなっていた


結論

エジプトルーセットオオコウモリは、認知地図と視覚情報に頼ってショートカットしているのだろう


驚いたこと おもしろかったこと

・大学の敷地内に野生コウモリのコロニーがあるらしい(We established an in-house wild bat colonyと書いてある)。そのコロニーを使って、同一個体の複数回トラッキング(ロガーの電池を入れ替えて継続)ができているみたい。

・視覚情報に基づいたナビゲーションができるかどうかを調べるために、このオオコウモリたちの飛行中の視界に近いと思われるドローン映像を人に見せて、ランドマークを頼りに目的地の方角がわかるかをテストしていた。

・ロングカットの大半がその夜の最後にコロニーに帰ってくるときに起こっていたらしい。ナビゲーションエラーのリスクと門限がせめぎあっているのだろうか。


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